夏の夜空を彩る打ち上げ花火の生産が、兵庫県太子町上太田にある県内唯一の製造所でピークを迎えた。新型コロナ禍や原材料費の高騰など業界は苦境が続くが、今年も各地で催される花火大会に向け、職人たちは連日、火薬の玉詰めや花火玉の乾燥作業に精を出している。(辰巳直之)

■県内中心に100の花火大会へ

 1951年創業の「三光煙火(さんこうえんか)製造所」(事務所・姫路市大津区天満)。例年約3万〜4万発を製造し、打ち上げ作業まで一貫して手がける。最近は小ぶりな2・5号(直径約7・5センチ)や3号(同9センチ)の生産が中心で、今年は県内を中心に約100の花火大会に出向く。

 工程は手作業が中心で、職人たちが分業で取り組む。「星」と呼ばれる火薬玉をおわん形のボール紙に詰め、二つ合わせて球状に。その表面にクラフト紙を幾重にも貼り付けた後、天日に数日間さらして仕上げる。同社専務で、花火師の三木章稔(たかとし)さん(39)は「貼りつける紙と火薬量のバランスが大事」と説明する。

 毎年、花火シーズンに向け、前年秋から準備する。小さい玉からこつこつと作りため、新作開発にも取り組む。試作品ができると、業務提携するたつの市のゴルフ場で毎月1回ほど、試験打ち上げをするという。

 新型コロナ禍には花火大会の中止が相次いだ。近年は火薬の原材料費の高騰などが収益を圧迫する。それでも、三木さんは「火薬は使い方を間違えたら戦争や紛争につながる。だからこそ花火は平和の象徴として大事。職人たちが連携して完成させた作品で、夏を感じてもらいたい」と力を込めた。