NASAは6月4日(現地時間)、「ハッブル宇宙望遠鏡」の6つあるジャイロスコープのいくつかに不具合が生じたため、1つで運用するための移行作業を進めていると発表した。作業が終われば6月中旬にも観測を再開する予定だ。

 ハッブル宇宙望遠鏡は、スラスターの噴射ではなく、ジャイロとリアクションホイールで姿勢を制御する仕組みだ。しかしこの半年ほど、特定のジャイロが誤った測定値を返すケースが増え、観測の中断を余儀なくされていた。

 運用チームは繰り返し機器をリセットし、一度は通常の測定時に戻すことができたものの、5月下旬に再度問題が発生。ハッブル宇宙望遠鏡は5月24日からセーフモードに入っている。

 現在のジャイロスコープは、2009年に行われたスペースシャトルによる整備ミッションで取り付けたもので、6つのうち3つは現在も動作している。ただし、不具合のあるジャイロもこれに含まれているという。

 1つのジャイロスコープで動作するモードも2009年に追加されたもの。NASAは、それ以前の2ジャイロモードと「ほとんど違いはない」としているが、同時に今後はいくつかの制約が出るとも予想している。

 例えば、望遠鏡を動かして目標を追跡する際に時間が掛かる。また火星より近い移動物体は追跡できないなど、これまでより柔軟性は下がる見通し。

 ハッブル宇宙望遠鏡は1990年に打ち上げられて以来、30年以上に渡って観測を続けてきた。当初の設計寿命は15年とされていたが、メンテナンスにより延ばしてきた。NASAは1ジャイロモードへの移行により「次の10年も宇宙の秘密を探求し続けることができるようになる」としている。