初開催となったフォーミュラEの東京E-Prixが幕を閉じた。このレースでスチュワードを務めていたのが、鈴木亜久里である。鈴木はフォーミュラE創設初年度に、アムリン・アグリを率いて参戦した人物。あれから10年……ようやく日本でのフォーミュラEが開催された形だ。

 鈴木は今回の東京E-Prixが開催された意義は、日本のレース界にとっても大きいと語った。

 アムリン・アグリは、フォーミュラEの最初のレースとなった2014-2015シーズンの北京ePrixから参戦。佐藤琢磨が同チームのマシンをドライブし、初代ファステストラップを記録した。そのシーズンのブエノスアイレスePrixでは、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタのドライブにより、優勝を手にしている。

 そんな鈴木は、今回の東京E-Prixでスチュワードを務めた。自身がフォーミュラEチームを創設してから10年。ようやく日本でフォーミュラEが開催されたことについて、次のように語った。

「シーズン1の時から、東京で出来ればいいねという話があったんだけど、10年経って、やっと東京での開催にこぎつけることができたね」

 鈴木はレース後にそう語った。

「東京でということもそうだけど、公道レースが日本で行なわれたというのは、日本のレース界にとっても大きいことだと思う。もちろん、電気自動車のレースだったから出来たという面もあるけど、色んな部分で日本のレース界にとっては大きな一歩だったと思う」

 なぜ日本のレース界にとって大きいことなのか? そう尋ねると鈴木は「前例ができたことが大きい」と語った。

「今まで日本国内での公道レースは、手続きとか許可とか、色々な面があってできなかった。でも今回第一歩目をやれたことで、これから先、日本のレースも公道でできる可能性があるという前例ができた。大きな一歩だったと思うよ」

「これまでは(公道レースは)出来ないモノだったけど、今回のレースによって出来るモノになった。前例が出来るというのは大きいよ。フォーミュラEだからできたということもあるけどね」

 その日本の公道での最初の国際レースを、鈴木はどう見たのか?

「面白いレースだったと思うよ。フォーミュラE特有のレースという部分もあるけど、最後の最後までデッドヒートだったから、面白かったんじゃないかな」

「そこに日本の日産が絡んで、トップ争いをした。ポールポジションも獲った。非常にインパクトが強かったと思うね」

 来年からは日産だけでなく、ヤマハもフォーミュラEへの参戦をスタートする予定だ。しかもヤマハのパートナーとなるローラのモータースポーツディレクターであるマーク・プレストンは、鈴木と共にアムリン・アグリを立ち上げた人物である。

「マークがいるかいないかというのはどうでもいいんだけどさ……ヤマハが出てくるという部分では、来年も楽しみだと思う。来年は(スチュワードじゃなく)観客として来ようかな」