7月26日のパリ五輪開幕まで17日であと100日となった。五輪で2連覇を目指すレスリング女子50キロ級の須崎優衣(24)=キッツ=は16日、優勝したアジア選手権(キルギス)から成田空港に帰国。勝負の今夏へ「最高の金メダル」と改めて世界一への誓いを立てた。

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 五輪連覇を目指す女王には、パリの表彰台の頂点がしっかりと見えていた。須崎は優勝したアジア選手権から帰国すると、報道陣に対応した数分間で今夏を見据えて、「金メダル」と6度繰り返した。「(同選手権は)全てがパリで金メダルを取るための経験だったと思う。必ずパリで最高の金メダルを取れるように、より一層頑張っていきたい」と力を込めた。

 アジアを制しても満足はしない。シニアで海外勢への連勝を94に伸ばし、東京五輪後の無敗も守った。アジア選手権は「プレ五輪のつもりで挑みたい」と位置付けていた大会。だが、初戦は北朝鮮選手に思わぬ苦戦を強いられた。得意のタックルを低い構えで警戒し、守りを固めてきた相手を攻めあぐねた。今回の試合を研究し、パリ五輪でも同様の戦略を取る選手が出てくることが想定され「ロースコアで抑えて最後に勝負をかけてくる選手にどう勝つか。ここからしっかり研究する」と危機感を強めた。

 決勝も中国選手を相手に4点を失った。五輪前最後の大会での反省は、自身への“包囲網”を実感したからこそだ。パリでの世界一から逆算し、「悔しい試合内容、試合展開。今は悔しい気持ちの方が強い」と率直に語った。一方でレスリング人気の高いキルギスで浴びた声援には「世界中にファンの方がいて応援してくれている」と女王としての自覚も強まった。

 五輪開幕まで100日。突き付けられた課題に向き合う時間は残されている。「この悔しい経験を生かせたら、最高の勝ち方で金メダルを獲得できる。3か月後に笑顔でいられるかは自分次第。しっかり自分と向き合って、金メダルを取るためだけに生きていきたい」。須崎が、覚悟を決めた。(林 直史)