1954年、米国が太平洋・マーシャル諸島ビキニ環礁で行った水爆実験に島民や日本の漁船員らが巻き込まれた「ビキニ事件」を伝える展示が、神奈川県三浦市三崎の複合施設「うらり」で開かれている。マグロの水揚げ基地として栄えていた旧三崎町が魚価低迷や魚の廃棄に見舞われた記憶をつなぐため、写真やパネル、新聞記事など約80点を紹介。27日には同じ会場で事件70年の集会が開かれる予定で、関心の輪を広げようと、市民有志らが“ラストスパート”をかけている。

 展示会場には、事件の象徴として知られる静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の被ばくや世界の核実験被害に加え、三崎で行われたマグロの放射能検査の様子を捉えた写真、補償と原爆禁止を訴えた町民大会の決議文、被害を受けた船舶、子どもたちが書き残した作文などが並ぶ。

 事件に詳しいライターで、実行委員長を務める森田喜一さん(89)=三浦市=は「当時、三崎では誰一人、核実験に巻き込まれるとは思っていなかった」と解説。ウクライナを侵攻したロシアによる「核の脅し」などを念頭に「遠い国の話とは言っていられない」と強調する。

 くしくも3月の米アカデミー賞では、原爆開発を主導し「原爆の父」と呼ばれた物理学者の伝記映画「オッペンハイマー」が7部門を受賞。10年ぶりとなる集会への参加も呼びかける森田さんは「核兵器を巡る世界の情勢を理解するヒントにもなれば。特に若い人に足を運んでもらいたい」と願う。

 展示は27日までの午前10時〜午後5時(土日は午前9時から)。マーシャル諸島の学校と交流を続けてきた神奈川学園中学・高校(横浜市神奈川区)の生徒らがまとめたパネルも掲示されている。

 集会は午後1時からで、参加券500円(大学生まで無料)。米国本土の核実験被害や大陸汚染を追ったドキュメンタリー映画「サイレント・フォールアウト」を上映し、監督の伊東英朗さんからも話を聞く。かもめ児童合唱団や三崎ゴスペルサークルなどによる合唱も披露される。展示・集会に関する問い合わせは、三浦市職員労働組合電話046(882)3467。