本作は「eスポーツ」を題材にした日本初の劇映画で、徳島県の高専を舞台に実在の男子学生をモデルに「eスポーツ」に熱中していく姿を描いた青春映画。映画「MOTHER マザー」やドラマ最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系)でも注目を集める奥平が演じるのは金髪にピアスという外見とは裏腹に心優しい一面もある翔太。映画「蜜蜂と遠雷」やドラマ「silent」(フジテレビ系)など話題作が続いている鈴鹿は、ケガを理由にバスケットボールを諦めた、失意の天才ゲーマーの達郎を演じる。育ってきた環境も、性格も異なる男子高校生が出会い、「eスポーツ」を通して新たな価値に気づいていく。

今回は主演の奥平と鈴鹿にオファーを受けた際の率直な思いや、お互いの印象、ゲームにまつわる思い出などについて語ってもらった。

プライベートでも一緒にゲームをするという2人
プライベートでも一緒にゲームをするという2人

――「eスポーツ」を題材にした新しい劇映画ですが、改めて脚本をいただいた時の感想をお聞かせください

奥平「僕はスポーツやゲームが大好きだったので、eスポーツを題材にした映画に関わることができてゲームファンとしてとても嬉しかったです。もちろんゲームの面白さもあるのですが、青春映画としても楽しめますし、今の子からしたら普通の感覚でも、僕たちの親世代から見たら新鮮な印象があるんじゃないかなと思います」

鈴鹿「僕もゲームが大好きなので、eスポーツの映画をやると聞いた時は嬉しかったです。ただ、実際に脚本を見てみると、僕らがただゲームをして、大会を目指して頑張っていくだけではなくて、家庭環境を始めとしたネガティブな側面も見えてくるんです。なので、いろんなものを抱えている高校生3人が頑張っている姿や一生懸命な姿を届けようと思いました」

――翔太と達郎という境遇の異なる役柄を演じてみての感想はいかがでしょうか?

鈴鹿「達郎ってすごく勝ちに執着している人物なんです。たとえば、授業を聞いていなくても正解できればいいという考え方ですし、ゲームでもチームの団結力よりも勝つことを最優先している。そこしか価値を見出していない人物なので、そこを崩しすぎずに翔太と亘と絡んでいけるのかを考えるのが難解ではありました。難しかったんですけど、苦しくはなくて楽しみながらお芝居できました」

奥平「クランクインする前に、監督から言われたこと以外は基本的に自由にやらせていただきました。それもきっと監督からしたら、僕ら若い世代の感覚をお芝居に出してほしいという思いがあったと思うんです。もちろん、撮影中は大変なことはたくさんあったんですけど、自由に翔太を演じさせていただきました」

――監督からは具体的にどのようなことを言われたのでしょうか?

奥平「『翔太は失うことで得る人』と言われました。最初はどういう意味なのか分からなかったんですけど、演じていくうちにだんだんとその意味が理解できるようになって。詳しくは言えないのですが、翔太は最後に何かを失ってしまうんです。普段は何も考えず自由に演じていたのですが、ターニングポイントとなるようなシーンでは失うことを意識しながら演じていました」

――鈴鹿さんは監督から何か言われましたか?

鈴鹿「達郎は人を人として見てないと言われました。そういう人が一緒に戦う仲間ができて、何か目指すものに向かって進んでいく中で、だんだんと協調性が生まれてくるんです。その変化を丁寧に演じていきました」

――お二人は今作が初共演となりますが、初めて共演して見えてきたお互いの印象を教えてください

鈴鹿「お芝居でも引っ張ってくれました。僕が困っている時とかもアドバイスをくれるのですごく助かりました。お芝居だけではなく、言葉でもリードしてくれるので頼もしいです」

奥平「央士くんもそうですし、小倉さんもそうなんですけど、僕には見えないようなことが見える人たちだなと思います。撮影ですごく大変なシーンがあったんですけど、その時に、僕がいつも使っている頭では分からないようなことについて、央士くんから積極的に意見を出してくれて。央士くんのお芝居を見ていても、僕とは違ったベクトルで考えているので面白いんですよ。共演シーンでも僕が頭で想像していたことと全く違うことをしてくるんです。だからこそ、リアルに翔太を演じられたんじゃないかなと思います」

――ちなみにお互いを見ていて、役と重なっている部分はありますか?

奥平「達郎のことをよく知らないっていうのはありますけど、あまりないかもしれないです(笑)」

鈴鹿「先日2人でゲームをしたんです。そこで一瞬達郎っぽいセリフを言ったの気づいた?」

奥平「え、分かんない」

鈴鹿「『下手くそ』って言ったじゃん!」

奥平「言ってた。僕の動き方があまりにも下手くそだったから(笑)」

鈴鹿「そこは翔太っぽかったよね。でも基本的にはすごく自分を持っているので、あまり役とは似ている部分はないかもしれないです」

――本作はゲームのシーンを始め、徳島県の雄大な自然が美しく切り取られています。作中で特に印象的に残ったシーンはありますか?

鈴鹿「ゲームをしているシーンって、僕らが撮影している時は画面がまだ緑だったり、パラパラ漫画みたいなものだったりしたので、最終的にどうなるのか分からなかったんですけど、実際に大きなスクリーンで見た時にゲームの高揚感や臨場感が出ているなと思って、すごく印象に残っています」

奥平「もちろん、3人で一緒にいるシーンやそれぞれの家族とのシーンも好きなんですけど、翔太で言うと、仲いい同級生と一緒に遊んでいるシーンとか、紗良と一緒にいるシーンが徳島の風景も合わさって、すごく光り輝いて見えるんです。後半になっていくにつれて、そういった人の存在が翔太にとって大事なものになっていくので、注目して観ていただけたら嬉しいです」

――先ほど奥平さんもおっしゃっていましたが、今回の撮影地となった徳島はとても綺麗な街並みが広がっています。徳島の思い出はありますか?

奥平「徳島の阿南市で撮影したんですけど、せっかくだから徳島市に行こうと思って電車で向かったのですが、交通系ICカードが使えないんですよ。切符を買って改札に行こうと思ったら、切符を入れるところがなくて困ってしまって...。僕は今まで経験したことがなかったので、タイムスリップした気分になって面白かったです」

鈴鹿「泊まっていたホテルから歩いて5分くらいところに喫茶店を見つけてずっとそこに入り浸っていました。そしたらおばちゃんと仲良くなって話しかけてくれるんです。隣が郵便局だったんですけど、郵便局の職員の方とかが食べに来てたり、いろんな地域の人が集まって喋っているの見ると、こうやって社会というか地域が成り立っているんだなって思いました。東京で1人暮らしだとそういう地域との関わりってどうしても少ないじゃないですか。改めて大切だなとか思いながら、コーヒーを飲んでいました」

――お二人はゲーム好きとのことですが、ゲームにまつわる思い出はありますか?

奥平「『FINAL FANTASY X』をプレイした時に、初めてゲームで感動して泣いてしまいました。前からゲームは好きだったのですが、それをきっかけによりゲームの魅力に気づかされました」

――感情が動かされたというか

奥平「そうですね。映画でももちろん感情は動かされるんですけど、また違った感情になることに初めてそこで気づけたことがすごく不思議な体験だったなと思って、思い出に残っています」

――鈴鹿さんはいかがですか?

鈴鹿「僕は『ポケモン』が印象に残っていて、2つ上の兄がいるんですけど、兄と一緒にどっちのバージョンを選ぶのかを話し合ってよく別々のバージョンを買って遊んでいました。ゲームに限らず、アニメもよく見ていましたし、カードゲームもよく買っていました」

――実際に作中では『ロケットリーグ』といった作品が登場しますが、お二人はeスポーツの題材になっているゲームしたことはありましたか?

奥平「学生の頃に『Fortnite』でよく遊んでいました。当時はまだ出たばかりで大会もなかったのですが、上手な人が上にいけるシステムがあったので、上のランクに行くために頑張っていましたね。その影響で競技を見るようになって、実際に優勝した人が何億円をもらえると聞いた時はびっくりしました」

鈴鹿「中学の時は『ウイニングイレブン』とか『FIFA』といったサッカーゲームや『Call of Duty』というFPSのゲームをやっていましたね。当時は世界中にたくさんのプレイヤーがいて、大きな大会が開かれているなんて知らなかったのですが、大会で活躍されて賞金を獲得しているニュースとかを見るとすごく嬉しい気持ちになります。こうしてゲームが夢になるというのが広まっているのがいいなって思います」

――ちなみに、お二人ともeスポーツの大会に出てみたいと思ったことはありますか?

奥平「小学校の時はまだ子どもということもあって、俺の方が強いでしょみたいな感じで自信があったので、いつか出てみたいと思っていましたね」

鈴鹿「僕は出たいってならなかったです。へたっぴだから恥ずかしいなって(笑)。だから、友達と遊ぶ時に大会に出てる感じでやろうよとか言ってよく遊んでいました。それが楽しいんですよね」

奥平「それがゲームの良さだよね」

――お二人がこれまでで1番熱中したことはありますか?

鈴鹿「僕は体操を小学生から中学生までやっていたのですが、ずっとバク宙ができなかったんです。バク転はできていたんですけど、バク宙になるとどうしても頭すれすれになってしまって。ずっとバク宙の練習に熱中していました。体育の授業ではバク転禁止だったので、自分との戦いだったのですが、バク宙をするという自分の夢を叶えるためにたくさん練習していました」

奥平「僕は空手ですね。7年ほどやっていたのですが、よく続けられたな、と。自分でやりたいと言ったので、引くに引けなかったというのもありますけど、すごく熱中していましたね」

取材・文=川崎龍也

作品情報

映画「PLAY! 〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜」
2024年3月8日(金)全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023映画『PLAY! 〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』製作委員会

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