国土交通省の採択によって研究中の「反転交差点」が話題を呼んでいます。常識をくつがえす新発想の交差点が、日本で誕生するかもしれません。いったいどんな交差点で、どう便利になるのでしょうか。またどんな反響があるのでしょうか。

アメリカの先進事例に着目

 国土交通省の採択によって研究中の「反転交差点」が話題を呼んでいます。
 
 常識をくつがえす新発想の交差点が、日本で誕生するかもしれません。いったいどんな交差点で、どう便利になるのでしょうか。またどんな反響があるのでしょうか。

 反転交差点は、アメリカの数か所で試験的に導入された、新しい構造の交差点です。これは、従来の交差点が持つ、日本でいう「右折・直進の衝突事故」「右折信号待ち」などの課題の解決が期待される工夫がされています。

 研究が進められているのは、アメリカで「Diverging Diamond Interchange(DDI)」と呼ばれているものです。交差道路のクルマが「交差点を直進しない」ことが前提の、たとえば立体交差のランプ出入口交差点や、高速道路IC出入口の交差点などに効果的です。

 あるいは、たとえば千葉県市川市の国道357号(湾岸道路)の「千鳥町交差点」に有効かもしれません。

 国道357号のクルマが右折する場合、右折した先に、「対向車線側の赤信号」が待ち受けているという状況です。一回の信号で、曲がった先のスペース分の台数しか、右折できません。逆に、交差する行徳方面は、時差式信号(右折矢印の代わり)が採用され、実質的な2サイクルの待ち時間があります。

 こういった「ややこしい巨大交差点」をシンプル化するのが「反転交差点」です。

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 さて、「反転交差点」の構造は、交差点内で、上下線の車線が交差して逆側に移っているのが特徴です。例えるなら、指と指に輪ゴムをとおして、もう一方の手で、真ん中でゴムの左右を入れ替えたような、”複合8の字”のといった形状となっています。

 左側のランプに入る場合は、交差する前なので、そのまま左折できます。右側のランプに入る場合も、交差したあとなので、やはり対向車線を気にせず、そのまま右折できます。とにかく対向車線を気にせずに右左折が可能なのがメリットです。また、車線の合流も上手く避けられています。

 信号機は従来「直進が青→右折矢印→交差ランプ側が青」の3サイクルだったのが、「直進北行き青→直進南行き青」という2サイクルで済みます(交差ランプ側信号は適切に連動する)。ランプ進入時に「なかなか右折信号にならず、右折信号になったと思ったらすぐ消え、数台しか曲がれない」という困った渋滞要因も、解決されます。

 これを日本に導入すべく研究しているのは、横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院の田中 伸治教授。2022年から国のFS研究(事業化可能性の調査)を開始し、2024年度から本研究が始まっています。

 本研究では、導入にむけて必要な、構造面・施設面での配慮や、利用者の受容性にも着目した評価を実施し、最終的に設計指針など実務につながる成果がとりまとめられる予定です。田中教授は「関係者間の合意など条件が整えば、実証実験も行えるとより望ましいと思います」としています。

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 文字通り「逆転の発想」ともいえる「反転交差点」に対し、ネット上では様々な反響が集まっています。

 4月の報道の際には「環八から東名に右折進入する部分には使えそう」「新木場とかで要るやつじゃん」「信号2回で一周するのはありがたいな」「不幸な右直事故をなくすために、精神論に頼るのではなく、このように技術に頼る方向に舵を切るのは素晴らしいと思います」などの声が。

 また、興味深いコメントとして「アメリカのゲームで左折車が皆信号無視するから何だと思ったらそれだったのか」「都市開発ゲームで見たやつだ」「なんか海外の街づくりのゲームで見たことがある」という声もあがっています。机上の空論と言われがちな大胆な構造ですが、ジョージア州やユタ州、ミネソタ州ほか各地で設置され、受容が進んでいます。

 なお「ラウンドアバウトで十分」という声もありますが、詰まりを起こさず流せる交通量に限界があり、都市部では導入が進んでいないのが現状です。あくまで郊外の街角で、信号無し十字路の衝突事故を防ぐのが主目的となっています。