保護に来た初めて見る人間に、おぼえる瞳で見ていた13歳ほどのメスのチワワ・ひめ。体重わずか2キロほどです。飼い主の70代夫婦がこの1年で相次いで亡くなり、身内にひめを引き取れる人がおらず、ひとりぼっちになってしまったワンコでした。

「後見人などがいない高齢者はペットを飼わせてもらいにくい」という話をよく聞きますが、まさしく、このようなケースで行き場を失うワンコが多いためです。「ひとりぼっちになってしまったひめを、なんとかして幸せな晩年につないであげたい」と、保護団体・アイドッグレスキュー隊のスタッフが引き取りお世話をするために、冒頭の保護に至ったのでした。

預かりボラさんの家では人気者に

保護当初、同団体の代表の家に迎え入れられましたが、この家には大型犬がいて、それを怖がって来る日も来る日もケージの中で過ごしたまま。「これではかわいそうだ」と代表は複数の小型犬の世話をしている預かりボランティアさんの家へひめを移動させることにしました。

この家に来てからのひめは比較的リラックスし、先住犬のチワワのオス・ケニーくんが、突如現れたひめにビビって後退りしながら吠えるほど。それでもひめは動じずマイペース。ひめのほうが先輩のような立場になり預かりボランティアさんの旦那さんのお腹の上で過ごすようになりました。

ケニーもマイペースなひめの性格に惹かれるようになったのか、たびたびちょっかいを出すように。後からこの家にやってきたトイプードルの紅ちゃんも、ひめのハウスの匂いをクンクン嗅ぐなど、気づけばこの家きっての人気者になりました。

飼い主は幸せだったかもしれないが、残されたワンコは…

後日、ひめには里親さんが見つかり、巣立っていくことも決まりました。預かりボランティアさんはもちろん、他のワンコたちもすっかり馴染んだひめがいなくなることはきっと寂しいはずですが、それでも第二の犬生をつかんでくれたことのほうが喜ばしいことです。

幸いにもひめは幸福な晩年をおくれることになったわけですが、スタッフによれば、シニア犬が第二の犬生をつかむケースは少なく、家族と生き別れたワンコの場合、その悲しい思いや辛い気持ちを背負ったまま虹の橋を渡ることがあるとも言います。

「飼い主は『最後までワンコと一緒で幸せだった』のかもしれませんが、当のワンコがひとりぼっちで残され、行き場を失うことがあることをわかってほしいのです。最後まで面倒を見る自信がなければ、『ワンコを飼う資格がない』ということです。悲しい思いをするワンコをこれ以上増やさないためにも、この点どうか多くの人にご理解いただきたいです」

スタッフの願いです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)