8月7日に開幕する第106回全国高校野球選手権大会(17日間・甲子園)の一部日程で、暑さ対策として午前と夕方以降に試合を行う「2部制」が導入の方向で検討されていることが18日、スポーツ報知の取材で分かった。同大会では年々深刻化する気温の上昇に伴い、選手たちの熱中症対策が急務になっている。まずは開幕日を含む3試合実施予定(3試合日)の3日間、試験的に行う案が、19日に行われる第2回大会運営委員会で討議されることになった。

 夏の甲子園大会の懸案とされてきた酷暑対策へ、日本高野連が大きな第一歩を踏み出す可能性が高くなった。比較的涼しい午前中と、夕刻以降の「2部制」で試合を行うというもので、今大会では「3試合日」の3日間、テスト的に実施する方向で準備が進んでいる。関係者は「まずは3試合の日にやってみようという案。そこで得たデータや出てきた問題点を元に、次の段階に進むことを想定しています」と語った。

 近年、夏の猛暑は激しさを増すばかりだ。昨夏の開幕日では熱中症の疑いで計6選手が理学療法士の処置を受けるなど、大会を通じて担架で運ばれる選手が続出。抜本的な対策が求められていた。

 日本高野連は以前から「2部制」の研究を進めており、実現へシミュレーションを重ねてきた。今夏の開幕戦では、開会式後に1試合を行い、気温が上昇する午後帯にインターバルを設けた後、夕刻から2試合を行うことを想定している。開会式に出た後、第2試合に出場するチームは近隣の施設に待機し、第3試合に出場するチームはいったん選手宿舎に戻る―といった具体的な計画も水面下で検討されている。

 現在、夏の甲子園大会はそのほとんどが1日4試合。これまで観客は入場券を買えば一日中、試合を観戦することができた。3試合の日に「2部制」が導入された場合、入れ替えを行うのか、その際の価格設定をどうするのかといった課題はある。しかし、選手の健康面が最優先であることは言うまでもない。

 高野連はこれまで暑さ対策として休養日の増加、白いスパイクの使用許可、延長10回からのタイブレーク導入、5回終了後のクーリングタイム10分間などの施策を行ってきた。「プレーヤーズ・ファースト」の見地からも、朝夕の「2部制」は実現すれば、改革の一歩となる。

 18年京都大会で3時間の休憩も 〇…18年の京都大会では、4試合日の準々決勝で酷暑対策として第2試合終了後、約3時間の休憩を設けた例がある。当初は第3試合が午後1時30分、第4試合が午後4時の開始予定だったが、第2試合が午後1時7分に終了し、第3試合は午後4時5分開始に。第4試合は午後7時1分開始のナイターとなり、延長11回の熱戦。午後10時37分終了という高校野球では異例の事態となった。

 ◆甲子園大会の選手負担軽減策

 ▽休養日 13年から準々決勝後に設けられ、19年からは準決勝の翌日、21年からは3回戦第2日の翌日にも設定され、計3日に。

 ▽白スパイク許可 それまでは黒のみ許可されていたが、スパイク内の暑さが緩和されることから、20年度から白も可能に。

 ▽10回からタイブレーク タイブレーク制は18年センバツから延長13回で導入。23年春から高校野球の全公式戦で延長10回スタートに。

 ▽クーリングタイム 23年夏から5回終了時、水分摂取と身体冷却のため10分間導入。大型の送風機、冷凍庫、サーモグラフィーの他、スポーツドリンク、アイスベスト、ネッククーラーなどが用意された。