●「助けて」の声に応え

 氷見市の観光施設「ひみ番屋街」は13〜15日、輪島塗を格安で販売する能登復興イベント「輪島番屋市」を初めて開催する。震災間もなく、被害に遭った輪島の漆器店から「助けて」と飛び込みで支援を求められたのがきっかけ。同じく被災した施設として少しでも復興への力になりたいとの思いに突き動かされた。関係者は多くの人に輪島復興への一助になる温かい支援を求めている。

 輪島番屋市は、被災した輪島市惣領町の大藤漆器店が取り扱う輪島塗の箸やスプーン、フォークなどの食器をはじめ、汁わんや丸盆などが半額で販売される。被害を免れた、日展作家松井義明さんがカニと魚を描いた沈金の作品も展示、格安で販売される。商品の購入者にはオリジナルマドラーが先着50人に贈られる。

 大藤漆器店の大藤孝一社長(67)が震災後の1月中旬に気分転換に訪れたひみ番屋街で昼食を取った後、管理事務所に「仲間がいる。助けてください」と飛び込みで支援を求めた。

 ひみ番屋街は地震後に一時休業、1月27日から全店舗で営業を再開した。観光客の入り込みが回復し、イベントの開催時期を探っていたところで、大藤社長の求めに応じて7月の3連休に輪島番屋市を企画した。

 大藤漆器店は被災後に金沢市に輪島塗のギャラリーを開設し、住居と工房を失った輪島塗の職人を住まわせて受注販売に取り組み、復興を目指している。

 ひみ番屋街ではこれまで、能登復興応援コーナーを設け、震災で能登の土産物店などが休業して取引先を失った石川の特産品を納入して販売するなど支援を続けている。運営する氷見まちづくり株式会社の本多正樹事業課長は「大変な被害に遭った輪島の皆さんに少しでも助けになれば、ありがたい。イベントを通じて輪島の魅力に気づいていただき、お客様にいつかは行ってみたいと思ってもらえるとうれしい」と話した。

 輪島商工会議所で長年漆器業部会長を務める大藤さんは被災したひみ番屋街の復興応援について「感謝で胸が張り裂けるぐらい。こういう機会を与えてくれたことに恥じないように頑張りたい」と述べ、売り上げは輪島塗の制作に必要な職人の道具に充てる。