予想外の出来事が起こるとパニックに陥ってしまう人は多くいます。ただささいなことでパニックを起こしていると身が持ちませんよね。今回は日常でよく利用するエレベーターで、まさかのパニック状態を起こす人と相乗りしてしまった経験のある私の知人Eさんから聞いたお話です。
高層ビルのエレベーターで
Eさんは当時、沢山のオフィスやサロン、店舗が入った高層ビルで働いていました。
Eさんの会社は高層ビルのちょうど中間の階でしたが、通勤時や外出時になかなかエレベーターが来ず、イライラすることもしばしば。
急いでいる時は、「途中で誰も乗ってきませんように」と思いながら乗ることもありました。
そんなある日、Eさんが顧客のところへ行くために会社のある階からエレベーターで降りようとすると、ドアが閉まる瞬間に女性の声が響きました。
「ちょっと待って! 閉めないで!」
慌ててEさんが開くボタンを押すと、開き切らないドアの隙間からひとりの女性が強引に乗り込んできました。
「はぁ……間に合った」
実際には間に合ってないけど、と思いながらEさんは閉まるボタンを押しました。
まさかの乗り間違い
そしてエレベーターが下に向かって動き出すと、女性の顔色が変わりました。
「違う! 私は上に行きたいの!」
「え……そう言われても。下に行きますけど」
「ちょっと、止めてよ! 早く行かなきゃなんないのよ!」
女性は大パニックを起こし、階数ボタンの前にいたEさんを押しのけて何故か手当たり次第に様々な階のボタンを押しました。
「ちょっと、やめてください! 次の階に止まりますから」
Eさんは女性の手を掴んで止めましたが、女性は気が収まらないのか反対の手で各階のボタンを押しまくる始末。
「ほら、もう着きましたよ」
エレベーターは無事に次の階に止まって女性は慌てて降りて行きました。
パニックの後始末
「ふう、何だったんだあの人」
Eさんは女性が押しまくった階数ボタンをキャンセルしようと、以前テレビで見たボタンのキャンセル方法の通りに光っているボタンを2回ずつ押しました。
「これでキャンセルできるはず……って、できないじゃん!」
なんとこのビルのエレベーターは、ボタンをキャンセルできない仕様のエレベーターのようでした。
「そんな……」
結局1階ずつドアが開いて閉まり、1階に着くまでにはかなりの時間を要したそうです。
女性客の焦る気持ちはわかりますが、エレベーターは上下を間違えないよう、余裕をもって乗ることが大切ですね。
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子