◆大相撲 ▽夏場所初日(12日、東京・両国国技館)

 途中休場明けの照ノ富士(32)=伊勢ケ浜=ら、1横綱4大関が全て敗れる大波乱のスタート。出場した5人以上の横綱、大関陣の総崩れは、1横綱5大関だった2006年秋場所6日目以来で、初日に限れば昭和以降初の事態となった。

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 照ノ富士が顔をしかめた。大の里との一番はもろ差しを許し、苦しい体勢となった。最後は右足一本を残して苦し紛れの小手投げも不発で、土俵上で腹ばいになった。起き上がると眉間にしわを寄せ、花道では右足を振るしぐさを繰り返しながら、腹についた砂を手で払った。支度部屋では付け人を通じて、悔しさからか取材を拒否した。

 2日の横綱審議委員会による稽古総見では、左脇腹を痛めて稽古を急きょ回避。報道陣に公開となった9日の部屋の稽古でも相撲は取らなかった。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)も「ぶっつけ本番しかないですから。稽古はできていないですから」と土俵勘を懸念していたが、その不安が的中する結果となった。

 八角理事長(元横綱・北勝海)は「我慢できなかった。出てきたところを(投げよう)と思ったのだろうが、大の里も分かっていた。明日は気合を入れてやってほしい」と奮起を促した。(大西 健太)

 ◆逆転狙うも… 3大関がいずれも敗れる中、大関陣最後のとりでの豊昇龍もあっけなく崩れた。熱海富士に左の上手を許し、苦しい体勢に。右の下手投げで強引に逆転を狙うが、体重183キロの巨漢は揺るがず。最後は上手投げで敗れた。土俵上で苦笑いを浮かべた。支度部屋では険しい表情で、取材には応じなかった。八角理事長は「下手が浅かった。投げ一辺倒だけだからね」と厳しく指摘した。

 ◆左脚ひきずり 貴景勝は平戸海に当たり負けると、防戦一方であっけなく押し出された。勢い余って土俵下に転落。その際に痛めたのか、左脚を引きずりながら会場を後にした。先場所は13日目に勝ち越しを決めカド番を脱出したが、右大胸筋などを負傷し翌14日目から休場。場所後の春巡業も全休していた。出場に踏み切ったが、不安な船出。高田川審判部長は「相撲になっていなかった」と厳しく指摘していた。

 ◆転籍後初戦も 首の負傷など不安を抱える中で2度目のカド番を迎えた霧島は、苦しい滑り出しとなった。突き押し自慢の豪ノ山を相手に、立ち合いは右からの張り差しを選択。ただ効果は薄く、一気に押し出された。うつむき加減で花道を後にし、取材には応じなかった。音羽山部屋に転籍後、初めての一番を白星で飾ることはできなかった。八角理事長は「立ち合いが軽い。当たれていない」と指摘した。