画像:TBSテレビ『不適切にもほどがある!』公式サイトよりいつの間にやらGP(ゴールデン・プライム)帯・連続ドラマのヒロイン役に返り咲き。

1月期ドラマで最大の話題作と言っても過言ではない『不適切にもほどがある!』(TBS系)では、ヒロイン役の仲里依紗さんの好演が光っています。

※この記事にはネタバレを含みます

1月期最大の話題作となった『不適切〜』

阿部サダヲさん主演×宮藤官九郎さん脚本の『不適切〜』は、昭和と令和のギャップで笑わせながら、現代特有の生きづらさも浮き彫りにしていくタイムスリップコメディ。

2番手キャストに名を連ねているのが、主人公の孫娘となるヒロインを演じている仲さんです。

現在34歳で芸能活動は20年ほどになる実力派俳優・仲さんが、GP帯の2番手キャストでも違和感はないかもしれないですが、何年か前までの彼女のドラマ出演歴から考えると、けっこうな大抜擢。

数多くの連ドラにレギュラー出演をしていましたが、実は近年だと4番手や5番手ぐらいの出演が多かったからです。

では、いったいなぜ今回抜擢されたのか?

2005年、透明感のあるCM美少女だった

ここで仲里依紗さんの芸能界でのキャリアを振り返っておきましょう。

筆者が仲さんを認知したのは2005年。当時「進研ゼミ 中学講座」のCMに出演していた彼女にインタビューさせていただいたことがあり、透明感があって聡明な雰囲気の美少女だったということをよく覚えています。

「数学終わったらスイカ、数学終わったらスイカ……」と心の中で呪文のように唱えながら勉強をがんばる彼女を映したその「進研ゼミ」のCMは、テレビでばんばん流れていました。けれど、残念ながらこのCMだけで「仲里依紗」の名前が世間に広く浸透したということはなく、まだまだ仲さんは知る人ぞ知る新人タレントという程度だったと記憶しています。

その翌年の2006年には、細田守監督作品のアニメ版『時をかける少女』の主演声優に抜擢され注目を集め、実写のドラマにもバイプレイヤーとして出演していくようになったため、徐々に「仲里依紗」という名前が知れ渡っていきます。

2008年には23時台のドラマながら、『ハチワンダイバー』(フジテレビ系)で2番手キャストに起用され、セクシーなメイド服を着こなしたヒロイン役で作品を盛り上げたのです。



GP帯ドラマで主演やヒロインに抜擢される



このあたりで知名度を格段に上げてブレイクし、2010年のGP帯ドラマ『ヤンキー君とメガネちゃん』(TBS系)では2番手キャストのヒロインを演じ、2012年の『レジデント〜5人の研修医』(TBS系)では、GP帯の連ドラ初主演も飾っていました。

余談ですが、仲さんは2010年・実写版『時をかける少女』でも主演していましたが、こちらで相手役を務めた中尾明慶さんと2013年に結婚。おしどり夫婦として知られています。

ただ、結婚後も数々のGP帯ドラマにレギュラー出演はしていましたが、主演やヒロインを演じる機会は減り4、5番手ぐらいでのキャスティングが再び増加。

2018年には『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)に主演していますが23時台の放送でしたし、2021年の日曜劇場『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』では、主人公の元妻役で作品にいいスパイスを与えましたが、俳優の番手としては上位ではありませんでした。

ですから、仲さんが今季最大の話題作となったGP帯連ドラ『不適切〜』で、2番手キャストのヒロインを演じているのは、意外と大抜擢だったというわけです。

2020年、潮目を変えたYouTubeデビュー

筆者の個人的な見解ではありますが、仲さんの俳優人生の潮目を変えたのは、YouTubeデビューだった気がしてなりません。

仲さんは2020年にYouTubeチャンネルを開設し、現在はチャンネル登録者数・約200万人を誇る大人気YouTuberの顔も持っているのです。

仲さんのYouTubeは、いわゆる“女優・モデルの意識高い系YouTube”とは一線を画しており、自然体の“プライベートさらけ出し系YouTube”。女優だからといって飾ることは一切なく、歯に衣着せぬズバズバとした物言いや天才的とも言える独特な編集センスなどによって、俳優としての彼女のキャリアを知らない若者層にも刺さり、バズりまくっているのです。

ドラマや映画などへの出演が途切れることなくずっと第一線で活躍してきた方なので、“再ブレイク”という表現は失礼だとは思いますが、YouTubeで新たなファン層を開拓したり再び脚光を浴びたりしたのは事実。

YouTube人気を追い風に、昨年はNetflixオリジナル作品のドラマ『離婚しようよ』に2番手キャストのヒロインとして出演。『離婚しようよ』もヒットしたのですが、TBS制作で脚本が宮藤官九郎さん・大石静さんの共作という作品だったため、その功績が『不適切〜』に繋がったと考えられるでしょう。



実力派俳優としてさらに幅が広がった

もちろんYouTube人気だけが仲さんがGP帯ヒロインに返り咲いた要因ではなく、彼女がこれまで出演してきた数々の作品で見せて来た、演技力の高さも大きな要素なのは言わずもがな。

とはいえ、そんな実力派だった彼女の俳優としての幅を広げてくれたのは、やはりYouTubeでのブレイクだったのではないでしょうか。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『smartFLASH』、『文春オンライン』、『集英社オンライン』などにコラムを寄稿。LINE公式サービスにて、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。Twitter(@SakaiyaDaichi)。