がんばりすぎたあと、なんか調子が戻らない、無気力になっている……など、そんな経験ありませんか? そんなあなたは、もしかして燃え尽き症候群かも! 今回は、労働者の健康管理改善に携わる医師の池井佑丞さんに、燃え尽き症候群になったときの症状を教えていただきました。自分がなっているかどうか、まずはチェックして現状を把握してみて。

池井佑丞さん
池井佑丞さん
医師。健康経営クラウドサービス企業・リバランス代表。内科や産業医、訪問診療に従事するかたわら、プロキックボクサー、トレーナーとしても活躍。さまざまな企業で、労働者の健康管理に携わる。著書に『燃え尽きさんの本』(かんき出版)

燃え尽き症候群ってなに ?

「何かをがんばってきた人が、急に意欲が関心を失ってしまうこと。
病気の一歩手前の状態のひとつです」

仕事や育児など必死に取り組んだあと、ふっと気が抜けて、疲労感と無気力感に見舞われる……その状態を表す言葉が、「燃え尽き症候群」。がんばりたいのにがんばれない、さぼっているような気がして、自己嫌悪に陥る……そんな覚えがある人は多いかも。

「そもそも燃え尽き症候群という言葉は、職場での過労やストレスが原因で、エネルギーが枯渇したり、仕事がいやになったり、能率があげられなくなっている状態をさします」と、池井先生。
ただ、仕事以外でも、育児や介護、勉強などもきっかけになり、誰でも燃え尽き症候群と同じ状態に陥るリスクがあります。
「また、やる気が起こらなくなり心身に不調がでるという点では、目標を見失ったり環境が合わなくてモチベーションがもてない〝燃えない 〞〝燃えきらない 〞タイプも、燃え尽き症候群の一種と大きくとらえることができます」

誰がなってもおかしくない燃え尽き症候群ですが、特に真面目だったり、気を遣う性格の人は、神経をすり減らして燃え尽きやすい傾向があるといえそうです。燃え尽き状態のまま、がんばり続けると、うつなどにつながるので、まず自分の状態を正しく知ることが大切です。

そんな燃え尽きが起こりやすくなっている背景には何があるのでしょう。
「情報社会では、膨大な選択肢から必要なものを選ぶのにエネルギーを奪われます。また、SNS などやりとりがひんぱんで、コミュニケーションもストレスに。さらに、景気の後退でがんばったら報われる、という実感が持ちにくいことも大きいです」

こんな性格の人がなりやすい!

真面目さん
完璧主義で、責任感が強い人。人に任せるのが苦手で、自分ですべてをコントロールしようと抱え込んでしまい、ストレスが高まりやすい状態に。

生真面目さん
不条理や理不尽なことに敏感で、正義感が強い人。ほかの人が「まあいいか」と流せることも気になってしまい、自分を消耗してしまうタイプ。

気遣いさん
共感力が高く、気遣いができる人。自分の仕事の負荷が高いときでも「大丈夫です」と言ったり、人の手伝いをしようとして、疲れ果ててしまう。

あなたは「燃え尽きさん」?
チェックシートで確認してみよう!

Aに○がつく項目が多い人ほど、燃え尽きるリスクが高いので要注意!

※「日本版バーンアウト尺度」を参考に、リンネル編集部で一部を抜粋してアレンジ

燃え尽き症候群チェックシート

燃え尽き症候群にはいろんなタイプがあります

燃え尽き症候群といっても、その燃え方やくすぶり方は人によって様々。がんばりすぎて体調を崩してしまうパターン以外にも、燃えたいのに環境が合わずにくすぶってしまう人や、火種がなくて燃えられないタイプも、燃え尽きの一種と考えられます。自分に近いのはどれかを知っておくことで、原因がわかり少しでも改善に近づくことができます。

❶ 燃え切らないさん

希望していた職種につけなかったなどをきっかけに、仕事のモチベーションが低いまま。それにより生活全般に意欲が低下した状態。若い世代に増えている。

❷ 燃えないさん

仕事をがんばりたいという気持ちがあるものの、環境が合っていないため、モチベーションが低下してしまい、燃えることができない。そのために心身を消耗してしまう。

❸ 燃えすぎさん

心身に強い負荷をかけながらがんばり続けた結果、エネルギーが枯渇した状態。忙しい間は充実感を覚えているが、それが終わったあとに気が抜けたようになり異変が起こる。

燃え尽き症候群ってどんな状態 ?
体と生活にこんな変化が出たら要注意

燃え尽きは数日休んで回復するなら問題ありませんが、無理を重ねると身体的なものも含めてさまざまな不調が起こります。うつ状態まで進んでしまうと、回復には時間がかかります。
「正しく対応すれば燃え尽きは回復します。一度燃え尽きた経験を活かし、次は無理のないやり方で、燃やし続ける方法が見つけられるはずです」

身体的特徴

燃え尽き症候群
・強い倦怠感、疲労感、脱力感
・食欲の低下、もしくは過食
・夜眠れない、朝起きれない
・頭痛、肩こり、腰痛

生活の変化

燃え尽き症候群
・遅刻や早退、欠勤が増える
・ちょっとしたミスが増える
・身なりが乱れる
・表情や感情が乏しくなる


text:Ema Tanaka illustration:Kayo Yamaguchi
リンネル2024年4月号より
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