5月8日から「Pokemon GO(ポケモンGO)」のAR撮影機能「GOスナップショット」がアップデートされ、よりバリエーションに富んだ撮影が可能になった。GOスナップショットは、AR機能を生かし、現実世界にポケモンがいるかのような写真を撮影できる。今回のアップデートで何が変わり、どんなことができるようになったのか。その詳細を、Nianticの石塚尚之氏(Staff UX Designer)が説明した。

 GOスナップショットは、ニュージーランド、アメリカ、日本の3つのチームで開発したそうで、5月7日の説明会には、ニュージーランドからキア・ライス(Keir Rice)氏(Staff Technical Artist)もオンラインで参加した。

●「誰でも、簡単に、ポケモンたちと楽しい写真が撮れるカメラ」を目指して開発

 ポケモンGOでは、当初からAR機能を活用し、現実世界にポケモンを登場することを特徴としてきた。そんなポケモンを、好きなときに現実世界に呼び出して写真を撮影できる機能として、2019年2月にGOスナップショットをリリースした。その後、2019年12月に「相棒」機能をリリースし、選んだポケモンと一緒に歩いたり、絆を深めたりできるようになった。

 このように、Nianticは「さまざまなステップを踏んでARの開発を進めてきた」(石塚氏)が、「たくさんの方がGOスナップショットで素晴らしい写真を撮っていただいたので、これまでのGOスナップショットのよさを生かしつつ、よりパワーアップしたカメラを提供できないか」と考え、今回のアップデートに至った。

 GOスナップショットを改善するにあたり、「誰でも、簡単に、ポケモンたちと楽しい写真が撮れるカメラ」をコンセプトに掲げた。というのも、よく「ARで写真を撮るのは難しい」と言われることがあるからだという。「この部分をより簡単にして、より多くの方々がポケモンたちと楽しい、かっこいい、かわいい写真を撮れるカメラを作れないかと取り組んできた」と石塚氏は振り返る。

 特に力を入れて開発したのが、以下5つの新機能だ。

1. 1人で3匹のポケモンを選び、撮影できる

2. 誰でも簡単にポケモンたちと写真が撮れる

3. よりポケモンらしく撮影できる

4. 表情豊かな写真が簡単に撮れる

5. ステッカーでデコれる

●ポケモンが2匹以上いると物語が生まれる

 今回最も分かりやすいアップデートが、1つ目の3匹同時撮影だろう。同時に撮影できるポケモンを増やした意図について石塚氏は「ポケモンが2匹以上いると物語が生まれる」と話す。

 その一例として、ピンプク、ピチュー、トゲピーがソファに立っている写真を紹介する。これがピチュー1匹だと、ただピチューがかわいい写真で終わってしまうところだが、両脇にピンプクとトゲピーがいることで、3匹が談笑しているようにも見えるし、そろって歌を歌っているようにも見える。ホウオウとルギアが大空を羽ばたいている写真では、2匹が戦っているようにも見える。

 複数のポケモンが現れることで、写真に新しい文脈が加わり、さまざまな想像がかき立てられるというわけだ。

 3匹を同時に登場させることについて、石塚氏は「3匹が登場(配置)できる場所を判定すること」が難しかったという。また、「ポケモンは生きている」ため、「自然に登場できるレベルに達するのかどうかをさまざま判断した」とも話していた。

●GOスナップショット専用ページを用意 プリセットされたテーマも

 2つ目については、GOスナップショットをより手軽に撮影できるよう、操作性を改善した。これまで、GOスナップショットを撮影するには、ポケモンを表示させてからカメラアイコンをタップする必要があったが、アップデート後はメニュー画面左下のカメラアイコンからGOスナップショット専用のページを表示できるようになった。

 この専用ページには、あらかじめ2〜3匹のポケモンが含まれたおすすめのテーマがプリセットされている。季節、水辺、花、空、色などのシーンに合わせたグループを用意するという。例えば「カントー」ではフシギソウ、ヒトカゲ、ゼニガメが、「ブンブントリオ」ではミツハニー、レディバ、バルビートが、「サンシャイン」ではキレイハナ、ヒマナッツ、ロゼリアがセットになっている。

 各テーマを選ぶと、そこに含まれる3匹をまとめて呼び出して撮影できる。なお、確認した限り、おすすめのテーマはGOスナップショットのページを呼び出す度に、一部がランダムで変更されるようだ。何度もアクセスして、どんなテーマがあるのかを確かめてみるのもいいだろう。

 もちろん、好きなポケモンを手動で3匹まで選ぶこともできる。その際は「ポケモンを選ぶ」を選択すればよい。「最近捕まえたポケモン」も表示されるようになっている。

 なお、一度選んだ組み合わせを保存したり、履歴から再度撮影したりする機能はない。よく撮影するポケモンたちが決まっている場合は、こうした機能も欲しいので、今後のアップデートに期待したい。

 また、複数ポケモンを含むGOスナップショットは、専用のメニュー画面からしかアクセスできず、通常のポケモン一覧からは、1匹ずつしか撮影できない。通常のポケモン一覧から起動できれば、例えばGOスナップショット用のタグを作成し、そこからよく撮影するポケモンたちを選んで簡単に起動できるので、こちらもアップデートで対応してほしいところだ。

●ポケモンはドラッグ&ドロップで配置 ひこうタイプは高さ調節も可能

 撮影するポケモンが決まったら、それぞれのポケモンをドラッグ&ドロップで配置する。なるべく平らな場所に出現させるのがコツで、配置可能な場所には、黄色い足跡が表示される。これは従来のGOスナップショットと同じだ。複数のポケモンを出す場合、ポケモン同士が一定の距離を保つ必要があるので、微調整しながら配置したい。ポケモンを置ける場所には黄色いサークルが現れ、置けない場所には赤いサークルが現れる。なお、一度出現させたポケモンの位置をあとから調整することはできない。

 ここまでは通常の撮影方法だが、「よりポケモンらしく撮影できる」ことにもこだわった。例えばひこうタイプのポケモンは、ポケモンを出現させる「高さ」も決められる。タップして配置場所を決め、青い地平線を超えてドラッグすると、高さを調節できる。カメラを上に傾けると、より高い位置にポケモンを配置できる。この機能を使うことで、先に紹介したホウオウとルギアのように、大空を背景にポケモンを登場させることもできるわけだ。高さは建物で3階分くらいは調節できるという。

 アローラナッシーはひこうタイプではないが、背が高すぎて、通常は胴体しか見えない。そこで、ひこうタイプのポケモンを上空に配置させると、アローラナッシーの顔を一緒に並べられるようになる。普段は顔が見えないアローラナッシーの顔も、ひこうタイプのポケモンと組み合わせることで一緒に写せるので、アップデート後だからこそ撮れる写真といえる。

 おもちゃを使うことで、ポケモンの向きを自由に変更できるのも特徴だ。180度回転させて後ろを向かせたり、真横に回転させて2匹のポケモンが互いに向かい合わせたりもできる。2匹のポケモンを対決させるような演出を加えたいときに役立つ。

●全員がカメラ目線で表情を決めた写真を自動で撮ってくれる

 4つ目の「表情豊かな写真」は、自動または手動で撮影できる。ポケモンを配置させた後に、★印のある集合写真ボタンを押し、黄色いカメラボタンを押すと、3秒のカウントダウン後に自動で3枚の写真を撮ってくれる。その際、ポケモンたちがカメラ目線になり、さまざまな表情やポーズを決めてくれる。表情はポケモンによって異なり、笑顔になる場合とカッコイイ(威嚇の)表情になる場合があるという。

 3匹を集めてサクッと写真を撮りたければ、この自動シャッターを使うのが最適だ。ポケモンたちがカメラ目線でバッチリポーズを決めてくれるので、誰もが簡単に生き生きとしたポケモンたちを収められる。

 さらに、表情のアイコンをタップすると、ポケモンたちが表情を変えたり動いたりしてくれる。集合写真ボタンだとポケモンたちが必ず正面を向くので、向きを変えたまま表情や動きを加えたい場合、表情アイコンを押した後に手動で撮影するといい。

●ステッカーやデコステッカーで自分だけの作品を作れる

 5つ目のステッカーも、今回のアップデートで追加された機能だ。石塚氏によると、これまでGOスナップショットで撮影した写真は、意外にもSNSで投稿していない人が多かったという。その理由として「自分らしい表現、自分でしか撮れない写真にたどり着けていない」ことを挙げる。「伝えたいメッセージが明確だと投稿したいということが見えてきた」ことから、ステッカーやデコステッカーの機能を追加した。

 ステッカーは、ギフト送付時に添付できる従来のステッカーをそのまま利用できる他、GOスナップショット用に、新たに「デコステッカー」を追加した。GOスナップショットで撮影後、「シェア」の画面から、ステッカーやデコステッカーを選べる。デコステッカーはハート、星、キラキラマークなどが含まれ、初回は4種類×15枚の素材をショップで無料配布する。ステッカーは写真に使用して「保存」すると、消費される。

 ステッカーやデコステッカーのサイズは自由に調整できるので、組み合わせるステッカーやポケモンなどを加味すれば、世界で1枚といっても過言ではない、自分だけの作品を作れるというわけだ。

●実際のサイズをGOスナップショットでも反映 連写やセルフタイマーも

 この他、GOスナップショットでは5つの点を改善している。

 1つ目が、写真の画質を改善したこと。2つ目が、ARブレンディングの品質を改善したこと。ARブレンディングは、家具や木々などの物体にポケモンを重ねると、そこに隠れているように見せられる機能。GOスナップショットのサブメニューから「ARブレンディング」をオンにすると利用できる。3つ目として、このARブレンディングが、横向きでも使えるようになった。

 4つ目として、ポケモンのサイズがGOスナップショットでも反映されるようにした。ポケモンごとにサイズが異なるのはご存じの通りだが、より小さい「XS」「XXS」と、より大きい「XL」「XXL」といったサイズも存在する。こうしたサイズの違いは実際の見た目にも反映されるが、GOスナップショットでも生かされる。XSとXLという極端に違うサイズの同じポケモンを出してみると、親子や兄弟のように見せられて面白そうだ。

 5つ目の改善点が、連写とタイマー機能を使えるようになったこと。連写は、ポケモンの向きやポーズを手動で決めて撮影する際に便利な機能。記念撮影ボタンから撮ると自動で3枚連写してくれるが、手動で撮る場合も、GOスナップショットの設定から「連写モード」をオンにしてカメラボタンを押すと、同様に3枚の連写が可能。表情ボタンを押してからシャッターを切ると、さまざまな顔や動きを見せてくれるので、3匹が遊んでいたり、2匹が対決したりしているシーンで活躍しそうだ。

 タイマー機能はちょっとニッチな機能かもしれないが、スマホを固定して、自分がポケモンの近くに移動すると、ポケモンと自分を一緒に撮影できるようになる。もちろん、他の人に撮ってもらう方法もあるが、1人で行動しているときに役に立つ。

 なお、GOスナップショットを利用するのに必要なARモードは、iOS 11以降で動作するiPhone 6s以降のモデルと、Android 7以上を搭載し、ARCoreに対応するデバイスで利用できる。今回のアップデートで対応機種に変更はないようだが、「ARブレンディングのクオリティーは機種に依存する部分がある」(石塚氏)とのこと。

 GOスナップショットは撮影するスマートフォンのカメラ機能とは切り離されており、AF(オートフォーカス)でピントを合わせたり、ポケモンの背景をぼかしたりはできない。GOスナップショットで撮影した画像のサイズは、iPhone 15 Proで確認したところ、アップデート当初は768×1666ピクセルだったが、5月22日〜23日に撮影した写真は1536×3332ピクセルだった(画像サイズに関する設定項目は特に見当たらなかった)。ちなみにシャッター音はこれまで通り鳴る。

 撮影すると、時々ドーブルが写り込んで登場する仕掛けも変わらない。3匹を同時に撮るからといって、ドーブルが3匹同時に登場することはなく、1匹のみなのも同じだ。

●実際に遊んでみた 創作意欲がかき立てられ、外出のきっかけにも

 筆者も新しいGOスナップショットで実際に遊んでみたが、確かに複数のポケモンを同時に配置させることで、遊べる幅が広がったと感じた。筆者がこれまで図鑑に登録したポケモンの数は803種類。これだけを考えても、2〜3匹のポケモンを組み合わせられるバリエーションは無限にあるといっていい。

 もちろん適当に選ぶのではなく、撮影場所やテーマに応じたポケモンを選ぶ楽しさがある。例えば水辺なら、みずタイプのポケモンを、空を背景にするならひこうタイプのポケモンを選ぶといった具合だが、みずタイプとひこうタイプそれぞれでバリエーションが多く、簡単には選べない。水面に浮かせるなら「みず」「ひこう」の複合タイプにするとか、岸辺ならひこうの入っていないみずタイプにするなど、創作意欲がかき立てられる。

 同じポケモンたちを撮れるのも面白い。例えば池でコイキングを3匹出現させ、記念撮影ボタンから撮影したところ、コイキングが池ではねながらコミカルにポーズを決めてくれた。その様子を見ていた妻が、「これ面白いね!」と興味を示したのはちょっと驚いた。妻はポケモンGOを全くやらない勢でこれまで全く関心を示したことがなかったのだが、新しいGOスナップショットは、これからポケモンGOの未体験ユーザーがプレイするきっかけになり得る機能だとも感じた。

 また、3匹を同時に登場させるとなると、自宅などの狭い場所では写真映えがしないし、スペースが足りず、ポケモンが見切れてしまうことが多い。3匹登場させるとなると、屋外の広いスペースで試すのが望ましいので、それなら外出していろいろな場所で試してみたいという気持ちになる。

 ポケモンGOは、外出しなくても捕獲やレイドをある程度は楽しめるが(居住地にもよるが)、進化したGOスナップショットが、ポケモンGOの原点でもある「外」の世界で楽しむことを思い出させてくれた。筆者にとってのポケモンGOは、これまで、捕まえて、戦わせることが主な楽しみ方だったが、GOスナップショットが機能拡張したことで、新たな楽しみ方が加わったと感じた。