発酵のぎもん

「コンブチャ」って一体なに?

別名「紅茶キノコ」で知られる、発酵飲料

「コンブチャ」とは、「紅茶キノコ」という名称でも知られる発酵飲料です。日本で飲まれている「昆布茶」とはまったくの別物で、紅茶や緑茶、ウーロン茶などのお茶を原料に発酵させたもの。諸説ありますが、数千年以上前に中国北部や東モンゴルで発祥したという伝統的な飲み物です。日本では1970年代に紅茶キノコとしてブームになりました。

原料にキノコが入っている訳ではないのに、なぜキノコ? と疑問に思うかもしれませんが、つくり方にその理由がありました。コンブチャ(紅茶キノコ)は、原料の紅茶(お茶)に砂糖を加えたものをベースに、「スコービー(scoby)」と呼ばれる酢酸菌と酵母からなる菌株(1つの細菌から分裂増殖した菌の集まり)を入れて発酵させてつくります。

その菌株がゲル状の塊でキノコに見えることから「紅茶キノコ」と呼ばれるようになったという説や、ロシアで「ロシアンティー・マッシュルーム」と呼ばれていたことから、日本語に訳された際に「紅茶キノコ」となったという説があるようです。

そして、この紅茶キノコが欧米に持ち込まれた際に、なぜか「コンブチャ」と呼ばれるように。今度はスコービーが昆布に見えたために「コンブチャ」となったという話や、酵母茶が訛って「コンブチャ」となったという話などさまざまあり、こちらも真相は明らかになっていません。

欧米では定番ドリンクの「コンブチャ」

海外では「KOMBUCHA」として親しまれている「コンブチャ」。欧米では2010年頃からブームとなり、今ではスーパーなどの専用コーナーに複数ブランドのKOMBUCHAが並んでいるほど、定番ドリンクという位置付けになっています。2014年頃から日本にも逆輸入され、健康志向や発酵食品好きの人などには知られる存在になっています。

その味わいは、紅茶(お茶)由来の渋味と砂糖の甘み、そして酢酸菌がつくる酸味と酵母がつくり出す炭酸で、フルーティーですっきりとしたもの。そして、紅茶(お茶)に含まれるポリフェノールには高い抗酸化作用があったり、酢酸菌のつくり出す繊維質や酵母の細胞壁には腸内にある免疫スイッチを刺激して活性化させる働きもあったりするため、美容や健康にいいとされています。

現在、日本にもコンブチャを手がけるメーカーが数社あり、オンラインショップで購入可能です。海外産のものを含めると、種類が豊富なコンブチャ。気になった人は原材料やフレーバー、飲み方などをチェックして、お好みのものを見つけてみてくださいね。

監修:小泉武夫(こいずみたけお)
1943年福島県の酒造家に生まれる。農学博士。東京農業大学名誉教授のほか、全国の大学で客員教授を務める。専攻は醸造学・発酵学・食文化論。食にまつわる著書は140冊以上。国や各地の自治体など、行政機関での食に関するアドバイザーを多数兼任。発酵文化の推進ならびにその技術の普及を通じてさまざまな発展に寄与することを目的とした「発酵文化推進機構」の理事長も務める。 発酵文化推進機構公式サイト