◆JERA セ・リーグ 巨人2×―1阪神=延長10回=(4日・東京ドーム)

 巨人が阪神との死闘を制し、カード勝ち越しを決めた。1―1で迎えた延長10回1死満塁、吉川尚輝内野手(29)が前進守備の二遊間を破る一打を放ち、チームを今季2度目のサヨナラ勝ちに導いた。9回に3番手でマウンドに上がった西舘勇陽投手(22)も1回無失点。首位・阪神にゲーム差1に迫った。

 ドラ1が見事に復活した。西舘は役目を果たしてマウンドを降りると、大きな西舘コールに包まれながらベンチへ戻った。1回を無安打1四球で3登板ぶりの無失点&ホールド。11ホールドは依然としてリーグ単独トップだ。

 1―1の9回に登板。先頭・大山にストレートの四球を与えたが、気持ちを切り替えたかのように力投した。糸原を151キロ直球で中飛に斬ると、ノイジーはカットボールで遊ゴロ、最後は坂本をこちらもカットボールで三ゴロに封じた。阿部監督は「西舘が今日抑えられて、多少また自信を取り戻せたんじゃないかなと思います」とねぎらった。

 開幕からセットアッパーを務め、4月25日の中日戦(東京D)では開幕から10試合連続無失点&ホールドをマーク。12年の田島(中日)に並ぶ新人の連続最多ホールド記録を樹立した。暗転したのは翌26日・DeNA戦(横浜)。1/3回を3失点でプロ初失点&初黒星を喫すると、続く同30日・ヤクルト戦(東京D)では1回2失点で2敗目。「結果を出し続けるのが、継続していくのがプロの世界で一番大変なことだと思う」とシーズンを迎えていた中で、ぶつかった壁だった。

 マウンドではポーカーフェースを貫く男だが、初失点の夜は悔しさのあまり、眠れそうにもなかった。だから帰寮後は「サウナと水風呂に入って強制的に寝られるようにしました」と無理にでも寝られる手段をとった。「悔しかったです。打たれた球が全部失投だった。そこを最後投げ切れていたら、絶対何とかなっていたので」。反省の分、それは大きな糧になった。

 先輩たちの存在も大きかったのは間違いない。高梨や船迫らから「切り替えていこう」などと励まされた。特に船迫は2年目で「去年自分がルーキーで、打たれたときにすごくへこむのは経験したことなので。見ている感じも落ち込んでいたので、少しでも励みに、プラスなきっかけになれたらいいなと思っていました」と明かす。後輩は先輩の言葉に耳を傾け、力に変えた。

 ある日の練習中には、指揮官からも「強い気持ちというのが大事だぞ」と声をかけられ、心に深く刻み込んだ。大勢が出場選手登録を抹消された中、救援陣の中でドラ1の力も不可欠になる。一つの壁を乗り越えた西舘。プロ初登板初ホールドを記録した開幕戦と同じ伝統の一戦で、再スタートを切った。(田中 哲)