文●工藤貴宏 写真●澤田和久、内藤敬仁

 次はどんなジャンルのクルマを買おうか?

 そう考えたときに、いま、多くの人が真っ先に浮かべるのはSUVではないでしょうか。

乗り降りしやすく荷物もたくさん乗るクロスオーバーSUV

GLA 200 d 4MATIC

 いまや新車販売(軽自動車を除く)におけるSUVの比率は6割ほどまで高まっています。SUVのメリットとしては、乗り降りがしやすいこと、着座位置が高くて周囲がよく見えること、小さな段差などに車体の下を擦る心配が少ないことなどがあげられるでしょう。

 SUVは世界的なブームなので、日本だけでなくアメリカやヨーロッパのメーカーもたくさんのSUVをラインナップ。メルセデス・ベンツもそんなブランドのひとつで、あまりの人気ゆえに世界各地で新車が奪いあいとなっている「Gクラス」をはじめ、14もの車種をラインナップしているほどです。

 今回紹介するのは、そんなメルセデス・ベンツのなかでもっとも小さなSUVである「GLA」。全長わずか4415mmのコンパクトカーです。

 GLAは同社のコンパクトハッチバック「Aクラス」をメカニズムの多くを共有する仕立てですが、ボディは別物。ただし、見るからにSUVだと思わせるようなワイルドな雰囲気はなく、パッと見たところは「リフトアップしたAクラス」という印象。それは乗用車の感覚で気軽に付き合えると感じる人が多いのではないでしょうか。

 だけど地面に対する着座位置が高いぶんだけAクラスよりも乗り降りしやすいし、高さを有効活用できるので荷室も実用的(荷室容量はAクラスの355Lに対して435Lと広い)。それって、日常生活のパートナーとしての相性がいいってことではないでしょうか。

 低い車体や低い運転姿勢が好きとか、背の高いクルマは嫌いというのであれば、SUVは購入対象にはならないかもしれません。でも、乗り降りしやすくて荷室も広めの車が欲しいとなればGLAのようなクロスオーバーSUV(SUVとしては背が低くハッチバックやワゴンに近いパッケージングのモデル)は本当に合理的な選択肢だと思います。

GLA 200 d 4MATIC

予算と好みに合わせて選べる豊富なバリエーション

GLA 200 d 4MATIC

 そんなGLAのバリエーションは、排気量1.3Lのガソリンターボエンジン(136㎰)にモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドでFFの「GLA180」、2.0Lのディーゼルターボエンジン(150㎰)を積んで4WDとした「GLA200d 4MATIC」、さらには2.0Lのガソリンターボエンジンを積む高性能モデルとして306psの「メルセデス-AMG GLA35 4MATIC」と421psの「メルセデス-AMG GLA45 4MATIC+」も用意。好みに合わせて選べる状況となっていますが、今回はディーゼルエンジン+4WDの「GLA200d 4MATIC」に乗ってみました。

 まず声高に伝えておきたいのは、このディーゼルエンジンはかなり出来がいいってこと。今どきのディーゼルは振動が少なく、車内にいる限り音も煩くないというのは常識になりつつあります。それはこのGLA200dだってもちろんそうですが、それだけに留まらないのが「654」という型式が割り振られたこのディーゼルエンジンの凄いところ。エンジンのフィーリングにおいてディーゼルでは一般的なザラザラした感触がなく、ガソリンエンジンのクルマだと間違えそうになるほど滑らかなのだから驚かずにはいられません。

GLA 200 d 4MATIC

 美点はさらにあって、それはパワーの盛り上がり方。ディーゼルエンジンは低回転のトルクが力強いものの高回転はスムーズではないというのが定説ですが、このエンジンは3500回転を超えてからのパワーの盛り上がり感もあってまるでガソリンエンジンのよう。アクセルを踏み込むのが楽しくなるようなフィーリングなのです。

 もしかすると、「そんなに『ガソリン車のよう』っていうのならディーゼルではなくガソリンエンジンを選べばいいのでは?」と思う人もいるかもしれません。

ディーゼル車ならではのメリット

 でも、愛車選びとして考えてみると、ディーゼル車はガソリン車にはないメリットがあって魅力的なのですよ。それは燃料代。

 ディーゼルの燃費がいい(WLTCモードはガソリン車の14.9km/Lに対して16.4km/Lに留まるが実走行ではもっと差がある印象)というのは多くの人が知っていると思いますが、加えて燃料の軽油も単価が安いのも魅力。ガソリン車に給油するハイオクガソリンに対して軽油は2割くらい単価が安いから、サイフにやさしいのです。

GLA 200 d 4MATIC

 もちろんラインナップにはガソリンエンジンもあるわけですから「それでもやっぱりガソリンエンジンがいい」という選択もありだし、「スポーツカーのようにパワフルな走りを楽しみたい」というならAMGという選択肢だってある。そういった選択の幅の広さもGLAの魅力かもしれません。

改良型のポイントは?

GLA 200 d 4MATIC

 そんなGLAは2023年9月にアップデートを受けていて、最新仕様はフロントバンパーやテールランプのデザインが新しくなっています。インテリアはセンターコンソールのタッチパッド無くなってスッキリとしたデザインになったほか、オプションの「AMGライン」を選ぶと3本ツインスポークにタッチセンサーを備えた新世代のハンドルが装着されるのがトピック。また、従来はハンドルにかかるトルクやコントロールボタンへのタッチで判断していたハンズオフ検知機能が静電容量センサーとなり認識率が高まったのも嬉しい進化ですね。

まとめ

 メルセデス・ベンツのSUVラインナップの末っ子となるGLAは「大きな車体のSUVは必要ないけれど、小さなハッチバックよりも実用的なクルマが欲しい」というユーザーに向いているクルマ。そしてイチオシは、ディーゼルエンジンを搭載して走りが力強い上に燃料代も安く抑えられる「GLA 200 d 4MATIC」です。

著者:工藤貴宏(くどう たかひろ)