●20位:喜田拓也(横浜F・マリノス)

 年齢や実績など様々な要素によって算出される市場価値は、その時期の活躍によって大きく左右されることもある。23/24シーズンも終盤に差し掛かった現在、その市場価値を大きく下げてしまった日本人選手は誰なのか。データサイト『transfermarkt』が算出した市場価値下落額ランキングを紹介する。※市場価値や成績等の情報は3月13日時点の『transfermarkt』を参照。2023年7月1日と現在の市場価格を比較。下落額が並んだ場合の順位はサイトに準拠。
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生年月日:1994年8月23日
市場価値の変動:120万ユーロ(約1.68億円)→100万ユーロ(約1.4億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−16.7%)
22/23リーグ戦成績:29試合1ゴール0アシスト

 20位には、横浜F・マリノスで主将を務めるMF喜田拓也がランクインした。

 小学生の頃から横浜FMのアカデミーに所属していた喜田は、2013年にトップチームデビュー。それから現在に至るまで長きに渡ってトリコロールを中盤から支え続け、いまやクラブの象徴的存在となった。昨季はリーグ戦29試合に出場し、1ゴールを記録。日産スタジアムで開催された第10節名古屋グランパス戦で実に5シーズンぶりとなるゴールを決めて、前半押され気味だったチームに勝ち点1をもたらした。

 その市場価値は120万ユーロ(約1.68億円)から100万ユーロ(約1.4億円)まで下落した。直近3年間は緩やかな上昇をしていたが、ここにきて20万ユーロ(2800万円)の減少に。それでも横浜FMに所属する全選手の中で3番目タイに高い市場価値を持っており、日本人選手に限れば同クラブでトップの金額となっている。

 そんな喜田は、横浜FMで11シーズン目となる今季もキャプテンマークを巻くことを決断。主将継続に対して、クラブ公式サイトを通して「すべてはマリノスのため。すべてをマリノスのために」というコメントを残している。優勝の喜びも、2位の悔しさも何度も味わってきた喜田は、愛するクラブを1シーズンぶりの栄冠に導くことができるだろうか。

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●19位:菅大輝(北海道コンサドーレ札幌)

生年月日:1998年9月10日
市場価値の変動:120万ユーロ(約1.68億円)→100万ユーロ(約1.4億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−16.7%)
22/23リーグ戦成績:33試合3ゴール2アシスト

 左サイドを主戦場とする、北海道コンサドーレ札幌の菅大輝が19位となった。

 現在25歳の菅は、札幌のアカデミー出身。2016年に当時J2リーグに所属していた札幌で2種登録選手となり、2016シーズンの第6節・町田ゼルビア戦でJリーグデビューを果たした。同クラブがJ1昇格を果たした翌2017シーズンも安定した活躍を披露し、今日に至るまでJ1で200試合以上に出場している。大きな怪我や病気がないからこそ達成できる記録だ。

 その市場価値は、長く100万ユーロ(約1.4億円)だったが、昨年6月に久しぶりに上昇し120万ユーロ(約1.68億円)を記録していた。今回の20万ユーロ(2800万円)の減少は元の金額へ戻っただけだと考えることもできる。減少してもなおチームトップの市場価値を維持しており、悲観することはないだろう。

 高い得点力が自慢の札幌だが、今季は開幕からリーグ戦3試合無得点という苦しい船出となっている。高精度なクロスや「菅キャノン」と呼ばれる弾丸ミドルシュートを武器に持つ同選手は、得点に絡むプレーでチームに追い風を吹かせたい。

●18位:仲川輝人(FC東京)

生年月日:1992年7月27日
市場価値の変動:120万ユーロ(約1.68億円)→100万ユーロ(約1.4億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−16.7%)
22/23リーグ戦成績: 27試合4ゴール3アシスト

 横浜F・マリノスでプレーしていたFW仲川輝人は、昨季FC東京へ完全移籍を果たした。

 仲川は2019シーズンにリーグ得点王と年間MVPを獲得するという大車輪の活躍を見せて、横浜FMにリーグ優勝をもたらしたが、その時惜しくも2位フィニッシュとなったのがFC東京。苦渋をなめさせられた選手がチームに加わった昨季は、首都クラブにとって期待が高まるシーズンだった。

 しかしながら、蓋を開けてみればチームは11位フィニッシュ。仲川はリーグ戦27試合に出場し4ゴール3アシストとまずまずの活躍を残したものの、自慢の得点力が完全発揮されたとは言い難い結果に。その理由としては、同選手以外に中盤やサイドでボールを持って“時間を作れる”プレーヤーが少なかったことが考えられる。同選手がチャンスメイク側に回らざるを得ない時間が多かった印象だ。仲川の攻撃性能を最大限引き出すために、今季は他選手が仲川をサポートするプレーがもっと欲しい。

 その市場価値は120万ユーロ(約1.68億円)から100万ユーロ(約1.4億円)まで減少した。2019年冬に自己最高額となる280万ユーロ(約3.92億円)を記録してから、市場価値の推移グラフは長く下降線をたどっている。
 

●17位:稲垣祥(名古屋グランパス)

生年月日:1991年12月25日
市場価値の変動:120万ユーロ(約1.68億円)→100万ユーロ(約1.4億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−16.7%)
22/23リーグ戦成績: 33試合3ゴール1アシスト

 長く名古屋グランパスの中盤に君臨してきたMF稲垣祥だが、今季は一転して苦しい立場に置かれている。

 2020年にサンフレッチェ広島から名古屋に加入した稲垣は、マッシモ・フィッカデンティ前監督、そして現在チームを率いる長谷川健太監督の下で、中盤の絶対的な主力として重宝されてきた。2023シーズンには、クラブレコードを大きく更新するリーグ戦139試合連続出場という驚異的な記録を打ち立てている。

 名古屋5年目となる今季は、チームの不振とともに自身も低調なパフォーマンスを披露してしまっている。開幕戦(鹿島アントラーズ戦)では、アンカーの役割を任されたが中盤の底から攻撃の起点を作ることは出来ず。それどころか、守備の負担が大きくなったことで本来の強みであったボール奪取能力も上手く発揮できていないように見えた。第2節のFC町田ゼルビア戦では先発せず、久しぶりにベンチを温めている。長谷川監督にはリーグ最下位脱却を図るために、そして稲垣の強みを引き出すためにも、戦術プランの修正が求められる。

 年齢面が考慮されたのか、その市場価値は20万ユーロ(2800万円)減少した。それでも稲垣の運動量に陰りは見えず、依然として彼がJリーグ屈指の実力者であることに変わりないだろう。

●16位:森島司(名古屋グランパス)

生年月日:1997年4月25日
市場価値の変動:140万ユーロ(約1.96億円)→120万ユーロ(約1.68億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−14.3%)
22/23リーグ戦成績: 20試合2ゴール0アシスト(サンフレッチェ広島) 12試合0ゴール1アシスト(名古屋グランパス)

 MF森島司は今季スタートから低迷する名古屋グランパスにおいて、復調のカギになる存在だ。

 昨夏にマテウス・カストロという強烈な“個”を失った名古屋は、新たな攻撃の核となる選手として、サンフレッチェ広島でプレーしていた森島を獲得。しかし森島がマテウスとはタイプが異なる選手であること、そして同選手が名古屋の戦術に適応するのに時間を要したこともあって、チームはマテウス退団の穴を埋めることはできなかった。一時は優勝争いに参加していた名古屋だが、最終的に6位でシーズンを終えている。

 名古屋としては再起を図りたい今季だが、開幕から3連敗無得点という最悪なスタートを切ってしまった。そんな中でも、森島の存在感は昨季と比べて大きく増しており、後方からのビルドアップを安定させるためには同選手の関与が必須。攻守両局面において、そのプレーがチームの潤滑油になっている。

 その市場価値は広島時代から20万ユーロ(2800万円)減少したが、年齢的にも市場価値の“伸びしろ”は十分にある。加入2年目の森島は、沈黙を続ける名古屋の攻撃を再起動できるか。

●15位:武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)

生年月日:1992年7月15日
市場価値の変動:180万ユーロ(2.52億円)→160万ユーロ(約2.24億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−11.1%)
22/23リーグ戦成績: 34試合10ゴール10アシスト

 昨季ヴィッセル神戸のJ1優勝に大きく貢献したFW武藤嘉紀が、15位にランクインした。

 同選手の市場価値は昨年7月から20万ユーロ(2800万円)減少し、160万ユーロ(約2.24億円)となっている。考えられる理由としては年齢面だろうか。今年で32歳とベテランの域に差し掛かったことが市場の評価を下げたのかもしれない。

 だが、昨季のパフォーマンスを見れば年齢面の心配は杞憂だろう。足首の負傷で離脱する期間があったものの、リーグ戦34試合に出場して10ゴール10アシストを記録。FW大迫勇也とのダブルエース体制を構築し、2人で計32ゴールを奪った。この活躍が認められてJリーグベストイレブンに輝いている。

 今季は、開幕戦(ジュビロ磐田戦)こそベンチ外になったものの第2節の柏レイソル戦から2試合連続で出場。まだゴールやアシストといった活躍は残せていないが、前線からの献身的なプレスバックは健在。自己犠牲をいとわない31歳のFWは今季、神戸をリーグ2連覇へ導けるだろうか。

●14位:三好康児(バーミンガム/イングランド)

生年月日:1997年3月26日
市場価値の変動:220万ユーロ(約3.08億円)→200万ユーロ(約2.8億円)
市場価値の減少額:20万ユーロ(2800万円/−9.1 %)
22/23リーグ戦成績: 10試合1ゴール1アシスト ※ロイヤル・アントワープ(ベルギー)在籍時

 MF三好康児は、昨夏の移籍市場でイングランド2部のバーミンガムへ活躍の場を移した。

 23/24シーズンのチャンピオンシップ(イングランド2部)第1節スウォンジー戦でリーグデビューを果たした三好は、第3節ブリトスル・シティ戦で移籍後初ゴールを記録。40分に途中交代でピッチに立つと、コーナーキックの流れからゴール右隅に豪快なシュートを叩き込んだ。当初は途中出場が多かったが、その後徐々に出場時間を伸ばして現在は右ウイング(サイドハーフ)で定位置を獲得。今季はここまでにリーグ戦34試合に出場し、5ゴール5アシストと好調だ。

 その市場価値は昨年7月から20万ユーロ(2800万円)ダウンとなったが、減少率はわずか9.1 %。この減少率は、今回のランキング1〜20位までの選手の中で最も少ない割合だ。にもかかわらず14位にランクインしてしまったのは三好が持つもともとの市場価値が高いためである。他選手のような大きな下落ではないため、悲観することはない。

 バーミンガムは現在チャンピオンシップで24チーム中21位に沈んでいる。下位3チームが3部へ降格となるため、この順位は非常に危険だ。直近のリーグ戦は5試合勝ち無し(4敗1分)となっており、残留争いから脱するためにはレギュラーである三好の活躍が必須である。

●13位:松岡大起(アビスパ福岡)

生年月日:2001年6月1日
市場価値の変動:80万ユーロ(約1.12億円)→55万ユーロ(約7700万円)
市場価値の減少額:25万ユーロ(約3500万円/−31.3%)
22/23リーグ戦成績: 3試合0ゴール0アシスト(※清水エスパルス在籍時) 0試合0ゴール0アシスト(グレミオ・ノボリゾンチーノ在籍時)

 パリ五輪世代である現在22歳のMF松岡大起は、昨年7月からその市場価値を25万ユーロ(約3500万円)落としてしまった。これにより今回のランキングに最年少で名を連ねている。

 こうなってしまった理由としては、昨季ブラジルで出場機会が無かったことが影響していると考えられる。松岡は昨年3月に清水エスパルスからブラジル2部のグレミオ・ノボリゾンチーノへ期限付き移籍することを決断。J2で3試合に出場していた中で発表された突然の海外挑戦だった。

 グレミオ・ノボリゾンチーノは同選手の加入に対し「ダイキは我々が求めている選手像にマッチしており、優れた能力とゲームへの理解を持っている」とのコメントを発表。しかし同クラブではベンチ入りを果たす試合は多かったものの、最後までピッチに立つチャンスを得ることはできなかった。昨年9月以降はベンチ外の試合が続き、今冬にアビスパ福岡へ完全移籍している。

 その福岡では今のところ先発出場はないが、ここまで開幕から3試合連続で後半終盤に出場機会を掴んでいる。まずは限られたプレータイムの中で結果を残し、定位置確保を目指したい。22歳とまだ若いため、市場価値が上がるチャンスを大きく秘めている。

●12位:室屋成(ハノーファー/ドイツ)

生年月日:1994年4月5日
市場価値の変動:100万ユーロ(約1.4億円)→70万ユーロ(約9800万円)
市場価値の減少額:30万ユーロ(約4200万円/−30.0 %)
22/23リーグ戦成績:31試合3ゴール1アシスト

 昨季充実した時間を過ごしていたDF室屋成だが、今季は不運なことに出場機会が得られない日々が続いた。

 現在29歳の右サイドバックは、2020年夏にFC東京からドイツ2部のハノーファーへ完全移籍。初めての海外挑戦だったが、加入1年目から主力に定着。右SBと右ウィングバックでの起用をメインに、リーグ戦32試合に出場した。その後、翌21/22シーズンはリーグ戦27試合(うち20試合先発)、3年目となる昨季はリーグ戦31試合(うち26試合先発)に出場とコンスタントにピッチに立っていたが、今季に入ってその状況が一変。開幕から4試合連続で出番が無く、その後は途中出場の試合ばかり。11月までの約3か月間、リーグ戦でスターティングメンバーに名を連ねることは無かった。

 市場価値が大きく減少したのは、このような経緯があったからかもしれない。100万ユーロ(約1.4億円)から70万ユーロ(約9800万円)まで下落してしまった。

 12月から好調を維持して先発出場を続けていたが、2月10日に行われたハンブルガーSV戦で負傷交代。後日、クラブから右ハムストリングスの損傷で戦列を離れることが発表された。レギュラーの座に返り咲いた矢先、残念極まりない。

●11位:原口元気(シュトゥットガルト/ドイツ)

生年月日:1991年5月9日
市場価値の変動:100万ユーロ(約1.4億円)→70万ユーロ(約9800万円)
市場価値の減少額:30万ユーロ(約4200万円/−30.0 %)
22/23リーグ戦成績:1試合0ゴール0アシスト

 幸運にもランキングトップ10入りを免れたのは、元日本代表MF原口元気だ。

 現在32歳の原口は、昨年1月にフリーでシュトゥットガルトへ移籍した。当初はレギュラーとして出場機会を得ていたものの、監督交代のあおりを受けて序列が大幅に低下。今季のリーグ戦は1試合の途中出場にとどまっている。

 今季ボランチのファーストチョイスであるMFアタカン・カラゾルとMFアンゲロ・スティラーのコンビの連係度が抜群であることに加えて、クラブは今冬にブライトン(イングランド)からドイツ代表MFマフムド・ダフードをレンタル移籍で獲得しており、原口が定位置を得るために乗り越えなければならない壁は非常に高い。このまま状況が好転しなければ、現行契約を延長せず今夏に新天地を探すシナリオが実現する可能性が高いだろう。

 市場価値が大きく下落した要因には、出場機会が激減したことと、32歳とベテラン選手の域に入ったことが考えられる。現在の市場価値は70万ユーロ(約9800万円)となっているが、今後数か月の間にさらに減少しても不思議ではないだろう。

中井卓大だけじゃない! 10代の欧州日本人サッカー選手5人
なぜ…。欧州で活躍できなかった日本人選手10人
サッカー日本代表候補を100人選んでみた。W杯予選&アジア杯でチャンスがあるのは…