三重県警では現役警察官の不適切事案が多発している。県警によると、今年に入って29日までに4人を懲戒処分とし、9人を懲戒処分より軽い「監督上の措置」としたと公表している。既に昨年1年間の人数(懲戒処分1人、監督上の措置8人)を上回った。相次ぐ不適切事案を受け、県民からは「処分が軽い」などと厳しい意見も寄せられているが、県警は首席監察官が県内各署を巡回するなど、再発防止に努めている。

 県警は3月1日、県警が参加したイベント中に女性のスカート内を盗撮したなどとして逮捕された元伊勢署警備課の警部補土記拓也被告(33)=性的姿態撮影罪などで起訴=を停職6月の懲戒処分とした。

 他に、自宅に招いた女性にわいせつな行為をしたとして、北勢地域の警察署に所属していた男性巡査部長と巡査長をそれぞれ停職6月と減給100分の10(6月)の処分とした。懲戒処分を受けた4人はいずれも依願退職している。

 また、3人の警察官がそれぞれ速度超過や事故不申告による道交法違反容疑、妻への傷害容疑で書類送検され、1人を含めた9人が本部長訓戒などの監督上の措置を受けている。

 県警は相次ぐ不適切事案発生を受け、3月1日に本部長通達を出し、全職員に職務倫理を徹底するよう指示。岡﨑浩司首席監察官が県内18署を回って業務指導するなど、再発防止に努めている。

 一方で、多発する処分について、県警に20件以上の意見が寄せられている。警察官の資質を問う声のほか、不適切行為をした警察官への処分が「軽い」との声があるという。

 処分が「軽い」というのは盗撮で停職となった土記被告への意見が含まれるだろう。実際、複数の県警幹部から土記被告の処分について「甘いと言われても仕方ない」「県民に示しが付かない」などの声が聞かれた。

 というのも、土記被告は県警や愛知県警に逮捕された2件の盗撮行為だけでなく、令和4年3月―昨年10月にかけ、三重県や愛知県で女性のスカート内を繰り返し撮影。合わせて19件の盗撮行為に及んだとされる。

 また、民家で女性の下着を盗み、同僚に痴漢行為をしたとして、県警と愛知県警は盗撮行為も含めて計23件を立件。土記被告は県警の聞き取りに「女性の下着に対して執着が強かった」と話したという。

 県警は土記被告の処分を、警察庁が示す「懲戒処分の指針」を参考にして決定した。この指針では「盗撮」の懲戒処分について、指針が昨年7月に改正されるまでは「停職または減給」となっていた。

 しかし、盗撮行為の厳罰化などを目的に新たに性的姿態撮影処罰法が施行されると指針も改正。改正後は「性的姿態等撮影」の懲戒処分が「免職、停職または減給」になり、盗撮の処分に免職が追加された。

 難波正樹本部長は3月28日の定例記者会見で、土記被告の処分を「事案の捜査や調査の結果を踏まえて明らかとなった事実に対し、厳正に対処したと考えている」と説明。県警としては停職が「厳正」な処分だったのだろう。