数多くの海外ミュージカルを上演してきた「劇団四季」が、キリストの最後の7日間をミュージカル化した名作『ジーザス・クライスト=スーパースター[エルサレム・バージョン]』を、現在10年ぶりに「京都劇場」(京都市下京区)で上演している。

◆ 50年にわたって上演される「不動の人気作」

『CATS』『オペラ座の怪人』で知られる巨匠、アンドリュー・ロイド・ウェバーが、1970年に発表した本作(舞台化されたのは1971年)。キリスト教の始祖ジーザス・クライスト(イエス・キリスト)が、磔刑にされるまでに起こった数々の出来事を、全編セリフなし・音楽のみの1時間45分(休憩なし)で見せ切るロック・ミュージカル。劇団四季は1973年に日本上演を実現し、以後いくつものバージョンを制作したほど、思い入れの深いレパートリーだ。

冒頭の不穏なギターソロから、普通のミュージカルとは異なる気配がただようなか、大衆にあがめられるジーザスと、彼の偉業を歌い上げるユダが登場。ジーザスは「神の子」として庶民の期待を受けながらも、実際はなにもできない自分にあせりと苛立ちを覚え、ユダはジーザスに深い敬愛を抱きながらも、彼が周囲から神聖視されることに疑問を感じる。やがてジーザスはエルサレムにたどり着くが、ユダは彼を救おうとする一心から、ある計画を実行する・・・。

この「キリストのエルサレム入城」のくだりは、聖書でも重要なエピソードなので、キリスト教に詳しい人なら、大胆な描写と解釈の数々に驚くはず。一方、キリスト教になじみがない人でも「みずからの死を予言した」などの途切れ途切れに聞こえてくるキリストの伝説について。「あ、このシチュエーションで起こったんだ!」と点と点がつながっていき、なぜ彼が磔にされたのか? という理由も、すっかり理解できるだろう。

◆ 一言で言うならば「複雑な感動」

そして音楽も、ジーザス側はロックなどの70年代当時の最先端の音楽で、彼らに対抗する古い勢力はどちらかというとクラシカルな曲調と、立場によって音のムードが使い分けられているのが興味深い。しかもジーザスとユダは、ハードロックのようなシャウトを多用する楽曲もあり、ほかのミュージカルではなかなか聞かれない歌唱にビックリさせられる。そしてラスト直前のテーマ曲『スーパースター』では、ソウルフルなメロディと、舞台上で描かれるシーンのギャップに、複雑な感動を覚えることだろう。

この舞台を観たあとは、人外の存在のように思われたキリストにある種の親近感を抱くと同時に、「裏切り者」の代名詞とされるユダの見え方も一変するのは確実。そしてなによりも、劇団四季が50年以上に渡って大切に演じつづけ、徹底的に磨き抜かれた舞台の完成度の高さに、ただただ圧倒されるはずだ。

公演期間は4月20日〜6月2日でチケットはS席1万1000円、A席9000円ほか。平日昼公演・土曜夜公演は各500〜1000円、土日祝昼公演は各1000〜2000円料金がアップする。チケットは現在発売中。

取材・文・写真/吉永美和子