歌舞伎俳優の中村勘九郎(42)、中村七之助(40)が28日、東京・新宿歌舞伎町でお練りを行い、「歌舞伎町大歌舞伎」(5月3〜26日、シアターミラノ座)をアピールした。歌舞伎町で歌舞伎のお練りを行うのは史上初。神楽坂の芸妓(げいこ)10人も参加して、花を添えた。

 JR新宿駅近くのモア4番街から人力車に乗り、シアターミラノ座が入る東急歌舞伎町タワー前(シネシティ広場)まで約600メートルのお練り。待ち合わせスポットのアルタ前を通過し、靖国通りを横断。ビルの上からゴジラ像が顔を出すTOHOシネマズ新宿前に登場すると、多くの見物客や外国人観光客が手を振り、「中村屋!」「待ってました!」の大向こうが響いた。

 勘九郎はこれまで全国各地でお練りを行っていることに触れてあいさつ。「生まれも育ちも東京。東京でお練りというのは、小っ恥ずかしかったのですが、声を掛けていただき、楽しかった。一生に一度できるか、できないかという経験をさせていただいた。この地で歌舞伎をできる喜びをかみしめながら、勤めたいと思います」と気を引き締めた。

 七之助は「本当に不思議なお練りを体験させていただきました。そこのボウリング場で人生最高スコアを記録しました。3投目までストライクで、デートを忘れてボウリングをしていたら、二度とその女性とはデートできませんでした」とほろ苦いエピソードを披露。公演に向けて「私たちの愛する歌舞伎を面白かったと言ってもらえるように一生懸命、誠心誠意、勤めますので、熱い熱いご声援をお願いします」と呼びかけた。

 歌舞伎町の地名は戦後、この地に歌舞伎座誘致の計画があったことに由来する。その後、金融政策や建築制限によって実現しなかった。歌舞伎町での歌舞伎公演は中村獅童(51)が2019年に新宿FACEでオフシアター歌舞伎「女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)」を上演して以来、5年ぶりとなる。(有野 博幸)

 〇…公演は「正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)」「流星(りゅうせい)」「福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)」の3演目。お練りに参加した中村虎之介(26)は「ギャルっぽい方が『やべぇ、マジ分かりやすそう!』と言っていました」と若者へのアピールに手応えを口にした。ほかに中村勘太郎(13)、中村長三郎(10)、中村鶴松(29)も出演する。