◆米大リーグ ホワイトソックス0―3ドジャース(24日、米イリノイ州シカゴ=ギャランティードレートフィールド)

 ドジャース・大谷翔平投手(29)が25日(日本時間26日)、敵地・Wソックス戦に「1番・DH」で出場し、今季2本目の24号先頭打者本塁打を放つなど2安打2打点で勝利に導いた。2試合ぶりの一発は一塁を踏んだかの確信がなく、一度戻って踏み直す珍しいシーンもあった。9試合連続打点は1955年のR・キャンパネラに69年ぶりに並ぶ球団タイで、4回には決勝打も放って打点もリーグトップまで4差に接近。OPSなどを含めたリーグ“9冠”でシーズンを折り返した。

 祈った。いや、祈りすぎたのかもしれない。オーバーフェンスを願うあまり、大谷は体に染みついた動きを忘れるほどだった。バットを持ったまま一塁を通過し、一塁から15歩進んだ地点でふと我に返って一塁へUターンした。「(ベースを)踏んだか、踏んでいないかちょっと分からなかったので、一応戻ったという感じですかね」。実際には、いつもと逆の左足で一塁を踏んでいたが、24号先頭弾での異例の“逆走”に苦笑いするしかなかった。

 開始直後の初回先頭。2―2から5球目の外角72・9マイル(約117・3キロ)カーブを右手1本で拾うと、打球は右翼手のグラブをかすめてフェンスを越えた。打球速度93・8マイル(約151キロ)は米通算195発の中で最遅。「最初は(フェンスを)越えてくれないかなと思って見ていたので、バットをちょっと持ちすぎていた。クレイトン(マッカロー一塁ベースコーチャー)に『置いて行け!』という感じで言われて…」。おっちょこちょいな一面を見せたが、願いは通じて2試合ぶりの一発となった。

 同点の4回2死一、三塁では決勝の右前打。9試合連続打点で1955年のキャンパネラに69年ぶりに並んだ。直近14戦で9発、得意の6月は10発目。相手のWソックスは借金39と低迷するが、26日(同27日)は今季初のチケット完売。敵地でもフィーバーを巻き起こす大谷は「打つ球をしっかり打ててるので、それが一番いい」と語り、ロバーツ監督も「クレイジータレントだ」と絶賛した。

 81試合目を終え、162試合のシーズンを48発ペースで折り返した。24発、打率3割2分はリーグトップで、60打点もトップと4差。3冠王も視界に捉えている。移籍1年目。結果だけでなく、新天地に早い段階でなじんだことも収穫に挙げた。「まずはチームメートに慣れる必要があるので、そういう意味で素晴らしい前半戦だった」。試合前の野手ミーティング後にはバーンズに「ショーヘイ、ホームラン!」とむちゃぶりされたが、しっかり応えた。

 不慣れな1番打者。前日24日の1打席目に三振に倒れたこともあってか、試合直前のアップを7分早め、開始23分も前にグラウンドに姿を見せて対応した。投手調整がないことも打撃での好結果に結びついているとし、「確実に運動量が少ないのでリカバリーをしっかり取れる。プラス、経験を重ねることで自分の中でも打者として成長できている」と自己分析した。一流の準備を施し、最高の結果を残す一方、この日のベース踏み直しのように、おっちょこちょいな一面も大谷が愛される理由のひとつ。6月のショータイムはまだまだ続く。(安藤 宏太)

 〇…大谷が球宴前日の7月15日に行われる本塁打競争の出場について言及し「もちろんやりたい気持ちは、どの選手もあると思う」と前向きな姿勢を示した。球宴初出場だった21年には出場したが、22年以降は投手の調整もあって2年連続で欠場。今季は右肘手術からのリハビリ中で、まだ正式なオファーはないとして「ドクター、トレーナー、チームの許可だったり、他の部分の兼ね合い次第」と慎重に検討していくことになりそうだ。

 ◆翔平のおちゃメモ

 ▽ピザじゃないです(24年5月5日) 地元放送局の中継で「お気に入りの『マルガリータ(カクテル)』は何?」という質問に、マルゲリータと勘違いしたのか「ピザ!」。

 ▽本当に踏み忘れ(24年3月20日) 今季開幕戦で、右飛で一塁から二塁を踏んで一塁に帰塁したが二塁を踏み忘れてアウト。「完全に僕のミス」

 ▽え? 入ってないの?(24年3月3日) オープン戦でフェンス直撃の打球を外野手がゆっくりと追ったためサク越えと思い込み、ゆっくり走ったが三塁打に。

 ▽帽子が…(24年2月14日) 初めてド軍ユニホームを披露したが、一人だけ異なるロゴの帽子で登場。

 ◆大谷の主な記録

 ▽9戦連続打点 松井秀の6試合を超えて更新し続け、球団では1955年のキャンパネラ以来69年ぶり、1900年以降では5人目の最長タイ。

 ▽最遅打球 打球速度93.8マイル(約151キロ)の本塁打は、米通算195発の中で最遅。これまでは4月26日ブルージェイズ戦の96.1マイル(約154・7キロ)。本塁打の最速は同23日のナショナルズ戦の118.7マイル(約191キロ)。

 ▽月間10本塁打 21年6月の13本、23年6月の15本に続き3度目。