女自身の手で護ることのできる日

また、弱い女性を救うためという意識よりは、女性の社会的地位を高めたいという意識が強かったであろうと想像できます。

嘉子は合格から数日後、「読売新聞」に寄せた文章「女と法律」の中で、「私が“女弁護士”になつたといふことは、私一個の小さな問題ですが、女が弁護士になれるといふ制度ができたことは、大きな問題です(中略)長い間『男の法律』で裁かれてゐた『弱い女』を『女だから』知らなかつた法的な無知を、女自身の手で護ることのできる日の近づいたことを皆様と共に喜びたいと思ひます」と書いています。

この言葉は、弱い女性を救うことが大事なのではなく、「弱い女」という決めつけを打ち破っていきたいという、嘉子の気持ちを示しているのではないでしょうか。

※本稿は、『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。