◆JERA セ・リーグ ヤクルト1―2巨人(10日・神宮)

 巨人・阿部慎之助監督が捕手出身の指揮官ならではの見事なアドバイスで、戸郷翔征投手の好投をサポートした。

 先発の戸郷は初回を3人で抑えたものの、2回2死を取ってから突如、乱れた。長岡に簡単に2ストライクを取ってから、ファウルで粘られると最後は3球続けたフォークを振ってもらえず四球。すると続く中村に初球から3球続けてボールを与えるなど、結局は2者連続で歩かせた。ここで8番・武岡にも3ボール0ストライク。次打者が投手ということもあり、4球目を振りに来た打球がセカンドフライとなり、何とか無失点で切り抜けた。

 浮かない表情のままベンチへ戻った右腕の隣に、阿部監督が歩み寄り、座った。試合のまだ序盤。指揮官が先発投手と話し込む姿は、プロ野球の世界では珍しい。

 「この前から、たまにゾーンに入ってストライクが入らなくなる時があるから、そこは自分で受け入れて、それでも打たれていないんだから、まずは受け入れてイライラしないで、ちょっと配球を変えてとかっていうのは言った」

 前回、ヤクルトと対決した東京ドームでは痛恨の同一カード3連敗。ここまで下位に沈んでいるが、ヤクルトのこの試合までのチーム打率・249と136得点はいずれもリーグトップだった。オスナ&村上&サンタナという最強クリーンアップを要する燕打線を警戒するあまり、コーナーを狙った投球で逆に自分を苦しめるという悪循環に陥っていた。

 そして戸郷は、3回以降ストレート主体のストライクで勝負する力投を披露。今季最多の113球で7回を1安打無失点に抑えた。見事な今季3勝目。その陰に、キャッチャー出身の監督だからこそ、バッテリー心理を誰よりも知る阿部慎之助だからこそできた、アドバイスがあった。