「静岡VS浜松」ではない?

 そして迎えた5月9日の告示日。大村さんは地元・静岡市で第一声を上げました。

大村氏:
「『与野党対決』」『中部対西部の戦い』こういった声がある。しかし、争点はそんなことではまったくない」

 そう語った大村さんですが、静岡市を中心とする県中部の経済人が顔をそろえました。

 会場にはこの人の姿も…。

田辺信宏 前静岡市長:
「川勝さんの後だから、聴く力を持ったリーダーが望まれる」

 同じ日、鈴木さんが浜松市で開いた出陣式には、人人人。浜松から初の県知事を誕生させようという熱気にあふれていました。

康友氏:
「本当に多くの皆様にソラモに集まっていただき、今、感無量です。これから浜松でやってきたことを全県に広げていきたい」

「最大の後ろ盾」と言われる、自動車メーカー・スズキの鈴木修相談役が最前列で演説を見守りました。

 大村さんを推薦した自民党も、浜松市では…。

自民党浜松 柳川市議:
「県知事としてここにおられる康友さんをぜひとも押し上げていきたい。これが“浜松人としての使命”じゃないかなというふうに思っております。(拍手) そうだー」

 鈴木修相談役は、この「浜松人としての使命」という演説に最も感激したと記者団に語りました。

東部票が勝敗のカギ?

 スズキの本社がある旧可美(かみ)村の演説会でも…。

自民党浜松 高林修市議:
「県立の美術館は静岡市にありますよね。ドームを県西部に作るくらい全然問題ないじゃないですか。そう思いません、皆さん。そうですよね?」

康友氏:
「この西部で圧倒的に勝利をすることが全体の勝利につながる」

 大村陣営は、鈴木さんのことを「県全体の代表ではなく、浜松の代表だ」などと批判を強めていきます。

上川氏:
「どこかの特定の地域の代表ではない、どこかの大きな企業の代表ではない。みんなの代表として」

城内氏:
「すみません。一言だけ浜松市民の城内実ですが、ぜひお一人10人声をかけてください。この戦いに負けたら、私は浜松に居られなくなるかもしれませんのでお願いします(会場笑)」

「静岡浜松対決」が過熱する中で、草刈り場となったのが県東部です。両陣営とも「東部票」が勝敗のカギを握るとみて、公約を連発します。

康友氏:「この東部に医学部・医大を誘致したいと思います」
大村氏:「富士伊豆未来産業リージョンという構想です」
康友氏:「東部伊豆担当の副知事を再度設置をしたい」
大村氏:「伊豆縦貫道路を早期に整備していくことが必要」

東部票のゆくえは?

霞む「与野党対決」

 そして、全国的には、「与野党対決」として注目された静岡県知事選ですが、実態は大きく異なりました。

 確かに野党側は、衆院3補選に続き岸田政権に打撃を与えようと鈴木陣営に大物を次々と送り込みました。

立憲民主党 泉健太代表:
「今、相手候補を取り巻く支援の態勢というのは、まさに自民党」

立憲民主党 野田佳彦元総理:
「自民党に鉄槌を下すためにも、静岡の皆さんに奮起していただきたい」

立憲民主党 小沢一郎衆院議員:
「本当の意味の与野党対決だということ」

一方、自民党は支持率が低迷しているうえに、静岡では、塩谷氏が裏金問題で離党、宮沢氏が女性問題で議員辞職するなど大逆風で選挙を迎えていました。

城内氏:
「何か世間では与野党対決とかいう、これはちょっと困るんですけれども」

 大村陣営は党幹部の応援も、地元の上川大臣以外は断るなど、「自民党色」を薄めることに腐心します。

上川氏:
「愛する静岡市で生まれ育った大村さんと一緒に、静岡市の皆さんとともに」

野田元総理:
「今ね、自民党カラーを出すと候補者はマイナスになると思って、推薦をしてもらっている政党の名前出していないでしょう、ほとんど。(大村陣営の)作戦は何かというと、浜松出身か静岡出身かじゃないですか?」

 野田元総理の言う自民党の戦略が功を奏したかどうかは別として、激しさを増す「地域対決」の前に、「与野党対決」の側面はどんどん霞んでいきました。

城内県連会長

実態は「オール静岡」から離れて

浜松市民:
「なんか静岡市のほうが熱くなっているもんで、浜松も負けておれんと思って、浜松の代表ですからね、康友さんは。浜松だけでも(鈴木候補に)全員投票しないとねと思っている」

静岡市民:
「静岡市の人になってもらいたいと思います。自分は静岡市出身なので、そこは静岡市の人を応援したいなと思っています」

 実態が、両候補の掲げる「オール静岡」から遠く離れていく中で、選挙戦は最終日を迎えます。

 大村さんが最後の演説場所に選んだのは、地元・静岡市。市の中心部で行われたマイク納めには、多くの支援者が集まりました。

司会:
「皆さん、ここで急遽、難波静岡市長がお見えになりました。(歓声)」

 予定になかった難波市長も登場、大村さんと勝利を誓い合いました。

大村氏:
「静岡は西部・中部・東部・伊豆、素晴らしい個性を持つ力のある地域があります。この静岡の各地域の力を結集して、力を合わせて前に進む時が来たんです。だからオール静岡なんです。何か特定の声とか大きな声に左右するのではなく、声なき声もしっかり受け止めて、そして県政をまっすぐに進めていく。このことが必要です。それが誰なのか。それを決めるのがこの選挙です。私が一番、皆さんの声を県政に生かせる候補なんです。どうでしょうか(そうだ)(拍手)」

 鈴木さんのマイク納めも、出陣式と同じ、浜松市の中心部で行われました。大勢の浜松市民らが駆け付け、地元経済界や支援者からは、次々に「浜松から知事を」の声が上がりました。

源馬氏:
「浜松から初めての知事を誕生させましょう。皆さん。(拍手)」

 そして、鈴木さんが「最後の訴え」に臨みました。

康友氏:
「立候補前の鈴木康友と今の鈴木康友の違いは何か。立候補前は浜松の鈴木康友であり、西部の鈴木康友でした。今は静岡県の鈴木康友へと脱皮をしようとしています。この西部も中部も東部も素晴らしい地域であります。静岡県というのは何て素晴らしいんだ、今回全県回って改めて思いました。必ずこれからの静岡県をもっともっと発展をさせ、そして県民幸福度日本一の県をつくってみせます。全身全霊、静岡県のために命を懸けて頑張ります。皆さんにお誓い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。よろしくお願いします。(拍手)」

選挙は最終日に