1972年創設…新潟・五泉フェニックスに受け継がれる“伝統行事”

 1972年に創設された新潟・五泉(ごせん)市の少年野球チーム「五泉フェニックス」は、昔ながらのトレーニングと現代野球ならではの効率的な練習方法を組み合わせ、選手を育てている。長い歴史を持つからこそ、強くあり続けるためには取捨選択が必須。坂道ダッシュにもマシンノックにも、それぞれ取り組む理由がある。Full-Countでは、全国の気になる学童チームの“選手を育てる秘訣”に着目。就任15年目を迎えた吉川浩史監督に、伝統を継承しつつ効率も重視するチーム方針について聞いた。

 五泉フェニックスは2010、2011年に高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会、2012年に全国スポーツ少年団軟式野球交流大会に出場した。今年はすでに全日本学童新潟県大会出場を決めており、6月に全国切符をかけた大一番に臨む。

 吉川監督が「伝統行事」と表現するように、長く継承されている練習メニューが坂道ダッシュだ。練習場所である五泉市立五泉東小学校グラウンドのバックネット裏にある坂道を、二人一組になって走る。坂道の角度は、スタート地点が約20度でゴール地点は約40度。30メートル程ある左カーブの坂道を1日10本前後ダッシュする。

 坂道ダッシュの狙いは競争心、脚力、体力の向上につなげること。吉川監督の就任以前は「試合に負けたら倍走る」というような懲罰的な側面が残る時代もあったというが、今は選手の顔色や天候を考慮しながら本数を決めている。

ウオームアップの代わりにも…指揮官語るマシンノックの効果

 一方、数年前から新たに取り入れたのがマシンノック。3台のマシンを使ってフライとゴロの捕球練習を行っている。給水を挟みながら計1時間半から2時間程実施。技術の向上だけでなく、ウオームアップの時間を削って効率よく体力強化を図れるのも利点の1つだ。

 吉川監督は、「以前は私やコーチがノックを打っていましたが、途中で我々も給水をしないといけないし、何度も同じ場所にボールを打つのは難しい。マシンを導入したことで効率は計り知れないくらい上がって、時間練習の短縮につながりましたし、その分ほかの練習もできるようになりました」と効果を語る。

 また約10年前からは練習前に股関節のストレッチに取り組むことを習慣づけている。卒団した教え子が中学や高校で肩肘を痛めた事例を何度か耳にし、「防げることは防ごう」と医師やトレーナーの助言を受けながらメニューを組んだ。ストレッチを徹底するようになってからは肩肘を故障する選手の数が大幅に減ったという。

 チームスローガンの「日々の努力に胸を張れ」は創設以降、一度も変更していない。その一方、「時代も変わるし、子どもも変わる。効率のよい新しいものはどんどん取り入れていきたい」と吉川監督。五泉フェニックスは6月3日から開催される「少年野球フェスティバル」に登場予定。日々、努力の仕方を変えながら、これからも歴史を紡いでいく。(川浪康太郎 / Kotaro Kawanami)