モビリティカンパニーとして、海においても新しいモビリティの可能性を追求しているLEXUS。LYのデザイナーに話を聞くと、船になっても変わらないクルマ屋としての情熱があふれていた。

モビリティカンパニーとして、海においても新しいモビリティの可能性を追求しているLEXUS。LYのデザイナーに話を聞くと、船になっても変わらないクルマ屋としての情熱があふれていた。

海におけるFun to Drive

「LY650は、ラグジュアリーライフスタイルブランドを目指すLEXUSの、クルマに留まらない挑戦の象徴です。先進的で高品質なLY650が、世界中の海でその美しい姿を披露することを、本当に楽しみにしています。

私達は、モビリティカンパニーとして、海においても新しいモビリティの可能性を追求してまいります」

トヨタ自動車の豊田章男会長(当時 社長)はLY650が世界にお披露目された際に、このようにコメントした。

※2024年3月21日 ラグジュアリーヨット「LY650」を一部改良し、新型「LY680」として販売

※写真はLY650

陸海空の領域で、すべての人に移動の自由と楽しみをという思想のもと、LYは海におけるラグジュアリーの象徴を目指したという。

内外装のデザインを担当するビジョンデザイン部の岩田哲弥主任は「海に出ると信号も渋滞もなく、他人の視線もない究極のプライベート空間になります。そのため、ヨットはクルマでいう感動や興奮にあたる要素が非常に重要なのです。」と話す。

※写真はLY650

一見すると、クルマと船づくりは開発プロセスも、サイズ感も、乗る人数も全く違うが、開発に携わったデザイナーは、お客様がモビリティに対して、どう喜んでくれるかという観点ではクルマづくりと同じだという。

ビジョンデザイン部の金丸克司主査(左)、岩田哲弥主任(右) ※写真はLY650

感動、興奮などの喜びをダイレクトに、自然の中で体感できる海のモビリティLYのクルマと共通する部分は何なのか。

ヨットでもLEXUSらしいデザインを

2019年に発表された、LEXUSのラグジュアリーヨット「LY」もモビリティの1つといえる。

流れるような流線型のフォルムが目を引くLYは、セダンのLS、クーペのLC、そしてSUVのLXに続く、第4のフラッグシップと位置づけられている。海でのラグジュアリー体験と想像を超える感動を届けるヨットだ。

※写真はLY650

このLY680は全長68フィート(約20.66メートル)の大型クルーザー。全幅は5.76メートル。乗員は最大15人で、3つの客室を備える。

外観上の特徴は、クーペライクのシルエットのキャビン。係留されていても、ひと目でLEXUSとわかるあたりが実に興味深い。LEXUS LSは全長約5.2メートルなので、LYはその約4倍の長さになる。サイズがまるで違うヨットなのに、あくまでもその佇まいはLEXUSである。

コンセプトやカラーマネジメントの観点から素材選びを担当する金丸は、「クルマから得た記号性をほどよく取り入れました。やはりLEXUSが海の上でのラグジュアリーを提案するという狙いを持って開発されたヨットなので、LEXUSとして見えるということは重要でした」と話す。

LYのコンセプトにあわせ、内外装におけるカラーリング、使用する素材の選定や仕上げに携わった金丸

記号性とは、アーチキャビンにとどまらずカラーや造形などさまざまな部分に取り入れているという。たとえば、車体色には2017年にコンセプトヨットとして発表した際のカラーリングであるカッパーカラーを設定。

さらに造形の面からは圧倒的な存在感を出すため、船体先端部はヨットで好まれるスピード感ある尖った形ではなく、あえて拳のように丸くデザインして力強さを表現。同時に船体後部にはクルマでいう「踏ん張り感」の表現を取り入れ、曲線でボリュームを出すようにデザインした。

※写真はLY650

力強さを表現してボリューム感を出すと、他のスペースを犠牲にしてしまうが、それを広く見せる質感や空間づくり、照明づくりなどすることで、二律創生を目指したのもLEXUSとしてのこだわりだ。

このようにLEXUSのクルマづくりで得た知見により、LEXUSらしさをふんだんに表現するルックスを得たLYだが、近年のヨット需要の高まりという点からは、内装もさらに重要だ。というのも、ヨットの魅力はひとたび洋上に繰り出せば完全なプライベート空間が得られることにあり、そこで非日常の時間を楽しむという体験価値に重きが置かれるからだ。

ヨットにおける人中心のデザイン

クルマであれば運転する人と同乗する人で最大4人程度だが、船の場合は洋上で行動をともにすることを想定しなければいけない人の数が極端に増える。

そして、船上、船内空間におけるホストやゲスト、パーティーのような場面で積極的に楽しむ人や静かにくつろぐ人、それぞれに対しての想定はクルマよりもヨットのほうが増えていく。

では、LEXUSらしいおもてなしとはどういうものであり、LEXUSらしい体験とはどういうものであるか。洋上でのヨットということに照らし合わせた時、キーワードは非日常性だったという。

「とにかく非日常な空間にするために、オークを使ったドアにレザーのハンドルをつけるなど、あらゆるところにコントラストをつけました。配色という点からもそうですし、素材の硬さや柔らかさという点で対比をなるべく強く、カチッとしたメタルなものと、柔らかみのあるナチュアラルなものを組み合わせて非日常性を演出しました」と金丸は語る。

艶のあるウッドの扉に、メタルパーツとレザーのハンドルをオン。レザーにはステッチワークを施し、細部まで丁寧に作り込んでいる。※写真はLY650

飛行機のファーストクラスやラウンジ、新幹線のグリーン車、さらに近年流行しているグランピング施設など、クラスアップされた場所ではどのようなインテリアでゲストをもてなし、非日常の演出を行っているのか、研究を重ねて内装に落とし込んでいったという。

それは広いベッドを備えたオーナーズベッドルーム、大きなレクサスロゴを床にあしらったメインキャビンの随所に見られる木材とレザー、メタルパーツの切り替えで表現したコントラストから見て取ることができる。

ベッドルームは3室。採光のよい窓のついたオーナーズベッドルームには、シャワーや洗面、ソファーを備える。※写真はLY650
ホワイトを基調にしたクリーンな印象のキャビン。ブラウンのウッドとのコントラストで非日常空間を作り上げる。天井部分にはFRPを使用し、間接照明により穏やかな光で満ちる。※写真はLY650
テーブルの脚はレクサスのLを表現しており、遊び心隠されている。※写真はLY650

ちなみにこだわりのポイントはコクピット。「クルマ屋としてはコクピットには特に他の船と違う要素を出したい」と、レザーやカーボンパーツの配置や白いステアリング、そして構造要素のラインの繋がりと連続性といったところを丁寧に作り込んだという。

奥のレザーパネルには流れるようなステッチをあしらったコクピット。柔らかさを表現することにより操縦者が包み込まれる安心感を得られるという。※写真はLY650
※写真はLY650

LY650からお客様のご要望に基づきフライブリッジとスイングプラットフォームなど一部改良して2024年3月21日に発表され、ジャパンインターナショナルボートショー2024(3月21日〜24日、パシフィコ横浜)で1/20サイズのスケールモデルが出展されたLY680。

ジャパンインターナショナルボートショー2024で展示されたLY680の1/20サイズスケールモデル
ジャパンインターナショナルボートショー2024で展示されたLY680の1/20サイズスケールモデル
1400mm拡張したフライブリッジ

1400mm拡張したフライブリッジにはオプションでバーベキューグリルの設置も可能となった。

写真はLY680
写真はLY680
写真はLY680
写真はLY680
写真はLY680
写真はLY680

「海の真ん中で、本物を知る人が素の自分に戻れる、隠れ家のような空間」をコンセプトにつくられたラグジュアリーヨットLY。

海でのモビリティにおけるラグジュアリーと非日常体験を、LEXUSは今後どのように叶えていくのか。海のモビリティにおけるLEXUSの挑戦に期待を込めて見つめていただきたい。

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