厚生労働省は「IT・デジタル人材のITスキルレベル別・役職別の賃金相場」、「企業がIT・デジタル人材を採用・処遇する上で重視している事項」および「IT・デジタル人材の労働移動と賃金変化の実態」の3点を明らかにすることを目的として、労働者個人と企業双方に対するアンケート調査と、企業ヒアリングを実施した。前回は、「第四章 転職パターンと転職による賃金変化の関係」の内容を一部抜粋して紹介した。
今回は、「第五章 リスキリングと転職による賃金変化の関係」の内容を一部抜粋して紹介する。

本ニュースのサマリー
  • 5年以内にIT・デジタル職種に転職した人が取り組んだリスキリングの内容は「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学自習」が最多
  • リスキリング実施者の割合、「男性」(32%)よりも「女性」(58%)方がリスキリングを実施している人が多い結果に
  • 現職種の経験年数「5〜14年」の約60%がリスキリングを実施した経験がある結果に
  • ITスキルレベル別のリスキリング実施割合はスキルレベルが高いほど実施している傾向に。レベル5以上とレベル1〜2では20ptの差が発生
  • リスキリングを実施している人の方がしていない人よりも賃金上昇率が高い結果に

5年以内にIT・デジタル職種に転職した人が取り組んだリスキリングの内容は「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学自習」が最多

5年以内にIT・デジタル職種に転職した人が取り組んだ、転職のためのリスキリングの内容としては、「ラジオ・テレビ・専門書・インターネットなどによる自学自習」(37%)が最も多く、次いで「民間教育訓練講座の受講」(18%)と続いた。

※「転職のための何らかの学び」のことを「リスキリング」と表現している

画像:厚生労働省 令和6年3月調査より引用

リスキリング実施者の割合、「男性」(32%)よりも「女性」(58%)方がリスキリングを実施している人が多い結果に

5年以内にIT・デジタル職種に転職した人は、男性よりも女性の方がリスキリングを実施している人が多く、男性はリスキリング実施者が32%にとどまるのに対して、女性は58%であった。
また、年齢別の割合は、年齢が若いほど転職前にリスキリングを実施している傾向にあり、「50〜69歳」が20〜30%前後にとどまるのに対して、「25〜39歳」は60%前後となった。

画像:厚生労働省 令和6年3月調査より引用

現職種の経験年数「5〜14年」の約60%がリスキリングを実施した経験がある結果に

5年以内にIT・デジタル職種へ転職した人の現在の職種での経験年数別にみたリスキリングの実施者の割合は、経験年数が「5〜14年」が約60%であり、リスキリングを実施している人の割合が最も多い結果となった。

画像:厚生労働省 令和6年3月調査より引用

ITスキルレベル別のリスキリング実施割合はスキルレベルが高いほど実施している傾向に。レベル5以上とレベル1〜2では20ptの差が発生

5年以内にIT・デジタル職種へ転職した人のITスキルレベル別にみたリスキリング実施者の割合は、ITスキルレベルが高くなるほど転職前後でリスキリングを実施している傾向にあることがわかった。ITスキルレベル5以上とITスキルレベル1〜2では、リスキリングの実施率に20ptの差が発生した。

画像:厚生労働省 令和6年3月調査より引用

リスキリングを実施している人の方がしていない人よりも賃金上昇率が高い結果に

5年以内にIT・デジタル職種へ転職した人の、転職前後での業種の変化別にみたリスキリング実施者の割合は、非情報通信業に転職したパターンの方が、情報通信業に転職したパターンよりも多い結果となった。
また、5年以内にIT・デジタル職種へ転職した人の賃金上昇の割合は、リスキリングを実施している労働者の方が、リスキリングを実施していない労働者よりも賃金上昇者の割合が多く、21ptの差が発生した。いずれのITスキルレベル層においても、リスキリングを実施している人たちの方が、実施していない人たちよりも賃金上昇者の割合が10ptから30pt前後多く、その傾向は特にITスキルレベルが1〜2の層において顕著である。

画像:厚生労働省 令和6年3月調査より引用