「小学生のころからよく利用していました。とてもさみしい気持ちでいっぱいです。19年間ありがとう」

またひとつ、まちの本屋の灯が消えようとしています。

恵庭市の「岡本書店」。電子書籍やネット通販の普及などで、主力となる書籍の売り上げが減少。5月6日で閉店します。恵庭市に残る書店は、あと一軒だけとなります。

この日、開かれたのは自分のオススメの1冊を5分間で紹介するイベント

「ビブリオバトル」。

岡本書店の閉店を惜しむ市民らが企画しました。テーマは「感謝」。

イベント会場には通路が埋まるほどの観客が集まりました。

『ありがとうのカタチ』「この本の良いところは貰った物を使ってそれを利用してお返ししましょうというのが好きなんです」

『きみが来た場所』「サラリーマンなんですけど、一念発起して、子供たちに教える教育を変えていきたいと、塾を開いてそこで子供たちに大切なことを教えたいと」

発表後には、参加者と観客が一番読みたいと思った本に投票。

1位には恵庭市の女性が紹介した、版画家・棟方志功の半生を描いた「坂上に咲く」が選ばれました。

優勝した女性「岡本書店さんでどれだけビデオを借りて、本を買ったか。寂しいです。寂しいけれど今まで家族みんなでお世話になりました。ありがとうございました」

イベントを企画した水野みどりさん「大きな書店だから潰れない思っていた。本屋は本を買うだけでなくて空間が好きだったり、来て安心するような場所なので無くなるのが寂しいですね」

閉店が相次ぐマチの本屋。

全国の書店の店舗数は20年前に2万店を超えていたものが、昨年度にはそのおよそ半分に。

さらに、書店がひとつもない市町村は全国で27.7%にも上っています。

本屋が生き残るには何ができるのか…。

大阪市にある正和堂書店には全国から客が訪れています。

その理由は・・・

レジの横に並んでいるのは、オリジナルのブックカバー。

カバーとしおりを組み合わせることでアイスキャンディーに変身。

可愛らしさで集客を増やす狙いです。

福岡から「インスタでブックカバーを見てかわいいなと思って来ました。手に取って読む楽しみが増えるのでいい」

道内には市民の力によって無くなった本屋が復活した場所があります。

留萌市唯一の書店、「留萌ブックセンター」です。

よく見ると、全国的にも有名な三省堂書店の文字が。

いったいこれはどういうことなのか、その歴史は紙芝居にもなっています。

時は2010年、「誠文堂」という町の本屋さんが無くなり留萌市から本屋が無くなってしまいました。危機感を抱いて立ち上がったのは市民たちです。

「新しく本屋ができればその店のポイントカードの会員になるよ」

集まった市民の署名はおよそ2500人分。これを三省堂書店に送りました。

たくさんの署名に三省堂書店の社長は感動。

小さな活動は大きな熱意に変わり、ついには大きな本屋さんを留萌市に呼び込むことに成功したのでした。

この店で店長を務めるのは、無くなった「誠文堂」で働いていた今拓巳さんです。

留萌ブックセンター今拓巳店長「30万人以下の都市では書店はやっていくのはきついということを言われてますので、その時の留萌市の人口が2万5000人ぐらいだったんですよね。奇跡の塊でこの店が動いているような気がしてならないんです」

本が売れない今の時代。大切にしているのは

「どれだけ留萌ブックセンターを好きになってもらえるか」です。

地元の人たちに手伝ってもらいながら店で大人向けのお話会を開いてみたり、子ども向けに英語教室や読み聞かせ会を開いてみたりするなど、地元密着の取り組みに力を入れています。

留萌市の今の人口は1万8000人あまりですが、留萌ブックセンターのポイントカード会員は1万6000人を超えています。

今拓巳店長「楽しい店にしたいので常に何かイベントを組んでちょっと無理かなと思ってもやってみようという感じで今動いてます」

「本のある風景を残したい」と願う人もいます。

札幌市中央区旭ケ丘のお寺の境内に到着したのは1台の真っ白なワゴン車。

いどうほんやKOKO平塚真実さん「春らしい植物とかの本を持ってきたのと、登山道が近いので山の本もいいかなと思って持って来ました」

実はこれ、本屋さん。その名も「いどうほんやKOKO」です。

オーナーを務めるのは札幌市に住む平塚真実さん。

2022年の4月、検診で使われていた車を再利用したこの本屋をオープンしました。

学校の図書館で司書を務めるかたわら、月に4、5回道内各地のイベント会場などを巡ります。

移動本屋KOKO平塚真実さん「本のある町や風景がいいなというのがあった。

本屋さんが少なくなってきて寂しいなという思いもあったので無くなったら寂しいというものを自分でやっている感じです」

移動式の本屋はどこへでも駆け付けられることが持ち味。

本屋が無いような町にも、車で出向き本を売ることもあります。

店舗を持たない、いどうほんやKOKO。

この日は、お寺の境内で開かれたフリーマーケットイベントに出店です。

男の子「保育園と同じ!買いたい!」

絵本を見る子ども「クレーン車と〜?なんだぁこれ〜?」

Q絵本はどうだった?「楽しかったぁ♪」

平塚さんが自ら選んだ絵本を中心に、およそ100冊が並びます。

珍しい”車の本屋”には、大人も子どもも興味深々です。

親子連れ「本屋さんになかなか行く機会が無かったのでふとした時に本があると嬉しいです」

女性客「入らずにはいられない引き寄せられるような雰囲気ですよね」

移動本屋KOKO平塚真実さん「偶然ここで本を見かけて、『本っていいな』と思ってもらいたい。そうすると別のところで本屋さんに行ってみようかなと思ってって下さる方もいるかもしれないので、そういう事に繋がっていけばいいなという思いはあります」