●グラウンドに今夏、各60〜70戸

  ●県内初、5月中に県着工

 石川県は8月をめどに、能登半島地震で甚大な被害を受けた珠洲市飯田小と大谷小中グラウンドに、世界的建築家の坂茂(ばん・しげる)さんが設計したコンテナ仮設住宅を整備する。各60〜70戸を建設予定で、5月中に着工する見通し。いずれも2、3階建てとし、限られた用地を有効利用する。珠洲で最大震度6強を観測した奥能登地震から5日で1年、2度の大震災に見舞われた珠洲の復興を象徴する建物として活用する。

 県内で「コンテナ仮設」が整備されるのは初めて。あらかじめ住居用に加工したコンテナを運んで組み立てる方式を採用し、現地での工期を短縮する。

 飯田小グラウンドには3階建て3棟を整備し、児童の体育の授業に使ったり、休み時間に遊んだりするスペースも確保する。大谷小中は2〜3階建ての複数棟を整備する方向で調整している。いずれも、入居期限である2年を過ぎても希望すればそのまま住み続けられるようにする。

 2011年の東日本大震災後、宮城県女川町(おながわちょう)のコンテナ仮設を設計した坂さん。昨秋の奥能登国際芸術祭2023(北國新聞社特別協力)に合わせ、珠洲市で「潮騒(しおさい)レストラン」の設計を手掛けた縁がある。

 同レストランは施設自体が芸術作品として話題を集めた。市は能登半島地震の復興計画の柱に「アート」を盛り込む方針で、今回のコンテナ仮設を象徴的な取り組みの一つとしたい考えだ。

 泉谷満寿裕市長は北國新聞社の取材に「芸術祭で生まれた坂さんとのつながりが、珠洲の新たな『希望の光』になるとうれしい」と強調。飯田と大谷では仮設の整備が遅れていたとし「申し訳ない気持ちだったが、ようやく着工のめどが立った」と語った。

 ★ばん・しげる 東京出身。米クーパー・ユニオン建築学部卒。1995年の阪神大震災以降、世界各地の被災地で、避難所の間仕切りや、紙の筒を使った仮設住宅を手掛ける。2014年に「建築界のノーベル賞」と呼ばれる米プリツカー賞を受賞した。