国史跡で岐阜県内最大の前方後円墳「昼飯(ひるい)大塚古墳」(大垣市昼飯町)が、仮想空間と現実世界を組み合わせたXR(クロスリアリティー)技術を使い、より楽しく観光できるようになった。市が体験型XR観光アプリ「ストリートミュージアム」でアプリを制作し、現実の景色に重ねて築造当時の姿や埋葬施設を“再現”。東海地方の古墳時代の政治や社会構造を考える上で重要な同古墳の特徴を学べる。

 同アプリはスマートフォンやタブレットを用い、衛星利用測位システム(GPS)情報を活用することで、名所旧跡を訪れた際にさまざまな史跡を拡張現実(AR)や仮想現実(VR)で表示する。同古墳の上で使うと、埴輪(はにわ)がずらりと並ぶ約1600年前の姿が実際の風景に重なって現れる。3種類の埋葬施設がどのように安置されていたかも表示。当時埴輪を用いて行われていた儀式の様子を追体験できる。南側広場では、当時あった古墳の下段もARで表示する。

 現地以外の自宅などでも使用でき、古墳を画面に立体的にCG表示し、拡大縮小、回転させながら築造当時の姿を確認できる。周辺の古墳や出土遺物、施設など18カ所の情報も掲載した。

 市は今後、小中学校の歴史学習にも活用していくという。市教委文化振興課の担当者は「1979〜2011年度の発掘調査を基に、細部までこだわって忠実に再現した。現地でも自宅でも、ぜひ使ってみてほしい」と話した。

 同古墳を訪れた安八郡神戸町の会社員(24)は、早速アプリをスマホにインストール。「すごく便利。遺跡史跡巡りがより楽しくなりそうで、他の史跡にも行ってみたくなる」と話した。

 昼飯大塚古墳は古墳時代中期の4世紀末に築造され、墳丘の長さは約150メートル。三段築成や後円部頂上に竪穴式石室、粘土槨(かく)、木棺直葬という三つの埋葬形態が存在するのが特徴で、その構造や副葬品などは畿内の大王墓に準ずるものとされる。2000年に国史跡に指定され、歴史公園として整備、公開されている。