巨大地震が起きた際、沿岸地域に津波が到達するまでにかかる時間を示す「津波到達時間」を熊本県が調査していないことがわかりました。

 東日本大震災による甚大な津波被害を受け各都道府県は、巨大地震による大津波が発生した際の浸水域や浸水の深さを「津波浸水想定」としてまとめました。

 熊本県もシミュレーションを進め、結果を2013年3月に公表。南海トラフや布田川・日奈久断層帯による地震をモデルとし、沿岸14市町の津波の影響が及ぶと考えられる地域を明らかにしました。

 津波の最大の高さは、天草市で2メートル、上天草市や苓北町で1.4メートルなどと想定しています。熊本をのぞく九州の各県は浸水域や深さに加え津波の到達時間も公表していますが、県は調査していません。

 その理由について、井上雄一朗危機管理防災課長は「(津波は)予測よりも早く到達することがありえます。不確定な情報になりかねないので、住民の避難の判断にミスリードをしかねない、と考えています」と話しています。

 調査しなかった詳しい経緯は分からないとした上で、地震発生後に発表される気象庁の予測に基づく避難を呼びかけています。

 県内の自治体では県がまとめた「津波浸水想定」に基づき津波タワーや避難経路の整備を進めたり、避難訓練の計画を練ったりしているとのことです。

 一方、最大で0.6メートルの津波が予測されている熊本市では地形や津波の深さ、人の歩行速度を踏まえた「津波避難困難地域」の設定には津波の到達時間のデータが必要だとして、県に調査の実施を求めているといいます。

 津波の到達時間について、東北大の遠田晋次教授は「津波は不確実な要素がかなり多く、能登半島地震では海底地すべりによって富山湾に想定より早く津波が到達した。八代海でも日奈久断層が動いた際、局所的な津波が起こる可能性があるので、素早い対応が必要」と指摘。

 東京大大学院の片田敏孝特任教授は「津波は常に想定外のことが起こりうる」とした上で「防災に向けて、自治体は極力積極的に情報を開示すべきだ」と述べました。