子どもの頃、憧れていた存在に自分がなる……俳優・鈴木亮平さんは、そんな夢を実現したひとり。今回は、Netflix映画『シティーハンター』で、少年時代から愛読していた人気漫画の伝説的主人公・冴羽獠を演じる鈴木亮平さんに、作品への想いや見どころについてインタビューしました。

超一流なのに、徹底的にふざけているところにグッとくる

鈴木亮平さん

子どもの頃、憧れていた存在に自分がなる――俳優・鈴木亮平さんは、そんな夢を実現したひとり。まもなく配信されるNetflix映画『シティーハンター』で、少年時代から愛読していた人気漫画の伝説的主人公・冴羽獠に扮しています。

「俳優を目指し始めた頃から、いつかは演じたいと思っていました。でも、実際に企画が通って感じたのは、恐怖感。本当にこの夢を叶える覚悟が、お前の中にあるのか?と問われているようで……。でも、うまくやれたら、少年だった自分も喜んでくれるだろうし、原作を知らない若い世代にもあらためて魅力を届けられるかもしれない。これは、やるべき挑戦だと思いました」

裏社会に通じ、銃の腕は抜群。超人的なアクションもお手のものという超一流スイーパー(始末屋)の獠ですが、鈴木さんがもっとも魅了されたのは「徹底的にふざけているところ」。原作では定番の“裸踊り”にも、もちろん全力投球です。

「僕が視聴者なら『獠なのに裸で踊らないのか!』って、絶対納得しないですからね(笑)。いろんな芸人さんの技を見て研究し、自分で振り付けました。もちろん、原作が描かれた時代と令和の現在とでは許容される表現の違いはありますが、やっぱり「もっこり的なもの」はなくてはならないし、バカをやらない獠は獠じゃない。どうすれば本気でふざけられるだろうか?と、そこは、真剣に考えて……。ちなみに、裸踊りのときにはいているブーメランパンツも、僕が自分でネット通販で取り寄せました。ちょうどよくおバカで笑える、でも品があって可愛いという、選びに選び抜いた究極の一足です(笑)」

特別公開! 鈴木さんの“冴羽愛”コレクション

鈴木亮平さん愛用品 コミックスとモデルガン
コミックスとモデルガン

鈴木亮平さんの『シティーハンター』、そして主人公・冴羽獠への思い入れは筋金入り。取材当日、現場に置かれていたのは、年季を感じさせるコミックスやムック。もちろん、すべて鈴木さんの私物!

「コミックスは、小学生の頃から何度読んだかわからないくらい。モデルガンは、獠が使っているのと同じもの。たとえば、拳銃の分解やマガジンチェンジ(弾倉の付け替え)を、獠は基本、ノールックで(=目視せずに)やる。それを意識して、すごく練習しました。『獠ならこのくらいのスピードじゃないと』って、やはり自分が観客として見たときに、許せないようなものにはしたくなかったので」

鈴木亮平さん愛用品 色紙とセル画
色紙とセル画

「子どもの頃からずっと一緒に育ってきたような感覚がある」という冴羽獠の存在。注ぎ込んだ愛は、やがて憧れの人々との出会いを鈴木さんにもたらしたました。「色紙は、原作者の北条司さんと雑誌で対談したときに描いていただいたもの。セル画のサインは、アニメで冴羽獠の声を担当された神谷明さんのものです。フランスで作られた実写映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年日本公開)も面白かったし、『シティーハンター』のパラレルワールドを描いたドラマ『エンジェル・ハート』(2015年放送)で主演された上川隆也さんの獠としてのあり方も素晴らしかった。僕も、見てくださる方に安心して『獠だ!』と思っていただけるよう、取り組みました」

自分の心をなだめ、解放する時間も大切に

おふざけが9割だからこそ、ふとした瞬間に現れる孤独や愛情にグッとくる――「僕が目指す理想の人間像が、冴羽獠そのもの」と鈴木亮平さん。41歳、これまでさまざまな役に自身を注ぎ込んできたのも、変わらぬ理想に導かれてのことだったのでしょう。

「20代はさまざまなトライ&エラーをして、いろんなことを学べた。30代は、その経験をある程度自分のものとして表現できて、フルスロットルでやって、気がついたら終わっていたという感じです。じゃあ40代はふざけるか?というと、そればかりでは生きていけないので(笑)。何といっても、獠は1割のシリアスな部分が超一流。僕は、まだまだです」

憧れにさらに近づくべく、駆け続ける日々。そこに不可欠なのが「心落ち着くものの存在」。真剣勝負の日々の中でも、ホッとする時間を持つことがパワーチャージにつながると鈴木さんは言います。

「たとえば、僕は歴史が好きなんですが、そうしたテーマのポッドキャストを聴きながら部屋を掃除したりすると、悠久の時の流れを感じてリラックスできる。大河ドラマ『西郷どん』(2018年放送)の頃は、好きなクジラの映像を見てくつろぐように心がけていました。ハードな時代に入ったときほど『クジラがいてくれて本当によかった……』と(笑)。別に、誰とも共有できなくたっていいんです。仕事や恋愛以外に、自分を解放する時間や場所を持てるのって、大事なことだと思いますよ」

Netflix映画『シティーハンター』

トラブル全般、特に美女の依頼ならお任せをーー。冷静な頭脳とずば抜けた身体能力を併せ持った超一流のスイーパー(始末屋)が、令和の新宿を駆け抜ける。鍛え上げられた肉体で表現する迫力のガンアクションも、期待を裏切らないセクシーなおふざけも、まさに冴羽獠そのもの。今まで描かれてこなかった相棒・香(森田望智)との出会いと始まりの物語を完成させ、「続編を作るのが次の夢です」と鈴木亮平さん。DATA●原作:北条司「シティーハンター」監督:佐藤祐市 脚本:三嶋龍朗 出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、木村文乃、華村あすか、橋爪功 ほか Netflixにて独占配信中


鈴木亮平さん Profile

すずき・りょうへい/1983年兵庫県生まれ。2006年俳優デビューののち、映画、ドラマ、舞台など幅広い作品に出演。最近の出演作に、映画『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』『エゴイスト』(毎日映画コンクール男優主演賞ほか受賞多数)、ドラマ『下剋上球児』、舞台『広島ジャンゴ2022』などがある。



[衣装クレジット]ジャケット¥148,500/エンメティ、ニット¥19,800/トゥモローランド トリコ、パンツ¥26,400/トゥモローランド(すべてトゥモローランド)

photograph:Miho Kakuta styling:Takeshi Usui(THYMON Inc.) hair & make- up:Kaco(ADDICT_CASE) text:Michiko Otani

リンネル2024年6月号より
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