●MF:遠藤航(日本代表)

色々なクラブでプレーするサッカー選手にとって、新天地に上手く馴染めず、サポーターから大きな批判を受けることは往々にしてある。その理由は移籍金、年齢、プレースタイルなど様々だ。今回は圧倒的なパフォーマンスでサポーターから「手のひら返し」を受けた選手、すなわち賞賛される選手へと変貌を遂げた実力者たちを紹介する。※スタッツや移籍情報等は27日時点の『transfermarkt』を参照
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生年月日:1993年2月9日
所属クラブ:リバプール(イングランド)
在籍期間:2023年8月13日〜現在

 30歳でリバプール移籍を果たした遠藤航に対して、現地サポーターたちのファーストインプレッションはあまり良いものとは言えなかった。

 MFファビーニョ、ジェームズ・ミルナー、ジョーダン・ヘンダーソンを失ったリバプールは、昨夏の移籍市場で守備的MFの獲得を目論む。が、MFモイセス・カイセド、MFロメオ・ラヴィアとリストアップした若手選手をことごとくチェルシーに奪われたことで、クラブはベテランの域に差し掛かった日本代表MFを選んだ。サポーターは30代でプレミアリーグ初挑戦となった遠藤に対して強い不安を露わにし、『Daily mail』はこの補強を「サポーターがクラブの野心の欠如として受け止めた」と伝えた。

 移籍当初の遠藤はプレミア特有のプレースピードへの適応に苦戦気味。高い運動量が求められるユルゲン・クロップ監督のサッカーにおいて、遠藤だけが1テンポ、2テンポ出遅れているシーンが目立ち、批判の声は拡大していってしまう。

 それでもリバプールのサッカーに適応して自身の役割が整理されていくと、デュエル王はイングランドでも輝き始める。素早い寄せと果敢なタックルで相手のチャンスを幾度となくシャットアウト。攻守の切り替えは抜群で、ボールを奪った後に見せる”前への意識”は誰よりも強い。次第に遠藤に対する批判は聞かなくなった。

 延長戦までもつれ込んだチェルシーとのカラバオカップ(EFLカップ)決勝では、フル出場を果たし優勝に大きく貢献。ポテンシャルではなく、研ぎ澄まされた実力で間違いなく欠かせない選手の域まで上り詰めている。

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●DF:ベン・ホワイト(イングランド国籍)

生年月日:1997年10月8日
所属クラブ:アーセナル(イングランド)
在籍期間:2021年7月30日〜現在

 いまやアーセナルの右サイドに欠かせない存在となったDFベン・ホワイトだが、加入当初は少なくない批判にさらされていた。

 現在26歳のホワイトは、2021年夏にブライトンからアーセナルへ移籍。その移籍金は5850万ユーロ(約70億円)とされており、当時のアーセナルとしては歴代3番目に高い買い物となった。リーズ、そしてブライトンで急成長した同選手の強みは、高い足元の技術でビルドアップに安定感をもたらせること。ただ、身長182cmとセンターバックとしては上背がないことから、アーセナル入りに際してはエアバトルが不安材料となっていた。

 その懸念は、アーセナルでのリーグデビューとなった21/22シーズンの第1節ブレンドフォード戦で現実に。この試合でホワイトはFWイヴァン・トニーとの空中戦に苦戦し、高額な移籍金も相まってメディア、サポーターから多くの批判を受けた。

 しかし、ミケル・アルテタ監督は試合後のインタビューで「ベンは並外れたディフェンダーだ。彼は4バックでも、3バックでも非常に快適にプレーできる」(『METRO』)と話し、その信頼を強調。その言葉通り、徐々にアーセナルの戦い方にも適応し、スカッドの状況に合わせて右CBだけでなく右SBでも好パフォーマンスを発揮するようになった。

 ウィリアム・サリバがエミレーツ・スタジアムに戻ってきてからは右SBが主戦場となり、ブカヨ・サカの名脇役として攻撃への高い貢献を見せている。現在、ホワイトの素質やパフォーマンスに対して疑問を持つサッカーファンは居ないだろう。

●MF:パウリーニョ(元ブラジル代表/現コリンチャンス)

生年月日:1988年7月25日
所属クラブ:バルセロナ(スペイン)
在籍期間:2017年8月14日〜2019年1月1日

 バルセロナの中盤と言えば、セルヒオ・ブスケツを始めとする技巧派MFを思い浮かべる人が多いだろう。そのようなステレオタイプに抗い、メディアやサポーターから「手のひら返し」の賞賛を受けたのがMFパウリーニョだ。

 広州恒大(中国)でプレーしていたパウリーニョは、2017年にバルセロナへ完全移籍することを決断する。だが、中国からの移籍であったこと、過去に欧州で十分な活躍を残せていなかったこと、そして移籍金がクラブ歴代4位(当時)となる4000万ユーロ(約52億円)であったこと、など様々な理由でサポーターたちはこの移籍に懐疑的な見方をしていた。それに加えて、同選手は筋骨隆々の出立ちで、その持ち味は豊富な運動量と力強いタックル。バルサのスタイルに合わないのでは、という声が出るのも無理はない。

 だが、パウリーニョはその持ち味を発揮しながら、バルサのサッカーに溶け込み、存在感を放っていった。入団会見で「チームメイトを助けるためだったら、どんなことだってする。自分にできる限りの全てを出す」(クラブ公式)と話したように、無尽蔵のスタミナと献身的な動きで味方選手のプレーをサポート。得点力も高く、ストライカーのようにゴール前まで駆け上がってゴールを決めることもあった。

 最終的にバルセロナでは公式戦49試合に出場し、9ゴール3アシストをマーク。異質な存在へのサポーターたちの懸念は、意外にも杞憂に終わった。

●MF:南野拓実(日本代表)

生年月日:1995年1月16日
所属クラブ:モナコ(フランス)
在籍期間:2022年7月1日〜現在

 SNS上で”モナ王”の異名をとるMF南野拓実だが、モナコでのデビューシーズンは低調なパフォーマンスで批判を受けていた。

 欧州屈指の強豪リバプールに在籍し、限られた出番の中で活躍してきた南野は、2022年夏にモナコへ移籍。リバプールからの加入とあってその期待値は高かったが、なかなか数字が残せない。

 それもそのはず、当時モナコを率いていたフィリップ・クレマン監督は[4-4-2]を基本布陣に採用しており、南野のようなトップ下や攻撃的MFの位置が得意な選手が輝くことは難しい。リーグ戦では18試合に出場してわずか1ゴールしか決めることができなかった。こうした現実を受け、メディアやサポーターたちは南野を非難。仏メディア『Le Quotidien du Sport』は、同選手をその夏のリーグアンの補強選手の中で最大の失敗とした。

 しかし、南野は“手のひら返し”に成功した。今季はここまでリーグ戦23試合に出場して6ゴール5アシストを記録。ザルツブルク時代の恩師アドルフ・ヒュッターが新たに指揮官となったことも要因かもしれない。ゴール近くで決定機に絡めるようになり、シュートの数も格段に増加。かつての自信を取り戻したように見える。2月末には、クラブから今季2度目となる月間MVPに選ばれたことが発表された。

●GK:ジャンルイジ・ブッフォン(元イタリア代表/2023年現役引退)

生年月日:1978年1月28日
所属クラブ:ユベントス(イタリア)
在籍期間:2001年7月3日〜2018年7月6日、2019年7月4日〜2021年7月1日

 サッカー史上最高のゴールキーパーとしてその名を残したジャンルイジ・ブッフォンだが、2001年にユベントスへステップアップした際にはその高額な移籍金に疑問符が付けられた。

 パルマで弱冠17歳ながら正GKとなったブッフォンは、当時のGK歴代最高額となる移籍金5288万ユーロ(約74億円)でユベントスへ移籍。この金額は2018年にケパ・アリサバラガが更新するまで長らくトップに君臨した。クラブがGKに高額な資金を注ぎ込んだことは少なくない批判を受け、のちにブッフォン自身も『FourFourTwo』のインタビューで「あらゆる評論家が全く同じことを言った。GKにそんな大金は払えないよ、とね」と振り返っている。

 だが、その批判をブッフォンはすぐに吹き飛ばすことに成功する。移籍初年度から高いセービング能力を見せ、スクデット獲得に貢献。翌02/03シーズンにもリーグ優勝を果たし、老貴婦人にセリエA連覇をもたらしている。

 その後の活躍はご存知の通り。ユベントスだけでなく、代表でも確固たる地位を確立し、イタリアが世界に誇るGKとなった。前述したインタビューでは「私はユーベの歴史の中で最高のビジネスの一つだ」とも語っているが、これに異論があるサッカーファンは居ないはずだ。移籍当初は批判に晒されていた高額な移籍金も、レジェンドが残した実績と比べれば安いものだろう。

 セリエA通算657試合に出場し、10度のセリエA制覇を経験した大ベテランは、昨夏にスパイクを脱いでいる。

●FW:ジャック・グリーリッシュ(イングランド代表)

生年月日:1995年9月10日
所属クラブ:マンチェスター・シティ(イングランド)
在籍期間:2021年8月5日〜現在

 マンチェスター・シティでプレーするFWジャック・グリーリッシュは、サポーターたちの”手のひら返し”を成功させた選手の1人である。

 2021年夏に、当時のイングランド史上最高額となる1.17億ユーロ(約164.5億円)でペップ・グアルディオラ監督率いるチームに移籍したグリーリッシュは、セルヒオ・アグエロの背番号10を引き継いだ。しかし、デビューシーズンとなった21/22シーズンはリーグ戦26試合に出場して3ゴール3アシスト止まり。期待に応えられない残念なスタートとなってしまった。

 この結果には、メディアやサポーターも大きく非難。その超高額な移籍金に懐疑的な見方がなされた。

 しかし翌22/23シーズン、グリーリッシュは自身についた値札が間違っていないことを証明する。左サイドで抜群のボールキープ力を発揮し、公式戦50試合に出場して5ゴール11アシスト(リーグ戦では28試合5ゴール7アシスト)を記録。本来の輝きを取り戻したかのように見え、シティのトレブル(3冠)達成に大きく貢献した。

 評価を上げて迎えた3年目の今季は、ジェレミー・ドクの台頭もあって出場機会が減少。だが、ドクはドリブルで仕掛けていく分ボールロストが多く、ロストが少ないグリーリッシュは強豪相手の試合で真価を発揮する。絶対に負けられないプレミアリーグの対BIG6戦やUEFAチャンピオンズリーグ(CL)は、グリーリッシュにとって絶好のショータイムだ。

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