これから移住する人に向けて、田舎暮らしで気になることをランキング形式で紹介。今回は、「移住支援の担当者数が多い自治体」をクローズアップします。移住希望者に対応してくれる担当者が多い自治体にはどういう傾向があるのか、本誌ライターが分析・解説します。

 弊誌「田舎暮らしの本」の人気企画『住みたい田舎ベストランキング』では、回答いただいたアンケートをもとに、さまざまな角度からユニークな取り組みをしている自治体をランキング化。読者の移住地選びの参考になるデータを提供しています。

【集計方法】
対象者:全国の自治体
調査方法:『田舎暮らしの本』からのアンケート
(アンケート送付は、「道府県庁経由でのメール」および「各自治体へ編集部から直接メール」の2ルート)
回答数:587自治体
アンケート実施:2023年10月末 〜 11月下旬
※各項目の算出方法は表の下に別途記載しています。

掲載:田舎暮らしの本 2024年2月号

【移住支援の担当者数が多い自治体ランキング】

移住支援の担当者数が多い自治体ランキング
※算出方法:移住支援に関する専任の担当者数。

 民間機関の日本創成会議が2014年、全国の約半数の自治体で40年には20〜39歳の女性が10年比で半分以下に減ると試算し、半減した自治体は人口減少に歯止めがかからない「消滅可能性都市」になると指摘。少子化対策が急務という提言を主導した元総務相の増田寛也氏の名前から「増田レポート」と呼ばれ、この10年間に全国の自治体に移住相談の専門部署ができるきっかけになりました。移住者争奪戦の是非はともかく、今では移住支援の担当者を配置するのは当たり前といっても過言ではない状況です。

 上の表は移住支援に関する専任の担当者数をランキングしたもの。10人以上と回答した自治体が5市あります。東北から東海地方に及んでいますが、やはり人口の規模が大きいところほど上位になる傾向は強いです。

第1位:岐阜県中津川市(なかつがわし)

 名古屋から約1時間で、中央アルプスを望める岐阜県中津川市が21名と第1位になりました。昔は中山道の宿場町で、中部地方を中心に人気が高い自治体です。定住推進課という専門部署に市職員がいるほか、「ワーカーサポートセンター(中津川市勤労者総合支援センター)」にも移住定住コーディネーターが1名常駐し、仕事や住まいなどの相談をワンストップで対応。また、各地区に集落支援員が17名おり、移住相談の対応や現地案内、空き家に関する業務を行っています。それ以外に移住サポーターもいます。移住支援としては空き家バンクに力を入れているほか、最大50万円を支給する「新婚さん住まいる応援事業」なども展開しています。

中津川市定住情報ポータルサイト「中津川に住もう!」  (nakatugawa.com)

岐阜県中津川市の恵那山。市内の至る所から望める
中津川市の南東部にそびえ、市内の至る所から望める恵那山(えなさん)。「日本百名山」の1つで、舟を伏せたような山容が人びとに親しまれています。

岐阜県中津川市の移住定住コーディネーター
地元に密着した企業情報で個人個人に応じた相談をしている「ワーカーサポートセンター」に、移住定住コーディネーターが常駐しています。

第2位:愛知県豊田市(とよたし)

 第2位の愛知県豊田市は世界最大級の自動車メーカー・トヨタ自動車の企業城下町で、人口が41万人台と大きな地方都市です。面積も918.32㎢と愛知県でいちばん広く、本庁舎以外に支所や出張所があります。本庁舎の定住促進課では市全体の定住施策に関すること、地域支援課では山村地域の空き家・空き地情報バンクのとりまとめなどを行っているほか、8カ所の支所にも各地区の空き家バンクなどの業務を行う担当者が配置されています。また、山村地域への移住や交流を希望する人には「おいでん・さんそんセンター」が総合相談窓口として対応。豊田市は、街中でも、山村地域でも、移住者を受け入れる態勢が整っています。最大50万円の住宅取得の補助や最大150万円の改修補助制度もあります。

山村地域移住情報バンク|豊田市 (city.toyota.aichi.jp)

愛知県豊田市の山村地域である「旭地区」の風景
自動車産業が盛んなことで知られる豊田市だが、市域の約7割を森林が占め、市街地から車で30分〜1時間ほど走れば豊かな自然を満喫できます。写真は、市内の山村地域「旭地区」の風景です。


 地方に移住するには住まい、仕事、子育て政策、さまざまな支援制度などが地域選びの重要な要素になってきます。それらをワンストップで対応してくれる専門の部署、担当者がいる自治体が移住希望者に評価されていることは間違いありません。