ここ数十年の家電の進化には、目覚ましいものがあります。今、昔の家電を目の前にしても、上手に使いこなせないかもしれませんね。今回は昔の〇〇を使いこなせない若い人に戸惑った経験のある、私の知人Tさんに聞いたお話です。

工場の隅に置かれたアレ

当時Tさんが勤めていたのはかなり歴史のある会社で、事務所として使っている建物はまだ新しいものの、その隣にある工場は見るからに古く、昭和感が漂っていました。

Tさんはその会社で事務員として働いていましたが、一日に数回は工場に行く用事がありました。そこでいつも気になるものがひとつ。

それは昭和生まれなら一度は目にしたことがある、ダイヤル式の黒電話でした。
「これってまだ使えるんですか? 」
入社したての頃、Tさんは工場長に尋ねました。
「ああ、まだ使えるよ」
工場長は胸を張って答えました。
「こんなのまだ残ってたんですね……」
「今流行のレトロ家電ってとこだな」
「ほんとですね」

アレを知らない新入社員

そんなある日、Tさんの会社にも新入社員が入ってきました。

まだ高校を出たばかりの若い女性で、当時40歳を超えていたTさんは自分の子どものように思って親切に色々と教えていました。
「じゃあ次は工場行こうか」
「はい!」

新入社員を連れて工場に行くと、ちょうど工場長は外出中。仕事を教えてもらわなければならないため、Tさんは新入社員に言いました。
「大事なマニュアル事務所に置いてきちゃった、取りに行くからその間に工場長に戻るよう電話してくれる? そこに電話あるから。電話番号は横に書いてあるでしょ」

すると新入社員は黒電話を見て、キョトンとした顔。
「これ、どうやって使うんですか? 」
「え…… ? 」
Tさんがぽかんとしていると、新入社員は黒電話の受話器を持ったものの、ダイヤルの使い方がわからないのか、指を入れて回す穴にただ指をポチポチと入れて電話番号を押そうとします。
「あれ、全然かからない……」
「番号のとこに指入れて、ダイヤル回すんだよ」
「そうなんですか!?」
どうやら新入社員は、ダイヤル式の電話を見たことがないようでした。

その後無事に電話をかけることができ、今では新入社員もバリバリその電話を使いこなしているとのことです。

確かに今は、プッシュホンどころかスマホに慣れてしまっているので、ダイヤル式の電話を見てすぐに電話をかけられる若い人は少ないかもしれませんね。

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子