●旧黒部鉄道や人車軌道にも光

 富山県内の鉄道を研究する会社員草卓人さん(61)=立山町=が、富山の鉄道と近代化の歴史を研究した成果を1冊にまとめた。昨年10月にJR城端線・氷見線のあいの風とやま鉄道(富山市)への経営移管が決まり、県内の鉄道が新たな変化を迎えようとする中「今後の公共交通のあり方を考えるきっかけになればうれしい」と期待する。

 鉄道の路線網が充実している富山は「鉄道王国」や「鉄軌道王国」と言われる。鉄道研究者で愛好者でもある草さんが蓄積した知識を生かして執筆した著書のタイトルは「富山の近代化と鉄道―地域鉄道の成立と変容をめぐって―」。全64ページで、100年以上にわたる富山の鉄道の歴史を、北陸線の開通から戦後、そして未来へと、六つの時期に分けて解説した。富山市田刈屋にあった初代富山駅の写真や、県内で最初に開通した鉄道「中越鉄道」の開業当時の路線図など、多彩な資料を掲載した。

 黒部市の宇奈月温泉街が発展した基礎を築いた旧黒部鉄道の建設と沿線の観光振興や、旧大山村(富山市大山地区)に人が車両を押して運行する「人車軌道」が通っていたことなど、近年あまり取り上げられていなかった歴史も掘り起こした。

 草さんは「鉄道は最初から現在のような形だった訳ではない。先人がどんな思いで鉄道を建設していったのか、歴史を知ることで、未来を見つめ直すことにもなる」と話した。

 「富山の近代化と鉄道」は県が推進する日本海学の一環として国際課が編集・発行する。問い合わせは同課まで。