ドン・キホーテのユニークなTシャツが、じわじわ売れている。2023年11月に発売した「エレファントTシャツ」(3289円)は、生産の遅れから発売日が約2カ月ずれ込んだため、当初は苦戦していた。しかし、今年に入って消費者の認知が少しずつ広がり、直近の売り上げは販売計画と同レベルで推移。開発を担当したPB企画開発部の向剛史さんは「今後さらに伸びていく」と期待を寄せている。

 エレファントTシャツは、ヘビーウェイトTシャツの一種だ。ヘビーウェイトTシャツとは、生地が厚く丈夫で型崩れしにくいTシャツのこと。生地が厚いため、お腹周りなどボディーラインを気にせず、インナーなしでも着ることができる。

 首元はクルーネック(丸く詰まったデザイン)タイプで、カラーはホワイトとブラックの2色展開。サイズはM、L、LLの3種類を用意した。現在は長袖のみだが、今後半袖を追加する予定だという。

 ヘビーウェイトTシャツの特徴は生地の分厚さであるが、その中でもエレファントTシャツは群を抜いている。一般的なヘビーウェイトTシャツは6〜7オンス(重さを表す単位であり、これにより生地の厚みが分かる)だが、エレファントTシャツは13オンス。パーカーとほぼ同じ厚みがあるのだ。

 向さんはヘビーウェイトTシャツの愛用者であるが、通常のヘビーウェイトTシャツに物足りなさを感じていたという。「さらに生地を厚く、固くしたら、ヘビーウェイトTシャツの良さをより生かせるのではないかと考えました」

 向さんは周囲のヘビーウェイトTシャツ愛用者に、「ヘビーウェイトTシャツの生地を厚くして、さらに固くした方が良いと思うか?」と聞いて回ったという。その結果、ほぼ全員が「肉厚でガチガチに固いのが欲しい」と答えたことから開発に着手した。

●社内からは反対意見も

 開発時、徹底的に肉厚で固いヘビーウェイトTシャツを目指したという向さん。加工で生地自体を固くする方法もあったが、固さを長期間持続させるため、原料である糸を生かす方法を探したという。

 しかし、製造を手掛ける協力会社にとって、こうした試みは初めてのことだった。そのため、なぜ生地を肉厚で固くする必要があるのか、を理解してもらうことに苦労したという。また、多くの糸を使用する分コストも高くなるため、社内からは反対意見もあった。こうした声に対して、「より生地が肉厚で固いヘビーウェイトTシャツにはニーズがある、と説得し続けました」(向さん)

 複数の協力会社の協力を得て試作を繰り返し、太い糸を密度を詰めて編み立てることで肉厚かつ固い生地を実現。構想から約4カ月かけて製品化した。生地の固さや重厚感から力強くて肌も丈夫な象を連想し、「エレファントTシャツ」と命名したという。

 エレファントTシャツは生地が固いため、繰り返し洗濯してもへたりにくい特徴もあるそうだ。「サンプルを3カ月間着回し、30回程度洗濯しても生地は頑丈なままでした」(向さん)。現在の洗濯回数は50回を超えているそうだが、多少毛羽立ちはでるものの生地自体はへたっていないという。

 エレファントTシャツは全国の店舗で販売しており、購入者は20〜40代の男性が多数を占めている。中目黒・渋谷・池袋など、都心店舗の売り上げが特に高いそうだ。向さんは「ファッションへの関心が高い人が多い地域だからでは 」と分析する。

 購入者から「生地の固さは申し分ない」「1枚でもインナーでも着られるので使い勝手は良さそう」と好意的な声がある一方で、「肩幅が狭い」「着丈が少し短い」といった意見も。今後はこうした声を受けて、さらなる改良を検討中だという。