女子SPA!に掲載された記事のなかから、5月に読みたい人気記事を紹介します!

 冬本番の寒さを迎えましたが、冷え込むと気になるのが暖房にかかる電気代です。少しでも電気代を節約するために、YouTubeでプロならではの住宅の情報を発信する平松建築代表の平松明展さんにアドバイスをもらいました。(初公開日は2024年2月9日 記事は取材時の状況)

“浪エネ”な家を建てて後悔している人も

 平松建築の平松明展さん 電気代が高騰し、家計を圧迫しているという読者は少なくないと思います。平松さんも「省エネではなく、“浪エネ”な家を建てて後悔している人が増えている」と明かします。

「電気代が高騰するいちばんの要因は、断熱材の性能不足。少し前までは、断熱材の等級は最高で4までしかありませんでしたが、現在は7等級まで増えています。

4のときですら、予算を抑えるために3等級の断熱材を選ぶ人が多かったのですが、世界基準で見ると3だと性能が低い。断熱材に投資するという意識や機運が低かったせいで、ものすごく浪エネな家を建ててしまうんです」

 また、古い電気温水器を使っている家も電気代が高騰しがち。

「現在は、電気温水器に代わって3〜4倍効率のいいエコキュートが普及していて、オール電化の主流になっています。オール電化は電気代がかさむと思われがちですが、電気温水器を使っているほうがよっぽど電気代がかかってしまう。思い当たる人は、いますぐエコキュートに変えるべきです」

ゼロ円からでも取り組める節電対策

 では、断熱性能を高めるためには、どのような対策ができるのでしょうか。平松さんは「ゼロ円から対策できる」と断言します。

「断熱材が不足している家は、古い家屋のケースが多い。昔の家は間取りが広いですが、使用頻度の低い部屋を思い切って締め切ってしまうのが確実です。これならゼロ円で始められますし、温める空間を決めることで不要な電気代をカットできます」

 次に安上がりなのが、「断熱カーテンライナー」を導入する方法。

「断熱カーテンライナーを取り付けることで、室内の気密性を高めて断熱効果をアップさせる内窓の効果が期待できます。断熱カーテンライナーは、Amazonなどで数千円で売られており、手軽に導入しやすいと思います」

 今後も長期的に暮らすなら、内窓の取り付けや断熱材の改修の視野に入れるべきとも。

「どちらも初期費用がかかるので、今住んでいる家に今後どれくらい住むかを考慮して判断すべき。また、古い家の場合、リフォームするよりも建て替えたほうがいい場合もあります。いずれにせよ長い目で見ると、省エネに優れた家のほうが、トータルで払う電気代は安くなります」



断熱性能のほかにチェックすべきポイントは?

 写真はイメージです また、これから家をリフォームしたり、新築を建てたりする人は、断熱材だけではなく、「窓の位置関係や耐久性なども考慮したほうがいい」とのこと。

「家の設計に関しては、太陽の熱や光、風といった自然のエネルギーを、機械を使わずに建物に利用する『パッシブデザイン』であるかどうかが重要です。断熱材の性能を高くしたうえで、冬に日光を取り入れやすく、夏に日光を遮蔽できる設計だと、より快適に過ごせますし、冷暖房にかかる電気代を節約しやすいです。

ただし、断熱に優れた家は室内と室外の温度差が広がり、結露ができやすくなってしまいます。結露によって家の耐久性が落ちてしまうので、耐久性に関してもしっかりと対策すべき。安心して長年住めるように、耐震補強もバランスよくやったほうがいいでしょう」

 日照時間がしっかり確保できる地域や立地なら、太陽光発電を導入するのも電気代の節約につながるといいます。

「発電量などは環境によって異なりますが、300万円で10kw発電してくれる太陽光パネルを設置すると、35年間で800万円分ぐらい発電してくれる計算になります。300万円投資して800万円戻ってくるなら、設置したほうがお得ですよね?

ただし、日照時間が確保できても、古い家に取り付けるのはオススメできません。太陽光パネルは500kgとけっこう重いので、屋根が重さに耐えきれない可能性が高い。どうしても導入したい場合は、カーポートの屋根部分に太陽光パネルを設置するソーラーカーポートを検討するのがいいでしょう」

ハウスメーカーを選ぶときの注意点

 ハウスメーカーを選ぶときは、モデルハウスに足を運んでみるのがいいそうです。

「できれば、夏場や冬場に見学するのがオススメです。エアコンが何台稼働していて、どれくらい快適なのかをチェックすれば、電気代が想像できるので。エアコンが少ないのに快適であれば、断熱材などがしっかりしていて電気代が安いだろうと想像できます。

あわせて、空気もチェックするようにしてください。いくら断熱性能が高くても、換気がしっかりできないようだと二酸化炭素濃度が上がって体調を崩しやすい。最悪の場合、化学物質過敏症になるケースもあるので、変な匂いがしていないかどうか確認しましょう」

 さらに、ハウスメーカーを選ぶときにも注意すべき点があると教えてくれました。

「残念ながら建築業界には、どれくらい省エネできるかも分からずに、計算しないまま家を建てている業者が多い。計算しないというとは、PDCAのプランがないですし、チェックもずさんなのでデータが集まらない。

自分たちが浪エネな家を量産している自覚すらないので、ハウスメーカーを選ぶ時は、使用する断熱材によってどれくらいの省エネが期待できるのかなど、しっかりとデータを示したうえで、説明できるところに任せたほうがいいでしょう」



<取材・文/黒田知道>