2024年からスプリントフォーマットが変更され、金曜日に1回のフリー走行とスプリント予選、土曜日にスプリントと日曜日の決勝に向けた予選が実施されることとなった。そして土曜日のスプリントと予選の間にはパルクフェルメルールが解除され、各チームがマシンセットアップを変更することが可能になった。

 ただF1チームは、スプリント専用のセットアップを組み、スプリントレース後に大きく異なるセットアップを決勝に向けて組み直すチームが現れる可能性は低いと考えている。

 上海国際サーキットで実施された中国GPは今季初のスプリントが実施され、パルクフェルメルールの一時解除も実際に行なわれた。これにより、各チームは短いスプリントで非常に攻めたセットアップを試すことができるようになった。特にポイント獲得や上位入賞が難しいドライバーにとっては大きなチャンスとなる可能性がある。

 実際、中国GPでは土曜日2セッション間にセットアップ変更が行なうチームもあった。ただ過度に大胆なセットアップの実験は、仮にポジティブなモノだったとしても限度があるとF1チームは考えているのだ。

「リヤウイング角度のセットアップについては、イベントに向けて多くの議論があった」

 そう語るのはアストンマーティンでパフォーマンスディレクターを務めるトム・マッカローだ。

「(スプリントでは)結局のところ19周のスティントをこなすことになり、依然難しい。メインレースと比較して、ふたつも大きな変更を実施することはできない」

 またマッカローは、中国GPのスプリントレースから本戦に向けて、長丁場のレースでタイヤのデグラデーション(性能劣化)を抑えるため、他のサーキットよりも比較的大きな調整を各チームが行なったと示唆した。

 ここには中国GPにおける直近4年の空白時間が関係している。最後に上海国際サーキットでF1が開催された2019年から路面が変化していた上、現行レギュレーション下のグラウンドエフェクトカーのデータが不足していたのだ。

「このサーキットには長いこと来ていなかったから(セットアップ変更の振り幅が)大きかったのかもしれない」とマッカローは言う。

「最後に我々がここへ来た時の2019年マシンはリヤの車高が今の3倍あったし、マシン剛性もタイヤも空力も何もかもが違っていた」

「我々は全てシミュレーションして準備したが、コースのグリップ自体は悪化していたかもしれない。昔よりもリヤが厳しくなっていた。このタイヤとこの世代のクルマがどのように機能しているのかを考えれば、予想できたことだと思う」

「(アストンマーティンとしてはFP1を)1回走ったら、スプリント予選の前にいくつか変更を加えようと考えていた」

「しかしスプリントレースを終えて、燃料を多く積んだ状態でのロングランに関して1番学べたこととなる。30kgくらいの燃料を積んでロングランをするんだ。学べるモノはある」

「そして我々は『さて、70kgの燃料を加えたらどうなるだろうか?』『タイヤはどうなるだろうか?』『どうすればいいのか?』『少し変えてみよう』といった感じになった」

「実際、大きな変更ではなかった。ピットレーン中を見回しても、どのチームも(そうした)変更を行なっただろう」

 スプリントから本戦に向けて最も大きな変更をマシンに加えたのはハースのニコ・ヒュルケンベルグだろう。

 ヒュルケンベルグ曰く、スプリントでのセットアップは「実際にマシンを悪化させる」モノだったという。結果的にヒュルケンベルグは13番手スタートから最後尾でのフィニッシュとなった。しかし決勝に向けては一変。10位入賞で1ポイントを獲得した。

 マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は「パルクフェルメ解放がマシンのバランス調整に使われることは間違いない」としながらも、「大きくセットアップを外していることが分かれば、大きな変更になることもある」と付け加えた。

 そしてステラ代表は続けた。

「スプリントの後にパルクフェルメが一度解除されるというチャンスには、ふたつの意味がある。ひとつ目は、週末(でのミス)が許容されることだ」

「というのも車高を間違えたり、タイヤの挙動からバランスを調整したりする必要があると判断した場合、それを行なうことができる」

「これは同時に、どのような方向性を取るか、たとえば車高をどうするかという点で、よりアグレッシブに攻めることができるということでもある。補正が効くのだ」

「純粋にエンジニアリングからの観点で見て実際に興味深い。スプリントではバランスを見る機会があったからね」

「もちろん、全てを解決する銀の弾丸があったら、既に投入しているはずだ」

「だから微調整以上の話はしなかった。でも、それができるというのはエンジニアリングの観点からは興味深い。我々としてはこの変更は大歓迎だ」