サッカーの元日本代表MFで、J3のFC岐阜のクラブアンバサダーを務める柏木陽介さん(36)が、11日の長良川鵜飼の開幕日に、観覧船の船頭としてデビューする。現役時代は「太陽」の愛称で親しまれた司令塔の活動の場は、ピッチの上から清流へ。「自分が船頭をやることで鵜飼を知ってもらい、『鵜飼に来たい』と思う人や船頭をやりたいと思う人が増えたらうれしい」と話している。

 兵庫県出身で、J1サンフレッチェ広島やJ1浦和レッズで活躍。2020年の新型コロナウイルス流行後は、当時の所属クラブが設ける感染対策のルール違反があり、21年にFC岐阜へ移籍した。「サッカーをできる環境を与えてもらった。岐阜に来て、自分を変えてもらったことはたくさんある」といい、現役中から、交流サイト(SNS)などを通じて岐阜の魅力を積極的に発信していた。

 鵜飼については、岐阜に来るまで聞いたことがある程度だったが、実際に見ると「鵜匠や船頭の力が合わさって、鮎が取れるかどうかは分からない、作り物じゃないショーをやっている」と感動。現役を引退する直前の昨年10月ごろ、知人からの紹介もあり、船頭として活動することを心に決めた。

 一般応募者の1人として面接や研修、実技研修、試験を受講。自然を読む難しさや操船のハードさを学び、「当たり前にいる存在だと思っていた船頭だったが、実際にやってみると大変で、こういった人たちが鵜飼を支えている」と再認識した。

 そんな尊敬の念があるからこそ、自身の活動も「冷やかしとは思われたくない」。10月15日までの開催期間中は、クラブアンバサダーの仕事と両立しながら、船頭の活動にもできるだけ参加するという。

 「船頭は風や水の深さを注意しながら運転する。常に頭を働かせないといけないのは、サッカーと似ている」。同時に、「人の命を預かるのでサッカーよりも緊張するが、一生懸命、皆さんの安全を第一にやっていく」と意気込んだ。