トヨタは、100周年を記念を迎えたル・マン24時間の会場で、水素エンジンのコンセプトカーである『GR H2 Racing Concept』を発表。2026年からル・マン24時間レースに参戦可能となる水素カテゴリーへの関心を正式に示した最初のメーカーとなった。

 ル・マンのオーガナイザーであるACO(フランス西部自動車クラブ)は当初、水素カテゴリーへの参戦は水素燃料電池車のみを想定していた。しかしACOのピエール・フィヨン会長がスーパー耐久の富士24時間レースに来場した際、2026年から燃料電池車と共に水素エンジン車のル・マン参戦を認めることを発表した。

 ACOで水素コンサルタントを務めるベルナール・ニクロは、トヨタの動きはACOの水素に関する計画の「大きな一歩だ」と述べた。

 ニクロは2017年からマニュファクチャラー・ワーキング・グループを主導。ACOとGreenGTのパートナーシップを締結させたり、水素燃料電池車である『MissionH24』のル・マン・カップ参戦を実現したりする上で、大きな役割を担った人物だ。

「トヨタのような大企業が、我々をサポートしてくれるのは大きな一歩だ」

 motorsport.comの取材に応じたニクロは、そう語った。

「こうした発表が必要なんだ。メーカーが我々をサポートし、来てくれることが必要だ。そうでなければ、我々が間違った方向に進んでしまったということになる」

「私は誇りに思っているし、満足している。これは、我々が正しい方向に進んでいることを裏付けるモノであり、それは将来に向けて非常に重要なことだ」

 水素クラスの技術的自由度を高めたACOの決定について、ニクロは次のように説明する。

「勝つチャンスがあり、最高の仕事をすることができるということを、メーカーが確信できるようにすることが重要なんだ」

「最初にあったような、共通の規則では難しい。メーカーそれぞれの技術ソリューションに合わせ、マシンを最適化するのは難しかった」

「つまりICE(水素エンジン)なのか、あるいは燃料電池車にするのかということだ。ICEや燃料電池には、様々な種類がある。それぞれの状況に合わせてマシンを最適化するのは不可能なんだ」

「各メーカーがそれぞれにマシンを開発し、それぞれが持つテクノロジーを中心に最適化できることが重要だ。彼らが挑むチャレンジは、大変なモノだ。我々は彼らに、それを実行し、目標を達成するためのあらゆる機会を与えられるようにしなければいけない」

「新しいことであるから、誰にとってもリスクということになる。何か新しいことをすれば、常にリスクが伴う。我々は、彼らがプレイするために、全てのカードを与えなければいけないんだ」

 水素カテゴリーへの関心を表明したのは、現時点ではトヨタだけであるが、このトヨタの意向が「勢いを生み出す」と、ニクロは考えているという。

「他のメーカーとも交渉中だ」

「今後数ヵ月、数年のうちに、同様の発表が他にもあることを期待している」