梅花漆絵象牙櫛 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

櫛やかんざしをはじめ、江戸時代のさまざまなおしゃれアイテムを紹介する本展。当時の化粧ポーチやリップパレットなど、現代でも人気が出そうな可愛いアイテムも多数展示されます。

作品の写真からも、可愛さが伝わるのではないでしょうか。小物やメイク道具って、どうしてこんなにときめくのでしょうね?

『澤乃井櫛かんざし美術館所蔵 ときめきの髪飾り―おしゃれアイテムの技と美―』

私も小物をコレクションするのが大好きで、特に綺麗な色のアイシャドウやマニキュアをつい買い集めてしまいます。あまり使いこなせてはいませんが、同じような人、結構いるのでは。

そんな可愛いもの好きな方に、ぜひ本展の魅力をお伝えしたいです。心がときめくとともに、歴史や文化に触れて知的好奇心も満たされる展覧会になりそうです。

見どころ①澤乃井櫛かんざし美術館の名品たち

桜花蒔絵櫛 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

本展では、「澤乃井櫛かんざし美術館」が所蔵する櫛やかんざしなどが展示されます。

同館のコレクションの中核となるのが、岡崎智予(1924−1999)氏の収集品です。京都・祇園に生まれ芸妓となり、のちに東京で料亭の女将として活躍した岡崎氏は、40余年かけて3,000点以上もの装身具を収集しました。

花飾り金銀珊瑚びらびら簪(部分) 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

本展では、岡崎氏の高い審美眼で選び抜かれたおしゃれアイテムが多数紹介されます。櫛とかんざしだけでなく、さまざまな髪型の模型や、筥迫(化粧ポーチ)、紅板(リップパレット)、着物、さらには矢立(携帯用筆記用具)や印籠(携帯用薬入れ)など……。江戸時代の「おしゃれのすべて」と言っても良いのでは。

日本地図蒔絵印籠 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

岡崎氏のコレクションを散逸させることなく、魅力を伝え続ける澤乃井櫛かんざし美術館。その名品を堪能できる機会となりそうです。

見どころ②今なお褪せない洗練されたデザイン

桜狩嵌装象牙櫛 「芝山」銘 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

さて、数々のおしゃれアイテムの魅力といえば、心をくすぐるデザイン。江戸時代には当然、機械による大量生産などはできなかったので、ひとつひとつ職人が手作業で制作しました。

本展では、日本工芸の技や粋を凝らした作品が紹介されます。たとえば《渦巻蒔絵櫛 「羊遊斎」銘》は、赤い漆の地に金蒔絵で渦巻文が描かれています。江戸時代の蒔絵師、羊遊斎による作品です。

渦巻蒔絵櫛 「羊遊斎」銘 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

大胆な渦巻の配置と色彩のコントラストなど、羊遊斎の卓越したデザイン感覚が光っています。羊遊斎は画家・酒井抱一とも親交があり、抱一の下絵銘のある櫛や印籠も多数手がけました。

櫛やかんざし、印籠などは、手のひらに収まるほど小さなアイテムです。その中にはもっと細かい絵や図が描かれ、小さいからこその愛らしさにときめきを感じます。

見どころ③江戸に学ぶメイクとスキンケア

『女子風俗化粧秘傳』(部分) 佐山半七丸 著 速水春暁斎 画 文化10年 澤乃井櫛かんざし美術館蔵

江戸時代の女性たちの美意識を示す、興味深い資料も。《女子風俗化粧秘傳》には、化粧や髪型、着こなしなどが絵入りで解説されており、江戸時代版「女性用美容マニュアル」といった風情です。

全3冊からなるこの本には、へちまや椿油など、現在のスキンケア・ヘアケアに通じる美容情報もあるのだとか。また、「鼻の低きを高う見する伝」として、鼻筋が通ったように見えるメイク方法も解説されています。(知りたい……!)

今はYouTubeでメイクやスキンケア方法を学ぶ時代となりましたが、美しくありたいと願う気持ちは令和も江戸も同じなのですね。当時の女性たちと同じ気持ちになって、楽しめる展覧会になりそうです。

展覧会情報

細見美術館 外観

澤乃井櫛かんざし美術館所蔵 ときめきの髪飾り―おしゃれアイテムの技と美―

会場:細見美術館

会期:2024年4月27日(土)〜8月4日(日)
◎前期:4月27日(土) 〜6月16日(日)
◎後期:6月18日(火) 〜8月4日(日)

開館時間:午前10時〜午後5時

休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)

美術館公式ウェブサイト:細見美術館