能登半島地震からまもなく半年。被災地に残された動物たちを救おうと活動するボランティアらがいる。世話をする人がいなくなった猫を被災地から連れてきて、新しい飼い主につなぐ、広島のボランティアの活動に密着した。

被災地に多くの犬、猫が取り残される

今もなお、災害の爪痕が残る石川県輪島市。人がいなくなった街に取り残された動物たちがいる。

そんな動物を救おうと広島から被災地に向かったのは、マツダやその協力会社の社員たちで作る動物愛護団体「ワンミャツダクラブ」の荷堂美紀代表。荷堂さんは、今、被災地で保護される動物たちが増えていることに気をもんでいる。

ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表:
みなさん被災して、動物の預かりができるような状況でもないし、緊急事態なのかなと思っています。一応何匹か連れて帰ることができるように準備はしてきてますが、状況を見ながらという感じですね

輪島市内で荷堂さんたちが目にしたのは、復興が思うように進まない被災地の姿だった。

ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表:
道路はだいぶ通ってきていると感じましたが、住宅地や人の生活環境という意味での復興はまだまだ大きな課題がある。なかなか進むことに難しさがあるんだなと感じました

保護には所有権の確認が重要

一緒に支援を行う、東京の動物愛護団体の香取章子さんは、被災地におけるペットの保護には所有権の確認が必要だという。

東京都人と動物のきずな福祉協会・香取章子代表理事:
所有権がある飼い猫かもしれない。それを確認なく捕獲することは問題になる可能性があります

動物の所有権を確認しておくことは、その後の譲渡に向けて大切なポイントとなる。

被災地で、命の危険が迫っている動物が保護され、自治体に引き渡された場合、各都道府県ごとに収容動物を写真付きでWEBサイトで公開しており、いなくなったペットをWEBサイトで飼い主が探すことができる。この各都道府県のWEBサイトには環境省のHPからもリンクがはられている。

動物愛護センターで保護された猫とあう

2人が訪れたのは石川県の動物愛護センター。震災後にオープンし、今は20匹以上の猫が、保護されている。

里親を探すことを考え、所有権に問題のない猫たちを優先して保護することにしているという。

いしかわ動物愛護センター・高橋百合子主幹(獣医師):
所有権放棄されている猫ですので、あとから飼い主が現れるということは絶対ないです

香取さん:
もとの飼い主が避難所に住んでいるとか、家が全壊して家に戻れないとかそういうことでしょうか?この機会に放棄するということですね?
高橋主幹:
そうですね

近所の猫に餌だけを与える人や、避妊・去勢をしないまま放し飼いにする飼い主が災害でいなくなった被災地には、猫が取り残される形となる。

高橋主幹:
何となく餌をあげていたのが、そこに人がいられなくなり、世話をする人がいなくなった

3匹の猫を広島に 人に慣らすボランティアが活躍

愛護センターの要請に応じて、それぞれの団体が、保護猫を連れ帰ることになった。

荷堂さんたちも、今回、3匹を引き取った。石川を出発して、広島に到着したのは、深夜の11時前。1匹は人に全く慣れていないことがわかった。

Q:人に慣れていますか?
ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表:
全く慣れていないです。特定の飼い主が家で飼っていた猫は、人に慣れていて、もらわれやすいが、そうじゃない猫は厳しい

餌を与えるだけの無責任ともいえる動物との関わり方は、人に慣れていない猫という、その性質に影響を与えていた。

譲渡会で里親を探すためには、人に慣れる必要がある。ここで活躍するのが、動物を人間に慣らすための役割を担っている預かりボランティアだ。

深夜にもかかわらず、預かりボランティアとして活躍する濱里さんに、最も人に慣れていない猫を預けることにした。

ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表:
ネットに入れる時と新幹線の中も恐怖で失禁してしまって。駅でも震えていた

譲渡会に参加する動物たちは、健康状態をチェックされ避妊や去勢、ワクチンの投与だけでなく、病気になっていないかメディカルチェックを受けエントリーされる。

濱里さんに預けられた猫は、その後、どうなったのか?

預かりボランティア・濱里真由美さん:
来て2日後くらいには触れていた。翌日には触っていたかな。結構触らせてくれて、この首のところが大好きみたいです

濱里さんに安心したのか人間に慣れてくれたようだ。

預かりボランティア・濱里真由美さん:
あさっての譲渡会には参加させようと思っています

譲渡会で里親探し

広島市内の商業施設で19日に行われた譲渡会には、被災地から連れて帰った3匹のネコも参加していた。

訪れた人たちも、被災地からやってきたネコたちに興味津々。広島に到着したときは緊張していた猫たちが、今は、人に触られても平気になった。

Q:猫を飼ってますか?
譲渡会の参加者:
飼っています
Q:もう1匹欲しくなる?
欲しい

ワンミャツダクラブ・荷堂美紀代表:
まずは3匹をきちんと幸せにして。それと並行しながら、今後は何ができるのか、何をさせてもらえるのかを行政のみなさんと相談できたらと思います

災害が発生すると動物たちがどうなってしまうのか。被災地からやって来た、3匹の猫たちは、私たちに多くのことを教えてくれる。日ごろから動物との関わり方を考えておきたい。

(テレビ新広島)