環境省が公開している「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、令和4年度の犬の処分数は、2,434頭だそう。そのようななか、余命半年と宣告された妻と家族のために、殺処分寸前だった保護犬・福を家族として迎え入れた小林孝延さんは、「救われたのは犬ではなく僕ら家族だった」と語ります。小林さんいわく、「日本ではクレジットカード1枚で衝動的に犬を買う人が後を絶たない」そうで――。

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セラピードッグを知る

本当に今の我が家の状態で犬を飼うことはできるのだろうか?そもそも末期がんの患者が動物と暮らしても衛生面で問題はないのだろうか。薫(妻)は、子ども達は賛成してくれるだろうか。

いざ現実の課題に向き合うと、わくわくで膨らんでいた気持ちが一気にしぼんでいった。でも、もたもたしている時間は僕らにはない。

今できることを悔いがないようにやるだけなのだ。急いでいろいろな資料にあたってまず根本的な「安全面」を調べてみた。すると興味深いことに「セラピードッグ」という存在があることがわかった。

セラピードッグとは「人への忠誠心と深い愛情で、高齢者を始め、障がいを持つ方や病気(癌や精神)の治療を必要とする患者さんの身体と精神の機能回復を補助する活動をしています。セラピードッグ達が患者さんの心身の状態と向き合い、リハビリに寄り添うことで記憶を取り戻したり、動かなかった手や足が動くようになる効果があります。

国際セラピードッグ協会では、犬たちの個々の能力や性格を大切に育て、対象となる方々の症状に合わせた治療のケアーをしています。」(一般社団法人国際セラピードッグ協会のホームページより)

実際に末期がん患者が入居するホスピスや、特別養護老人ホームで、患者さんやお年寄り達が保護犬、保護猫たちと一緒に暮らすことで大いなる力をもらっているという例があるなど、ドッグセラピーは科学的なエビデンスはまだまだ得られていないものの、体験者や家族はあきらかに主観的な効果を実感しているという。

動物には心を癒す効果があり、病人が動物を飼うことはプラスに作用する要素の方が多い。資料を読み込むごとに僕は自信を深めていった。

しかもこうしたセラピードッグの多くは災害で飼い主と離れ離れになった保護犬たちで、体に障がいをもっている子も少なくないのだとか。

保護犬、まさに今僕が出会おうとしている犬たちではないか。

こうして僕の保護犬計画は秘密裏にそして着々と進んでいった。