武見敬三厚生労働相は4月16日の閣議後会見で、現在検討している医師の地域偏在への対策について、6月にも閣議決定する「骨太の方針」にスケジュールを盛り込み、年末までには具体案を示す考えを示した。

 会見の中で武見厚労相は、この問題について「前例にとらわれない検討」が必要であると改めて強調。規制的な手法だけでなく、インセンティブを組み合わせる方法や、オンライン診療の活用なども含めて包括的に示す方針を示した。その上で「3月に設置した『新たな地域医療構想等に関する検討会』を中心にすでに議論を開始している。スケジュールについては『骨太の方針』にその大方の考え方を組み込んでいきたい。年末までには具体的にその方向性を示せるようになると思う」と述べた。

■松本日医会長「強制的な力を働かせることには慎重であるべき」

 医師の地域偏在の問題について日本医師会の松本吉郎会長は、4月17日の定例会見で記者からの質問に答えて「課題としては非常に重く受け止めている」としつつ、医学部入学定員の地域枠の活用が偏在是正に効果を挙げてきているとの見方を示し、「その拡大が有効ではないか」と指摘。並行して専門医の養成でシーリングがかけられている現状にも言及した。その上で、「それらの効果を時間をかけて見極めていくことが重要で、いきなり強制的な力を働かせることには慎重であるべき」と述べ、強制的に医師を配置することには否定的な見方を示した。

■財務省も参戦、診療所の地域別診療報酬を提案

 この問題には財務省も“参戦”してきている。4月16日の財政制度等審議会財政制度分科会に提出した資料の中で、病院と診療所の間でも偏在が生じていると指摘。改革の方向性として、「病院勤務医から開業医へのシフトを促すことのないよう、診療報酬体系を適正化する」ことを提案した。

 さらに、診療所の地域偏在是正のため、地域別診療報酬を活用したインセンティブを提案。案として「診療所不足地域と診療所過剰地域で異なる1点当たり単価を設定し、報酬面からも医療資源のシフトを促すことを検討する必要がある。当面の措置として、診療所過剰地域の1点当たり単価の引き下げを先行させ、それによる公費節減効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化することも考えられる」ことを挙げた。

 これに対して日医の松本会長は、17日の会見で「医療機関の分布は、各地域の人口に応じて現在の形に落ち着いたもの。診療所の過不足に応じて診療報酬を調整する仕組みは、我が国の人口分布の偏りに起因するものを、あたかも医療で調整するような極めて筋の悪い提案で、断じて受け入れられるものではない」と強く反発した。