老舗メーカーが生み出したファミコン周辺機器の名品

 ビデオゲームの半世紀近い歴史を紐解くと、その傍らにはコントローラをはじめとする「周辺機器」の存在が常にありました。そして、1980年代から精力的にゲーム周辺機器の開発を続けていたのが、いまもなお業界の最前線で活躍している「株式会社ホリ(HORI)」です。今回は1980年代の「ファミリーコンピュータ」(以下、ファミコン)黄金期にフォーカスし、同社が手掛けたユニークなゲーム周辺機器をいくつかご紹介します。

 1970年2月に「ホリ電機株式会社」として設立された同社は、1985年に外付け型コントローラ「ジョイスティック7」でファミコン周辺機器の市場デビューを果たしました。ファミコン向けのコントローラやRFスイッチなどを手掛ける最中、1987年には看板商品ともいえる「ホリコマンダー」の製造を開始。シンプルな作りではあるものの、3段階の調節ができる便利な連射機能を搭載したことでヒットし、ハドソン(当時)よりリリースされていた「ジョイカードMK2」と双璧を成す人気商品となりました。

 このホリコマンダーは、ファミコンブームをリアルタイムに体験した方々なら、一度は見たり手に取ったりした記憶がある周辺機器ではないでしょうか。売れ行きも良く、黒×オレンジのカラーリングがスタイリッシュな「ホリコマンダーブラック」や、ボタン押下時に音が鳴るプッシュトーン機能と疑似スローモーション機能を有した「ホリコマンダーアルファ」など、ホリコマンダーから端を発する兄弟機が立て続けに作られました。

 商品名に「コマンダー」とついた周辺機器のうち、特に変わり種なのが、1980年代の中頃に3900円で売り出された「レーザーコマンダー」です。当時の販促チラシに「従来のコントローラのようなムダな力は一切不要!」と書かれている通り、同製品は赤外線による光学式スイッチを採用していました。ABボタンは押下せずとも赤く発光する部分に指を乗せるだけで反応し、さらに連射機能まで有する代物でした。繊細な操作が要求されるアクションゲームなどでは使い心地に賛否両論があるものの、「ボタンより光がナウい!」という販促チラシのフレーズも込みでインパクト抜群な一品です。

 上述のホリコマンダーやレーザーコマンダー以外にも、ホリは1980年代からコマンダー系商品の開発に尽力しました。中央部に航空機の操縦桿を模したジョイスティックを搭載した「ウイングコマンダー」、2000年代に入ってからは指を振動させて連射力を物理的に底上げする装着タイプの「オレコマンダー」……などなど、定番商品からユニークな企画商品まで、20年近くにわたって豊富なバリエーションが展開されました。

ホリからはブースター内蔵の「RF スイッチブースター」も発売された 画像は本体付属のRFスイッチ(マグミクス編集部撮影)

時代を先取りし過ぎたファミコン向け録画デバイス

 メジャー商品であるホリコマンダーが利便性と使い心地を追求した周辺機器であるなら、同じくホリから発売された「ゲームリピーター」はその対極にある変わり種デバイスだったのかもしれません。1986年冬に登場した同製品の最大の特徴、それは「ゲームプレイの録画機能」です。

 といっても映像を直接保存しているわけではなく、「プレイヤーがコントローラのボタンを押下した回数」を記録し、ゲームリピーター側でボタン入力を再現してゲームプレイを再生する……という仕組みでした。ゲームリピーターは最大40分間のゲームプレイを録画できるほか、「ゲームオーバーになる直前からやり直したい!」といった場合には記録映像の途中から再プレイも可能でした。ホリコマンダーほどの知名度はありませんが、現代のキャプチャーボード(ゲームハードの映像を録画する機器)のような機能をすでに備えていた点において、同製品はファミコン向け周辺機器のなかでもかなり先進的だったといえるのではないでしょうか。

 2024年で設立から54年を迎えたホリは、現在もNintendo SwitchやPlayStation 5など、家庭用ゲーム機からPCにまで対応したゲーム周辺機器を精力的に作り続けています。市場に並ぶラインナップは時代によって違えど、ビデオゲームの歩みとともに同社の歴史は今後も紡がれていくことでしょう。