BMW M Team StudieからスーパーGTデビューを果たしたニクラス・クルッテン。彼は今季、ベテランの荒聖治、そして長距離レースで第3ドライバーとして登録されるブルーノ・スペングラーと共にシーズンを戦う23歳のドイツ人ドライバーだ。

 クルッテンはデビュー戦からいきなり好成績を残した。Team Studieの7号車Studie BMW M4は岡山での開幕戦で上位争いを展開し、後半スティントを担当したクルッテンはタイヤ無交換作戦の52号車Green Brave GR Supra GTをパスして3位表彰台に貢献した。

 そんなクルッテンに日本の印象などについて尋ねてみたが、彼曰く3月の公式テストが人生で初めての日本、そして初めてのアジアだったという。岡山でのテストやレースに詰めかけたファンの多さに感銘を受けたクルッテンは、モータースポーツにおけるファンの関心や熱意はヨーロッパで経験したものと明らかに違うと語った。

「ここ日本が大好きなんだ」

「これはヨーロッパの国々ではあまり感じられないことだけど、ここではモータースポーツがまだ高く評価されているように感じる」

「ドイツで大きなトピックになっているのは、人々が電気自動車やハイブリッド車に乗り換えるということで、モータースポーツでも同じような動きになっている。でもドイツではあまりモータースポーツが評価されていないように感じるんだ。観客の数も、ニュルブルクリンクを除けば全然いない」

「例えばDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)にしても、5年前と今とじゃ全然違う」

「スーパーGTがうまくやっていると思うことのひとつは、車両とエンジンはそのままに、燃料を(カーボンニュートラル燃料に)変えたところだ。これは大きなことだし、ドイツもそのような道に進んでいるけど少し遅れている」

「人々にとって魅力的なものにしないといけない。こうやってカーボンニュートラル燃料を使えば音も走らせ方も変えずに済むので、とても魅力的で良いと思う」

 そう語ったクルッテン。そもそも彼はなぜ日本でレースをすることになったのか?

 クルッテンはこれまで、ADAC GTマスターズやGTワールドチャレンジ・ヨーロッパでBMW M4 GT3を走らせてきた。そして今後の将来についてベストな選択肢をBMW側と協議した結果、Team StudieからスーパーGTに参戦することが決まったという。

「僕はここ数年、ヨーロッパでいくつかのBMW系チームで走ってきた。そして今後どうするか、何をするかについてBMWと話し合った」

「スーパーGTは選択肢のひとつだったし、僕は前々から単なる休暇でも良いので日本に行きたいと思っていた。そうして全てがあっという間に決まっていった」

「それが決まったのは2月ごろで、そこから数週間後には岡山で最初のテストに参加した。これが本当に初めての日本だったんだ」

 またクルッテンは今季はスーパーGTに専念する予定であり、他のレースプログラムは計画されていないことを明かした。そのため、彼はレースの合間のほとんどを日本で過ごすことになりそうだという。

「今年に向けて東京にアパートを借りた。だからドイツに数週間戻る以外は、ほとんどそこにいると思う」とクルッテンは言う。

「日本ではかれこれ6週間くらい過ごした。その間にドライブもしたし、東京だけでなくて色々なところに行った。東京も大好きだし、富士山周辺や広島も良かったね」

「どの街にもそれぞれ個性があって、見るべきものがたくさんあるね」

 開幕戦から表彰台と幸先の良いスタートを切ったクルッテンだが、これまで走ったことのあるコースは岡山と富士のみ。その他のサーキットはぶっつけ本番でのレースとなるため、簡単にはいかないだろうと本人も予想している。

 ただクルッテンは、デビューイヤーでの成長を無駄にしないためにも、来シーズン以降もスーパーGTに参戦することを望んでいると語る。

「(来季もスーパーGTに残ることは)やぶさかではないよ」

「テストも限られているし、事前にテストで走れていないコースでのレースは難しいものになるだろう」

「1年目は学びの年になると思っている。そして2年目に全力が出せるようになればと思う。もちろん、今年は勝利を目指さないという意味ではないけどね!」