衆院3補欠選挙(28日投開票)は27日、選挙戦最終日を迎えた。東京15区では無所属・乙武洋匡氏(48)=ファースト、国民推薦=の応援に都民ファーストの会の特別顧問を務める東京都の小池百合子知事(71)が駆けつけ、最後まで必死のバックアップ。唯一の与野党対決となっている島根1区には岸田文雄首相(66)が告示後2度目の現地入り。今年、自民党総裁選、都知事選を迎える背水の両トップが存在感アピールに必死だ。

 最後まで、小池氏と抱き合って戦った12日間だった。豊洲で街頭演説を行った乙武氏は「今度こそ国会に行きたい! 思いを託してくださってる方々のために今度こそ仕事がしたいんです! 勝たせてください!」と涙ながらに訴えた。

 情勢調査ではトップに届いていない乙武氏。隣に立った小池氏は「この選挙とても大事であります。どうぞ乙武さんに、まず一票を投じていただきたい。ここから始まる大改革、一緒に進めようじゃありませんか」と集まった聴衆に投票を呼び掛けた。

 小池氏が乙武氏の応援に駆けつけた日数は、12日間の選挙戦のうち計9日間に上る。ファーストの会や都民ファーストの会は、2年前の参院選では候補者に立てた荒木千陽氏が、直近でも今月21日に投開票となった目黒区長選で推薦した候補者が、ともに落選している。

 6月にある都知事選、そして次期衆院選に向け“小池パワー”を示しておきたいところ。小池氏が東京15区補選にかける思いは強く、乙武氏選対本部は「知事は公務以外の隙間時間は全て応援に使っている」と明かす。小池氏も「とにかく勝たなきゃしょうがないでしょ」と言っているという。

 存在感を出したいのは岸田首相も同じだ。この日、告示後異例となる2度目の島根1区入り。新人の錦織功政氏(55)の応援マイクを握り「苦しい選挙が続いている」と表明。「私たちは覚悟を決めて党を変えていかなければならない」と真顔で訴えた。

 3選挙区で東京と長崎3区は党として公認候補を立てられず不戦敗。島根と合わせて“3連敗”となれば、選挙に弱いトップとして秋の総裁選で党内からレッドカードが突き出される可能性もある。世論調査では自民劣勢の結果が出ており、岸田氏の顔にも悲壮感が漂っている。さまざまな思惑、背景の下に行われている衆院補選。28日、有権者の審判は下される。

 〇…立憲民主党・酒井菜摘氏(37)も江東区内で最後のお願い。「なつみ〜キャ〜」という女性の歓声に迎えられながら行われた門前仲町駅前の演説では「投票に行って意思表示をお願いします。補選は全国で3か所、今後の政権を占う大切な選挙です」と政権争いを意識した訴えを行った。選挙戦では同党幹部が連日応援。選挙協力している共産党の小池晃書記局長や田村智子委員長らも参戦し、れいわ新選組の櫛渕万里共同代表、社民党の福島瑞穂党首らも駆けつけた。この日も立憲の蓮舫参院議員ら重鎮が訪れ、東京15区NO1の組織力を発揮。最後は「なつみ、なつみ」と盛大なコールを受けていた。

 〇…日本維新の会から出馬の金沢結衣氏(33)は、江東区内で最後の訴え。JR亀戸駅前では「政治不信を断ち切るのは地元の皆さまの一票です」と強調した。この日の応援には、馬場伸幸代表(59)、共同代表の吉村洋文大阪府知事(48)、藤田文武幹事長(43)のトップ3がそろい踏み。東京15区にかける思いの強さがにじみ出ていた。馬場代表は選挙期間中の「立憲に投票しないで」などの口撃が話題となったが、この日も「野党第1党の立憲民主党、国会で全く仕事していませんよ」と再攻撃。「日本のためにどこが役に立つのか考えて、投票行動を起こしていただきたい」とお願いした。